走るリンゴ?それとも梨? BMWが問う超大胆フェイス革命 新型4シリーズクーペ (M440i xDriveクーペ)

top2.jpg小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜17時50分~18時TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』

●誰かが通るべき道、しかしBMWが最初とは思わなかった

 まさかこれほど超大胆なデザイン戦略を本気で実行してくるとは!
 
 クルマ好きの間では喧々諤々かつ賛否両論続出の新型BMW4シリーズクーペだ。
 
 かつての3シリーズクーペの後継で、走りやスタイルをより先鋭化させたモデルとはいえ、ここまでやり切るのはすごい。

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 日本では昨年発表され、当初は限定モデルのみ。577万円から2L直4ターボモデルが用意されているが、現状上陸しているのは1000万円オーバーの3L直6モデル、BMW M440i xDriveクーペ中心。今回、小沢が乗ったのもそれだ。
 
 問答無用に驚かされるのはやはり超特大キドニーグリル。
 
 フロントバンパー上下を完全に貫いており、グリルというより巨大な鼻。リンゴや梨が真正面から走ってくるようでもある。
 
 写真で見た時から違和感ありまくりだったが、実際の外観でもそう。
 
 この手は「実車を見たら意外にカッコよかった」とか「自然に見える」ことも多いが今回は違う。実物を見ると余計にビックリする。

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 ただし優れたカーデザインはチャレンジ精神抜きでは語れず、最初にシトロエン2CVを見た時には驚いたし、DSにも驚いた。

 昨今の自動車界は、日本のミニバンを見ればわかるように、ますますアイコン性が重要視されている。
 
 誰かに似てるクルマは評価されず、オリジナリティが求められる。
 
 その点、4シリーズは他のどれにも似てないし、グラフィックそのものは複雑過ぎない。ただバランスが過剰なだけだ。どこかアニマルっぽいのもイマ風である。

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 最新の自動車はキャラクター性抜きには語れないからだ。この方向はどこかのメーカーが通る道だったのかもしれないが、個人的にはアジアのメーカーだと思っていた。まさかBMWがやるとは思わなかった...というのが本音ではある。

●過剰に濃厚で過剰に速くてナチュラル

 走り味そのものは、ちょっと良すぎるくらいに濃厚だ。

 あいかわらずBMWらしいFRクーペで、サイズは全長×全幅×全高=4775×1850×1395mmと巨大。
 
 それだけにマツダ・ロードスターのようにピュアにヒラヒラ動くことはなく、ナチュラルで気持ちいいけど、どこか電子制御されている感じが付きまとう。
 
 しかも、このグレードはエクスクルーシブなMパフォーマンスモデルで、イマドキなかなか味わえない3L直6ターボエンジンを搭載し、最高出力は387PSで最大トルク500Nmと圧倒的。0-100km/h加速も4.5秒と速い。

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 実際にエンジンを回しても圧倒的だ。日本の高速だとすぐにスピード上限に達するので楽しめないが、延々と回転が伸びていく気持ち良さは圧巻。本当ならばこれでアウトバーンを走りたくなる。
 
 パワーの分、足回りはそれなりに硬いが、そこはBMWマジック。乗り心地は相当いい。
 
 ベースは現行3シリーズの延長で、ステアリングも良好な前後重量配分もあってよく切れるし、手応えもBMWらしくしっかりある。
 
 ただし、全体にパワーアシストはされていて、操っているのと同時に操られ感もある。このあたり最近のBMWはみなそういう感じがある。ナチュラルだけどどこか過剰なのだ。
 
 ブレーキ性能も素晴らしく、軽いタッチからスムーズに効く。しかも剛性感、アシスト感含めてBMWらしい味わいだ。メルセデスやアウディとは感触が違う。

 一方、インテリアだが、試乗車は明るいキャラメル色のシート生地やインテリアが印象的。質感はもちろん高く、カーボン風パネルやアルミ風パネルの質感も高かった。

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 意外だったのが居住性の良さとラゲッジ。全長4.7m超で3シリーズベースだから当然といえば当然だが、クーペでありながらリアシートに身長176cmの小沢がゆったり座れる。
 
 トランクも高さは薄めだが奥行きと横幅が広く大型ゴルフバッグが2つは乗る。
 
 ただし、3シリーズと違って着座位置が低く、埋まるように座らなければならないし、ヒザ前は広いが頭空間はギリギリ。開放感があるとは言い難い。

 しかし、ここに来てメルセデス・ベンツSLなどとは違う方向性を身につけたのは間違いない。
 
 BMWは、ますます独自の道を歩んでいるのを感じた次第である。

ラゲッジ.jpg

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