メルセデスAMG G63/価格:9SATC 2820万円。G63は4リッターV8ツインターボ(585ps)とISG(20ps)のマイルドHV。足回りはアダプティブ機能を備えたAMGアクティブライドコントロールサス仕様
昨年は「Gターン」可能なBEVのG580 with EQ Technologyが話題となったゲレンデバーゲン。「これが電気自動車!?」って感じで世間のクルマ好きを騒がせた。かつてゲレンデを足に使っていた身としても興味津々。オフロード試乗を含め多くのメディアにレポートを掲載した。ただ日本の富裕層はといえば、指名買いするのはメルセデスAMG G63。港区あたりで闊歩しているのはこいつとなる。
そのエクステリアはご覧のとおりの恒久的なスタイリング。大きなグリルと縦型の格子、伝統の丸型ヘッドライトが象徴的だ。丸いLEDのシグネチャーランプもだいぶ見慣れてきた。背面タイヤはそのままで、ここもゲレンデ伝統のアイテムといえる。進化したのはキーレスゴーを装備したこと。グリップ式のドアハンドルをキープしたままでこの技術の採用は難しかったと聞く。きっと古民家を機能的にリノベーションするようなものだろう。ダッシュボードやメータークラスターが他のモデル同様デジタル化されているのもそんな感じだ。
エンジンは「One Man、One Engine」の原則どおりつくられるユニットで、4リッター・V8直噴ツインターボのM177型を搭載する。しかもこのユニットはISG+48Vシステムとリンクするマイルドハイブリッド。スタート時はモーターがアシストし、回転数が上がればターボが本領を発揮する仕組み。さらにいえば、追越加速ではモーターがエンジンパワーをサポートする。つまり、ブースト機能付きだ。
なので、加速は申し分なし。これまでも過激に速かったが、最新モデルはスタートからさらなる猛ダッシュをかける。安易にガバッとアクセルを踏み込むと、フロントが若干浮き上がり体がシートに押し付けられる。エグゾーストノートと合わせ、ワイルドさMAXの加速だ。とはいえ、それでもボディは安定していてフラフラしない。従来型はそこがイマイチだったが、新型はピシッと足元を安定させる。
ハンドリングもいい。パワーステアリングで軽く左右に回すことができながらステアリングセンターはしっかりしていて安定感がある。それにフィーリングもちゃんと感じられるほど現代的だ。ステアリングは2018年からラック&ピニオン式に変えたが、当初はあえてリサーキュレーティングボール式のフィーリングを再現していたことと関係する。そのほうがゲレンデらしさが残ると考えたのだ。が、新型はそこに現代的なチューニングを行った。つまり、ステアリングフィールを手のひらに伝わるようにした。歴代のゲレンデを乗っていればこの変化に気づくだろう。というのがG63の概要。
ボディとフレームの一体感がちゃんとあって操作がしやすい。エンジンが強力な分それを受け止める側のボディやフレーム、シャシーがしっかりしている証だ。「ボディはエンジンより速く」が信条のメルセデスだけに、そこはしっかりと完成させている。
価格は2820万円から。価格もパワーもスーパーカーレベル。ワイルドでパワフルなオフローダーであることは間違いない。オフロード性能はフロントデフロックまでできるから驚異的。そこも最強だが、オフロードで走る人はほとんどいない気がしなくもない。