ユーノス・ロードスターの人気は日本だけではない。アメリカでもヨーロッパでも評判は素晴らしく高い。それもデビュー直後だけワッとくる線香花火的な人気ではない。
日本にはファンクラブが各地に続々とでき、各種ミーティングが開かれている。アメリカでもファンクラブの動きは活発だ。いや、日本より活発かもしれない。輸出名のミアータを冠した、アメリカの「ミアータ・クラブ」には、すでに3万名の会員登録があると聞いた。
そう、この瞬間にも世界中で多くのユーザーがロードスターのステアリングを握り、ニコニコとほころんだ顔を、あるいは得意げな顔を見せているのだ。ロードスターの魅力を生み出す要素はいろいろあるが、いちばんのポイントは、そのルックスだ。かつてのブリティッシュ・ライトウェイトスポーツを思い出させる香りがうれしい。が、そんな点に喜んでいるのは昔を知る人であって、若い人の多くは過去など無関係に、ロードスターのルックスに惹かれている。
つまり、このスタイルには、時の流れを超えて多くの人を惹きつける魅力が封じ込まれているのだ。ちょっぴり気取っていて、ちょっぴりファニーなその姿は、小型の遊びグルマにボクたちが求めているポイントをしっかりと取り込んでいる。
オープンにした時のプロポーションはいいし、ソフトトップを上げたときのスタイリングもいい。最近、日本でもオープンモデルがいろいろな形でデビューしているが、見た目のバランスとカッコよさという点で、ロードスターはピカイチだ。ハードトップの形がいいのもうれしい。樹脂製のハードトップを装着したロードスターのプロポーションは、文句なしだ。完璧に仕上げたクーペのように魅力的である。
コクピットには気持ちのいいタイトさがある。これはボクの持論なのだが、スポーツカーには、ドライバーがクルマとの高い一体感を感じられるようなコクピットがほしい。クルマとの一体感が高ければ高いほど、ドライビングは楽しくなり、リズムがよくなる。そんな観点から見たロードスターのコクピットは、実にいい感じである。乗り込んだ瞬間から、クルマと一体になって走れる、という実感が湧いてくる。こうした実感は、街をゆっくり流していても、スポーツカーに乗っているという楽しい気分を運んできてくれる。
タイトとはいっても、フロントスクリーンの傾斜角度はキツくないため、圧迫感は少ない。また下げた幌は完全にボディ内に収納できるようになっているので、バックミラーを見たときや、後ろを振り返った時の視界が広く、オープン感覚が豊かな点もうれしい。
エンジンはツインカム16Vの4気筒だ。1.6リッターの排気量から120ps/6500rpmの最高出力と、14kgm/5500rpmの最大トルクを引き出している。このスペック自体に取り立てていうべきポイントはない。平凡なものである。ウェイトは950kgだから、動力性能的には多くを期待できない。だから、シグナルGPとか、ストレートでのスピード競争しか興味のない人には、まったくお勧めできないクルマだ。そのうえエンジンのキャラクターも比較的平板なので、この点でのエキサイトメントも高くはない。ま、このへんはもうひと息、パンチと切れ味を加えてほしい気はする。
そのかわり音楽でも聴きながら、ガールフレンドとおしゃべりを楽しみながら、街を流すといったときの使い勝手はいい。気を使わされることはいっさいない。エンジンに関するエキサイトメントにはあまり高得点はつけられないが、ハンドリングの項目となると、評価は一気に跳ね上がる。ステアリングを切ると、ロードスターのノーズは間髪を入れずに向きを変える。リアはスッと腰を沈めながら、これまた即座に追従してくる。その身のこなしの軽快さと鋭さは、ドライバーをワクワクさせる。限界は決して高くはないが、比較的容易にドリフトが楽しめるのもいい。
ワクワクは、飛ばしていなくても味わえる。交差点を曲がっただけでも、駐車場のらせん状のアプローチを駆け上がっただけでも十分だ。ゲインの高さは高速域でドライバーをナーバスにさせる面があるが、しかし、何はともあれロードスターは楽しい!
※CD誌、1992年1月26日号掲載
