トヨタが株主総会で変更した「監査等委員会設置会社への移行」とは何か

 

 2025年6月12日、トヨタは第121回定時株主総会を実施した。今回の議案は6つ。第1号議案が定款の一部変更。これが「監査等委員会設置会社への移行」という今回の最も大きな議案となる。第2号議案が取締役6名の選任。第3号議案が監査等委員である取締役4名の選任。第4号議案が取締役報酬枠の決定。第5号議案が監査等委員である取締役報酬枠決定。第6号議案が取締役に対する譲渡制限付き株式報酬等の額と内容の決定。つまり第2号と第3号は第1号で決まった会社組織の取締役に誰を当てはめるか、ということであり、第4号、第5号、第6号は、その取締役の報酬を決める内容だ。

 議案の内容を見ても第1号議案が今回の株主総会の大きなテーマだということが把握できるだろう。それでは第1号議案はどんな内容なのか、といえば会社の経営層の人員配置を変更するということだ。トヨタは従来、監査役を6名置いていたが、これを廃止した。一方で取締役10名のうち4名を監査等委員に変更した。監査等委員会設置会社へ移行したから可能となった人員配置だ。

 この変更により「さらなる意思決定の迅速化」が図られ「取締役会は監督に注力」できるようになる、としている。監査活動については「監査等委員会と内部監査室との指示、報告体制を整備し、内部統制システムを活用」することで組織的な監査の充実化が図られるという。

 この年表が示すように、トヨタは会社法に則り、会社法の改正を吟味しながら自社に合う組織体制を検討し採用してきた。2017年までは顧問相談役が55~68名、執行役員が約50名いたというから驚くが、現在は執行役員9名、顧問相談役が1名と大きくスリム化。監査役も廃止され、大きく変わってきた歴史が把握できる。贅肉がそぎ落とされたトヨタの強さが、ここにも表れている。

 投資家や株主としっかり向き合い、対話しながら、社会の変化に迅速に対応するべく会社を運営しやすくしているわけだ。今後も株主総会に注目していきたい。

SNSでフォローする