竹岡圭 K& コンパクトカー【ヒットの真相】スズキ・ソリオ「これ1台でOKのオールマイティモデル」(2025年7月号)

2020年11月に4代目にフルモデルチェンジをしたスズキのコンパクトハイトワゴンがソリオ・シリーズ。2025年1月には一部仕様変更を行い、パワートレーンはスイフトで採用されている1.2リッター直3+マイルドハイブリッドに1本化された。この改良は、走りにどのような変化をもたらしたのだろうか。さっそく試乗してチェックした

「スライドドアのクルマがほしいんだけれど、軽自動車のスーパーハイトワゴンよりは大きいのがよくて、でもミニバンほど大きいのはちょっと困るのよねぇ……」という、絶妙なニーズを叶えたパイオニアがソリオなのです。

 実際には、全幅1700㎜以下ギリギリに攻めているケースが多い5ナンバーサイズ車よりも、さらにもう少しコンパクトな全幅1645㎜に抑えられていて、これがまた絶妙に扱いやすさを感じさせるのもポイントだったりします。つまり、軽自動車のいちばん流行りのモデルであるスーパーハイトワゴンからの乗り換えで、いちばん親しみやすいクルマというわけなんです。

 とはいえ、やはり最近のミニバンの影響があるのでしょうか? デザイン的には、今回のマイナーチェンジで、フロントグリルのメッキの配置を横方向に広げて伸びやかさと風格を出してきました。

 兄弟車となるソリオ・バンディットは、さらに迫力ある感じになっているのを見ても、実際に大きすぎるのは困るけれど、堂々と見えるのは大歓迎ということなのかもしれません。

 室内とラゲッジスペースは、相変わらずとんでもなく広いです。まずフル乗車中、後部座席用に足を組めるくらいの広さを確保しても、その際のラゲッジスペースはそこそこ確保されているばかりか、アンダーフロアボックスには背中を丸めれば私が収まるくらいの(笑)驚くべき容量が確保されておりまして、さらにここには高さ的にも立てたままベビーカーが搭載できるという、ママにはうれしい秘密まで隠されています。

 シートアレンジも多彩で、助手席を含めてシートの背もたれを前に倒せば、荷物を目いっぱい積めるのはもちろんのこと、マットを敷けば車中泊だって余裕でできるほどの空間が広がりますし、またシートの背もたれを逆に倒せば、いわゆるフルフラットアレンジもできちゃいます。遊びに行った先でゆったりとくつろげるリビング仕様にもできてしまうんですよね。

 さらにスゴイのが、その空間を縦にも横にもウォークスルーできるということ。たとえば雨の日に後部座席に移動して、後席のチャイルドシートに座らせた子供と一緒にスライドドアから降りる、なんていうシーンでは本当に便利だと思います。もう、広々ミニバン並みにいろんなことできてしまうんですから。

 また、運転席周辺のポケットエリアも、文句なしでたっぷり用意されておりまして、助手席の下のバケツ(正式にはシートアンダーボックス)も健在。いわゆる隠す収納はもうバッチリ。ユーティリティ的には、軽スーパーハイトワゴンとミニバンのイイトコ取りをした1台といっても決して過言ではないと思います。

 となると気になるのは運動性能ですが、今回のマイナーチェンジでいちばん変わったのは、実はパワートレーンなのです。これまでは、ベーシックなガソリンモデル、マイルドハイブリッド、ストロングハイブリッドの3本立てでしたが、こちらがスイフトに搭載したZ12E型エンジン+マイルドハイブリッドにCVTを組み合わせたものに1本化されました。

 実は、これまでもアシスト力はマイルドハイブリッドのほうが強く、発進時の滑らかさやスムーズさは勝っていたんです。従来のストロングハイブリッドは、充電量にもよりますが時速60㎞以下まではEV走行ができて燃費はよかったものの、AMTとの組み合わせはもう少しスムーズ感がほしい感じもあったりして……。

 そこで今回は燃費性能を高め、デメリットをカバーすることで1本化を図り、オールマイティ性を高めたということなのでしょう。AMTのダイレクト感が魅力だったという方には少々残念ではありますが、全体的な質感は間違いなく向上しました。

 誤解のないように付け加えておくと、決して街中モデルとして注力したわけではありません。たとえば電動パーキングブレーキを採用することで、ACCが全車速追従機能・停止保持機能付きになり、加えて車線維持支援機能も追加されるなど、とくに高速道路を使ってのロングドライブ時の疲労軽減をサポートしてくれるような機能が盛り込まれているのを見ても、そのあたりは明らかです。

 他にも安全性能向上機能として、ミリ波レーダーと単眼カメラの組み合わせにより、検知対象を車両や歩行者、自転車、自動2輪車とし、交差点での検知にも対応した衝突被害軽減ブレーキ、デュアルセンサーブレーキサポートⅡを全車標準装備にしたり、前進&後退時の低速時ブレーキサポート、ブラインドスポットモニター、リアクロストラフィックアラートなどもグレードによって標準装備に盛り込まれています。

 当然のごとく最近流行のコネクティッド機能も搭載ということで、ソリオのヒットの真相は、これ1台で何でもできるオールマイティ性の追求にありそうです。さすが、このカテゴリーを築いたパイオニアの威厳というところでしょうか。

ソリオ「ヒットの真相」

1)フロントまわりのデザインを一新して、コンパクトカーながら堂々と風格のあるスタイリングに進化。古さを感じさせない
2)コンパクトなボディサイズながら、室内空間はとても広い。前後席間のウォークスルーを可能としており、使い勝手に優れる
3)直列3気筒1.2ℓマイルドハイブリッドに限定。直3エンジンのネガな部分はなく、モーターアシストで加速&燃費ともに良好

たけおかけい/各種メディアやリアルイベントで、多方面からクルマとカーライフにアプローチ。その一方で官公庁や道路会社等の委員なども務める。レースやラリーにもドライバーとして長年参戦。日本自動車ジャーナリスト協会・副会長。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

SNSでフォローする