BMW M4コンペティション M xDrive Coupé/価格:8SAT 1504万円。M4&M3はBMW Mのレーシーな伝統を継承した中心モデル。最新モデルは2024年7月の改良でエンジン出力を従来の510psから530psにアップ。2ドアのM4はクーペとカブリオレ、4ドアのM3にはセダンとツーリングを用意する.
BMW Mの歴史を遡れば、代表モデルはM3に他ならない。
1990年代「エムスリー」はワンワードとして当時のクルマ好きの間で語られていた。初代はE30、続くE36、E46と栄華な時代を迎える。
そして今日、その進化版となるのがM4である。2ドアのクーペスタイルを貫いたM4(1504万円)は、現行型M3セダン(1470万円)よりも正統後継車というイメージだ。ボディサイズが大きくなったことで、「現代のM3はM2だ」という意見にも賛同するが、系譜としてはやはりM4になるだろう。
最新モデルは、今回クローズアップするM4 コンペティションM xDrive Coupé。サーキットでの本格的な走りを可能とした「Mハイパフォーマンスモデル」である。最新型は昨年7月に日本で発表された。2021年にリリースされた同モデルをいっそう進化させている。
サイズなどは変わらないが、エンジン出力が510psから530psにスープアップされた。この3リッター直6ツインターボエンジンはまだまだ余力がありそうだ。530psはモーターを組む前のレンジローバー系でいえば5リッター・V8と同等レベルのパワーである。
エクステリアではアダプティブLEDヘッドライトやレーザーテールライトが新しい。モダンかつ複雑な光が只者でない雰囲気をかもし出す。装備でいえば、このクルマには高性能カメラやレーダー、高性能プロセッサによる解析技術を用いた最先端の運転支援システムが搭載されていたり、「OK、BMW」で話しかける最新世代のコネクティビティを採用したりしている。
「サーキットで本格的な走りを」という枕詞がつきながら、日常使いも便利な仕様になっているのだ。
実際に走らせた印象だが、前述したようにサーキットと一般道を両立するだけあり、デフォルトで乗り心地が硬すぎたりはしない。もちろん総合的には硬めだが、体を上下に揺らすようなセッティングではない。ただし、Mモードをスポーツやトラックにすると硬質に変化する。事前に自分の好みをステアリング上のM1やM2に登録しておけば本来の「味」になる。
Mハイパフォーマンスモデルの「サーキットで本格的な走りを」の部分が随所に顔を出す感じだ。
ユニークなのはM xDriveと呼ばれるM専用の4WDシステム。基本はDSCオンの4WDモードだが、Mダイナミックではリアへのトルク配分が増えるのと同時に、リアタイヤのスリップ許容量が大きくなる。よりハンドリングを楽しめるような設定だ。さらにいえば、DSCオフの2WDモードまである。つまり、クルマの挙動を制御するシステムを断って後輪駆動で走れる。
ここまで来ればもはや昔ながらのM3。FRパッケージのクルマである。
とはいえ、そんなモードを公道で試すことはできないし、あまり好ましくないので体験はしていない。試すならサーキット走行しかないだろう。500psを超えるパワーを鑑みればそんな結論となる。
なので、公道で走る部分だけで語れば、前述したように意外なほど乗り心地がよかったり、モードを変えればレーシーな加速とエグゾーストサウンドが響き渡るといった感想になる。モンスター級の加速のその先は想像の範囲でしかない。
確実にいえるのはハードウェアの作りが圧倒的にいいこと。ステアリング剛性の高さだったり、横剛性の高いリアサスだったり、ステアリング操作に追従するボディの堅牢さは体で感じられる。このくらいボディをガッチリ作っていれば、サーキット走行も万全だろう。補強のないボディでは、タイムアタックしてピットに戻ったらドアが開かないなんてことになりかねない。
ところでこのM4 コンペティションM xDrive Coupéには、4ドアのM3以外にも兄弟車がある。それはカブリオレ(1594万円)。2ドアクーペのルーフをソフトトップに入れ替えたモデルだ。
本格的なサーキット走行を前提にしたMハイパフォーマンスモデルだが、このクラスともなるとオープンエアモータリングのニーズもあるのだろう。この価格帯のモデルは、世界中のセレブリティがターゲットになる。実際、このハイスペックを誇るオープンモデルが街中を走っていたら目を引く。「どんな人が運転してる?」ってことになるはずだ。
なんてことまで考えるとMハイパフォーマンスモデルのポテンシャルは圧倒的だと思う。生粋のカーガイからおしゃれなセレブまでを魅了する。そこはBMW開発陣も確信しているに違いない。いずれにせよいろんな人を楽しませるのがこのクルマの使命だと思う。
M4 コンペティションM xDrive Coupéの価格は1504万円から。知れば知るほどこのプライスが高くないように思えてくるから不思議である。