ミニカーコレクターとして知られる森永卓郎さん(経済アナリスト、獨協大学教授)のエッセイ。
特殊なスケールでデビュー
■プロフィール もりながたくろう●1957年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。個人のコレクションを展示する「博物館(B宝館)」を、埼玉県・新所沢で一般公開中(毎月第1土曜日)
▲43分の1スケールのトミカ・ダンディ・ブランド製いすゞハイデッカーバスのはとバス 標準スケールはサイズの仕上がりが大きいので細部まで丁寧な表現が可能になる
トミカの発売から2年後の1972年、トミーが、ダンディ・シリーズの発売に踏みきった。
トミカの大ヒットに気をよくして、標準スケールモデル(43分の1)の分野に殴り込みをかけたのだ。ただし、ダンディは当初、完全な標準スケールではなかった。
トミカと同じように、統一された箱の中に収まるように、モデルごとに縮尺を変えていたのである。そのため、乗用車系は、45分の1スケールと、ほぼ標準スケールの範疇に仕上がっていたが、トラックやバスは、縮尺度を上げざるを得ず、100分の1前後の中途半端なスケールになっていた。
それだと、ダンディ・シリーズのコレクションを展示したときに、バランスが崩れてしまう。だから、「スケールを43分の1に統一してほしい」という声が、コレクターから一斉にあがった。
ボクも、ろくに考えもせずに、「そうだ、そうだ」と賛意を表明していた。
トミーは、ダンディ発売の5年後、コレクターの要望に応えて、ダンディのスケールを43分の1に統一した。乗用車は、少し大ぶりになり、国際標準に適合したので、とてもよかったのだが、バスやトラックは、予想以上に大きくなり、販売価格が高くなった。当時、ボクの展示スペースとサイフは限られていたので、これをきっかけに、ダンディの特車シリーズを買うのをやめてしまった。
ところが、ボクと同じように行動したコレクターが多かったのかもしれない。いまダンディの特車シリーズは、乗用車をはるかに上回るプレミアムがついている。
写真のいすゞハイデッカーバスのはとバス仕様も、そうした中の1台だ。43分の1スケールのボディは、なかなかの迫力で、ずっしりとした重量感がある。それに、サイズが大きいだけに、タンポ印刷(曲面などにも対応した印刷技術)やホイールキャップなど、細かい作り込みが、とても魅力的だ。
ボクは、はとバス・ファンで、はとバスのミニカーは、100台近く持っている。それらの中でも、ダンディのはとバスは、ピカイチの存在だ。
こういう傑作があると、ほかのダンディの特車シリーズも、全部集めたいと思ってしまう。実際、少しずつ買いはじめているのだが、各車種とも1万円を超える価格になってしまっているので、ダンディ・シリーズをコンプリートするのは、まだまだ先になりそうだ。