From Editors「カー・アンド・ドライバー編集部の視点」

From Editors「カー・アンド・ドライバー編集部の視点」

「クルマのある、よりよい人生」を目指して
前向きなベクトルを生み出すストーリーに対する
カー・アンド・ドライバーのこだわりと決意

文/山本善隆 ●統括編集長(CAR and DRIVER/FM STATION)

 2024年元旦、その日起こった自然災害と翌日以降に起こった凄惨な事故の数々について、一体誰が事前に予想できただろうか。希望に満ちた前向きな思いが溢れるはずだった新年の幕開けは、多くの方々にとって 「苦しさ」を抱かせることになってしまった、冷たい逆風を感じ得ないスタートだった。

 1月5日、今年の仕事初めとして自動車5団体新春賀詞交歓会に足を運んできた。日本自動車工業会(以下、自工会)の新会長となったいすゞ自動車の片山正則会長による挨拶の冒頭で、令和6年能登半島地震の犠牲者へのお悔やみと被災者へのお見舞いの言葉が述べられた。その後の挨拶では、自工会がまとめた「自動車業界『7つの課題』」について触れながら、カーボンニュートラルについても「敵は炭素であり内燃機関ではない」との有名な言葉を挙げながらあらためての課題感を示しつつ、自工会・前会長であったトヨタ自動車・豊田章男会長にマイクが渡された。そこで豊田章男氏が語った中で、印象的だった言葉をここで紹介しておきたい。

「今こそ、対立や分断、争いや誹謗中傷をやめて、お互いに助け合い、笑顔で『ありがとう』と言い合う。そんな大人の姿を見せる時だと思います。」実はこの言葉、東京オートサロンのトヨタ・ブースで行われた「モリゾウから新年のご挨拶」でも同じ内容が語られていた。きっとそれだけ強い思いがあったのだろう。

 2000年以降だけみても、自動車業界では大きな不祥事の発覚が後を絶たない。車体/パーツメーカー、新車/中古車ディーラー、そして整備工場など、業界の裾野が広いからこそ、その内容もさまざまだ。本誌ではそういった事象について、ある種の吊し上げのような記事づくりはしないと決めている。私たちは「クルマの楽しさ」を伝えるメディアであり、起こってしまったことを非難すること「だけ」に終始することはせず、事実として触れることはあっても、最終的には前向きなベクトルのストーリーを届けることが使命だと考えている。

 そんな本誌『CAR and DRIVER』は昨年9月、創刊45周年イヤーに突入した。2021年の体制変更以降、私が統括編集長としてあらたな編集方針として掲げてさせていただいたキーワードに「Always fun!(オールウェイズ・ファン)」と「Well-being(ウェルビーイング)」の2つがある。前者は、多くの「クルマ好き」な人たちに向けた、旧きよきカー・エンターテインメントを提供し続けること。そして後者は、明るく楽しい新時代のモビリティ・ライフスタイルを提案していくこと。これらを掛け合わせ、「クルマのある、よりよい人生」に資することを目指したコンテンツづくりをおこなうべく、2024年も益々励んでいこうと編集部一丸となって頑張りたい。

 さらに、もうひとつ注力している取り組みがある。それは、『日本カー・オブ・ザ・イヤー』(以下、COTY)だ。過去、幾度となく加盟へのお誘いはありながらも、旧・経営陣の意向もあって距離をおいていたのだが、現体制への移行に伴い一転、2022年から加盟させていただくことにした。その理由は単純明快、「業界を盛り上げる一役を担うため」にほかならない。

 3年目となる今年も、引き続き、いち構成媒体として実行委員会の運営をサポートするとともに、より多くの方に「クルマには大きな魅力がある」と感じていただけるよう、本誌のコンテンツづくり通じて、情報環境づくりの一端を担っていくので、今年のCOTYがどうなるかについてもぜひ注目いただきたい。

