これは奢りか横綱相撲か? マイチェンN-BOXがACC完全停止を付けなかったワケ

TOP.jpg小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜17時50分~18時TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』

●オーナー目線では正直物足りない

 3年連続でオールジャンル乗用車、国内販売No.1に輝いた大人気車種のホンダN-BOX。
 20年12月24日に約3年ぶりのマイナーチェンジを受けており、今回は新型のノーマルモデルに乗れたので報告しよう。
 
 最初に言ってしまうと現N-BOXオーナーの小沢から見て、今回のモデルチェンジには物足りない部分があった。
 
 変わったのはざっくり3点。エクステリアとインテリアと先進安全のホンダセンシング。

フロント.jpg
 
 走りの性能、58馬力の660cc直3ノンターボや、64馬力の660cc直3ターボエンジン、そして足回りには基本変更はない。
 
 とくに期待されていた追従オートクルーズ時の完全停止機能追加が無かったのに驚いた。

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 いまやライバル、スズキ・スペーシア、ダイハツ・タント、日産ルークス、三菱ekクロススペースといったすべてがオートクルーズ時に完全停止が出来るのにも関わらず、である。
 
 しかし、結論から言うとN-BOXは2020年も19万台強を売って4年連続でオールジャンルNo.1に輝き、12月のマイチェン後の受注は3万台超え。まだまだ魅力を失ってないし、マイチェンは成功ともいえるのだ。

真横.jpg

●完全停止ACC機能が追加されなかった意外な理由

 肝心のマイチェンだが、エクステリアの変わり幅はノーマルよりカスタムのほうが大きい。

 聞けば初期型カスタムはインパクト不足で販売も物足りなかったという。
 
 よって今回ヘッドライト部分には手を付けず、メッキグリルの下半分がV字型から上向きのUの字型になっておりほどよく押し出し感が増している。
 
 一方、ノーマルボディだが、造形的には不変。グリル上部のメッキ部分が中央部に降りて面積が増えている。
 
 これが実車で見てみると意外に目立って悪くない。まあ、オーナーじゃないと気付かないくらいの変化だが。

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 意外に効果的だったのが内装だ。機能的にはこれまた変わらず、ドア内張りやラゲッジ内の樹脂が、ホワイト系から濃いブラウン系に変わっているだけだが、蹴られや汚れが目立たなくなっている。
 
 これは子供がいるご家庭には結構なメリット。
 
 気になる先進安全のホンダセンシングだが、今回から追従オートクルーズの最高速が時速120kmまで上がった。同時にリアの超音波センサーが2個から4個に増え、後退時の警報や誤発進防止の精度が高まった。
 
 同時に、実は追従オートクルーズとともに使えるレーンキープアシスト(LKA)性能が上がっている。
 
 これは旧型オーナーの小沢だけに特に実感できたが、今までのN-BOXのLKAは車線センターをトレースせず、白線を跨ぎそうになった時のみステアリングを中央に戻してくれた。このあたりが確実にアップデートしているのだ。
 
 だが、相変わらずオートクルーズ時に完全停止しないのはイライラが募った。
 
 なにしろ減速時に自動で時速20kmぐらいまでは減速するのだがそこからは先が続かないのだ。
 
 正直、制御がそれほど難しいとは思えない。

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 これを担当エンジニアに聞いたところ「開発時間が足りなかった」というから不思議だ。
 
 他社はすでに出来ているし、同じホンダNシリーズのNワゴンやN-ONEには導入されているのだ。
 
 もちろんその分、高価な電子パーキングブレーキが追加されているのだが。
 
 だが、前述通りこの状態でも3万台以上も受注し、間違いなくライバルを凌ぐ人気を誇っている。
 
 しかも、よくよく見てみると不満を覚えているのは主に現N-BOXオーナー達。新たに買う人はそこまで気にしてないのが事実だろう。
 
 そういう意味で、今回の機能追加の割り切りは「奢り」ではなく、王者が必要ナシと見切った「横綱相撲」だともいえる。
 
 だが、思うにこのタイミングで付けたら、直接販売増加には結び付かなくともファンの間の評価は高まったはず。
 
 そういう意味ではもったいなかったし、勝って兜の緒を締めよ、ではないが長い目で見るとチャンスを逃したという気もするのである。

ラゲッジ.jpg

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