全日本スーパーフォーミュラ選手権を開催する株式会社日本レースプロモーション(JRP)は、2022年以降の持続可能なモータースポーツ業界作りを目的としたプロジェクト、SUPER FORMULA NEXT 50(スーパーフォーミュラ・ネクストゴー)を発表した。
「50」はゴーと読ませる。JRPと、スーパーフォーミュラ(SF)にエンジンを供給するホンダとトヨタが協力しながら、「これからの社会において必要とされるモータースポーツを目指し、さまざまな取り組みを進めていく」という。
スーパーフォーミュラの前身となる全日本F2000選手権は1973年にスタートした。以来、国内トップフォーミュラは全日本F2選手権(78年〜)、全日本F3000選手権(87年〜)、フォーミュラ・ニッポン(96年〜)とシリーズの名称を変え、2013年からスーパーフォーミュラ(略称SF)として開催。2022年で50シーズン目を迎える。
大きな節目のシーズンを迎えるにあたり、「次の50年に向けて一歩を踏み出す」プロジェクトがSFネクストゴーだ。
SFネクストゴーは、ドライバーファースト、技術開発、デジタルシフトの3つの柱を掲げる。
ドライバーファーストは、世界中のドライバーが参戦したくなる、また、世界中の子供たちがドライバーに憧れるような存在になることを指す。SFに至る国内トップフォーミュラはこれまで、世界で活躍するトップドライバーを多く輩出してきた。
SFを巣立ったドライバーに限っても、佐藤琢磨選手(F1参戦後、インディ500ウィナーに)、中嶋一貴選手、小林可夢偉選手、A・ロッテラー選手(3名ともF1参戦経験があり、ル・マン24時間ウィナーでもある)、S・バンドーン選手(F1〜フォーミュラE)、P・ガスリー選手(F1優勝経験あり)を挙げられる。今季インディカー・シリーズでチャンピオンになったA・パロウ選手もSF出身だ(19年に参戦し年間3位)。
SFは日本から世界に羽ばたくドライバーを育てるステージであり、海外のドライバーにとっては腕を磨くカテゴリーとして機能してきた。それだけレベルの高い競争が行われていることを意味し、その魅力をドライバーだけでなく、ファンに向けても積極的に発信していく気持ちが、ドライバーファーストに込められている。
22年からは一部の大会で、日曜日のレースに加えて土曜日にもレースを行う土日2レース制を導入するのが具体策のひとつ。情報発信の仕方やサーキットでの楽しみ方など、ドライバーファーストを増強する具体策は、22年以降段階的に発表し、進化させていくという。
SFネクストゴーの2本目の柱、技術開発については、SFを「モビリティとエンターテインメントの実験場」と位置づけ、活動していく。国や産業界がカーボンニュートラルの実現に向けて動き出しているのを受け、SFもホンダ、トヨタと連携し、パワートレーン、シャシー、タイヤ、素材、燃料などの各領域で「カーボンニュートラルの実験場」を展開していく。
22年からは、燃料にEフューエルやバイオフューエル、シャシーにバイオコンポジットを用いたテスト車両をレースウイークに走らせるという。
トヨタは水素エンジンのカローラ・スポーツを5月からスーパー耐久シリーズで走らせており、マツダも次世代バイオディーゼル燃料を使うデミオを投入する。カーボンニュートラルに向かう取り組みは積極性を増している。SFはシリーズを挙げて、カーボンニュートラルに結びつく技術開発を行っていく。
3つめの柱、デジタルシフトは、映像、音楽、データ、通信、AI、ゲーム、アニメーションなど、さまざまな切り口からエンターテインメントの技術開発に挑戦することを指す。「日本から世界に発信する新しいモータースポーツカルチャーの創造を目指す」というから壮大だ。
22年から始めようとしている具体的なプランはスマートフォンに最適化したデジタルプラットフォームで、ファンが見たいコンテンツを、いつでも、どこでも見られる環境を整えるという。提供するコンテンツは全ドライバーのオンボード映像、車両データ(車速や位置情報など)、ドライバーの無線音声などだ。
世界レベルのドライバーを輩出するだけの高い競争を維持しながら、カーボンニュートラルに向けた技術開発に取り組み、その模様を公開し、最新のIT技術で新たなモータースポーツの楽しみ方を発信するのが、次の50年を見据えたSFの取り組みだ。変わろうとする国内トップフォーミュラの動きに注目しよう。