やまもとよしたか
東京都生まれ。ITコンサルティング会社でシステム開発、自動車Webメディア編集部等を経て、企業の戦略立案・事業開発・マーケティング支援業務に従事後、2020年に独立。2021年より現職。クルマを運転している時間が一日の中で最も好き。1995年以降は大のF1ファン。2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー副実行委員長

 

 

貴重なエンジニア経験を活かし
大変革期を迎えた自動車業界の
商品&経営戦略を紐解く

文/竹内龍男 ●編集長(CAR and DRIVER)

 子どものころからクルマ好きの父に多大な影響を受け、最初に買った雑誌はサザンクロスラリー仕様の日産バイオレットがかっこよくドリフトしている表紙でした。中高時代は富士や鈴鹿に通ってレーシングカーの撮影に没頭。クルマは国内ラリーで速かったいすゞジェミニZZの中古を購入し、1年で5万km以上を走り、ヒールアンドトゥを猛練習。純正タイヤのアドバン・タイプDは高くて買えず、ステファン・ヨハンソンの広告が素敵だったグランプリ・ヨーロッパに履き替えました。その経験から「タイヤはクルマのキャラクターの大きな部分を決定づける」と就職試験で話したところテストコース配属に。テストドライバーやタイヤ開発の現場で貴重な経験を積みました。

 1995年、ブラックボックスになりがちなタイヤ、乗り心地、クルマの挙動についてわかりやすく解説しようと、この世界の門をたたきました。カー・アンド・ドライバーは多くのクルマ好きが安心して楽しめるよう、フラットで公正、明るさとわかりやすさをコンセプトに誌面作りを心掛けています。

 2024年はマーケティングなどを学び直し、大改革期を迎えたカーメーカーやサプライヤーの商品戦略&経営戦略を紐解くとともに、WECハイパーカーやル・マンの水素エンジンクラス、GR・GT3コンセプトなど気になる情報を追いかけます。

たけうち たつお
1989年理工系大学を卒業。某タイヤメーカーでテストドライバー、評価法開発、新車用タイヤ開発を経験後、1995年カー・アンド・ドライバーに転職。新車やタイヤの記事を書きながら編集の仕事に従事。2003~2005年TOKYO FM出演。フリーランスを経て2017年編集長就任

 

 

CD創刊に立ち会った最古参
2024年は「クルマ好きの輪」をもっと広げたい
ドライビングスキル向上も課題である

文/横田宏近 ●編集委員(CAR and DRIVER)

 CD誌とのつきあいは46年目、学生アルバイト時代に創刊に立ち会い、卒業して編集部に潜り込んだ。以後、若干の紆余曲折はあったものの編集長を2回経験し、現在は編集委員として取材の現場に立たせてもらっている。

 10歳のときに書いた将来の夢は「カーデザイナー」、夢は叶わなかったものの、クルマ関連の仕事を続けられて幸せな人生だと感謝している。クルマはもちろん大好き。取材で出会う、ほとんどすべてに感激し、ワクワクする。ストライクゾーンは広い。自分の愛車は、メインがPHEV、その他、4WDワゴン、ミニバン、ホットハッチ(2台)、コンパクト(2台)の7台体制(ほとんどが10万 kmオーバー)。自分でもさすがに多いと思うが、手放せない。どのクルマも乗ると、いいなと感じる。

 2024年の目標は、「クルマ好きの輪」を少しでも広げること。CD誌をより面白くするのはもちろん、独自イベントを通じて、感動を共有したいと考えている。週末にお気に入りのクルマが自由に集う、「モーニングクルーズ」が開催できると最高だ。個人的には自分の時間を確保し、自由にクルマを楽しむ機会を増やすのが課題。運転も、もっと上手くなりたい! ちなみに、Web版の自動車博物館「名車文化研究所」の館長も務めている。ご笑覧いただけると幸いである。

よこたひろちか
神奈川県・横浜市生まれ。昭和/平成/令和をCD誌とともに過ごす無類のクルマ好き。初マイカーはラリーで強かった三菱ランサー、いまの愛車は68台目。現在も取材の現場を愛し、1970年以降の日本で販売されたほとんどのクルマに触れたことがあるのが自慢

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