高速道路120km/h制限時代の幕開け

新東名と東北自動車道の一部区間で試行

a88a903661a5e7c1289e68d6197c6af603d0791e.jpg▲新東名下り・粟ケ岳トンネル(静岡県島田市) 新東名はカーブと勾配がゆるかに設計されていて走りやすい

 警察庁交通局交通企画課は1月、「3月1日から東北自動車道の花巻南IC〜盛岡南IC間と新東名の新静岡IC〜森掛川IC間を対象に、最高速度を120㎞/h引き上げる」方針を発表した。制限速度が恒久的に120㎞/hに決定したわけではなく、まず1年間は続けて事故の発生状況などを調査。最高速度を変更しても事故状況が悪化しなければ、速度を引き上げ区間を拡大していく予定だ。

最高速110km/hで事故件数減少
 今回、120㎞/hに変更される2区間は、2017年11月と12月から最高速度を110㎞/hに引き上げて、事故状況や走行速度の変化を調査してきた。その結果、速度アップに伴う交通事故の増加はなかった。新東名の場合はそれまで14件だった事故が8件に減少。東北道の場合は4件から2件になった。

 警察庁は「速度差が40㎞/hを超えると事故発生確率が上昇する」と指摘している(13年に開催された〝交通事故抑止に資する取締り・速度規制等の在り方に関する懇談会〟の資料)。現在、高速道路の最低速度は指定がなければ50㎞/h。最高速度120㎞/hの区間においては、理論上は最大70㎞/hの速度差が起こり得る。だが、実際の走行シーンにおいて、50㎞/hで走行する場合は、渋滞の影響などで、すべてのクルマが同程度の速度で走っている状況に限られると考えていい。

最高速度と最低速度の差は40km/h以下に
〝交通事故抑止に資する取締り・速度規制等の在り方に関する懇談会〟の資料によれば、大型貨物車(車両総重量8t以上または最大積載量5t以上)に装着が義務づけられたスピードリミッター(最高速度90㎞/h、03年9月1日以降製造)は事故抑止に対する効果があったという。つまり、大型貨物車が第一当事者となる死亡事故は平均40%減少。大型貨物車が制限速度90㎞/hで走行しても、120㎞/hで走るクルマとの速度差は30㎞/h。警察庁が指摘する40㎞/h差にはならない。

 最高速度110㎞/hを試行した結果、速度違反の摘発件数が減った。その背景には、「パトカーによる取り締まりの強化が〝抑止効果〟を発揮した」(静岡県警)という分析がある。速度アップが事故につながらないよう、当局の努力が安全運転に結びついたといえる。また、高速道路利用者アンケートの結果、約80%が速度差に不安を感じていないとわかった。

 制限速度を110㎞/hに変更する前と後で、実際の走行速度がどう変化したかについては、警察庁の発表を見る限り、大きな変化はない。新東名の場合、試行前の実勢速度は約122㎞/hで、施行後は約123㎞/h。東北自動車道の場合、約113㎞/hが約112㎞/hになった。

 利用者の約3分の2が「規制速度引き上げを他路線・区間に拡大してほしい」と要望している。事故の発生状況、ユーザーの要望を背景に、警察庁は「他路線・区間への拡大を検討する」とまとめている。

 クルマの高速走行性能と安全性のアップ、運転支援技術の充実、ドライバーのマナー向上など、高速道路を安全に利用するための要因は多岐にわたる。120㎞/h区間が拡大するよう、ドライバーはいっそう安全運転を心がけよう。

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