【最新モデル試乗】眺めてワクワク、使って便利、しかも走り新鮮。毎日を豊かにするコンパクトBEV、ヒョンデ・インスターの発信力

ヒョンデ・インスター・ラウンジ/価格:357万5000円。インスターは日常に彩りを添えるBEV。バッテリー容量49kWhのラウンジとボヤージュ(335万5000円)、同42kWhのカジュアル(284万9000円)の3グレード構成。ラウンジとボヤージュの一充電航続距離は458㎞。CEV補助金は全車56万2000円

ヒョンデ・インスター・ラウンジ/価格:357万5000円。インスターは日常に彩りを添えるBEV。バッテリー容量49kWhのラウンジとボヤージュ(335万5000円)、同42kWhのカジュアル(284万9000円)の3グレード構成。ラウンジとボヤージュの一充電航続距離は458㎞。CEV補助金は全車56万2000円

想像より楽しいBEV、小さいからこそ素晴らしい

 昨年秋に日本への導入を公表していたインスターが、いよいよ発売された。インスターは主に欧州と日本をターゲットにしたBEVである。本国ではベース車となる内燃エンジンを積むキャスパーが販売されており、そちらは韓国の軽自動車規格(全長×全幅×全高3600×1600×2000㎜、排気量1000㏄未満)に準拠している。

 インスターはキャスパー比で若干大きくなったものの、全長は3.83mに収まり、全幅も1.6mあまりと小柄。日本の狭い道路事情でも使いやすい。

リア

フロント

 スタイリングは楽しそうな雰囲気を発散する。ヒョンデのBEVに共通する、先進的なピクセルグラフィックをはじめ、特徴的な丸形ランプやスキッドプレートなど、アイキャッチが多数散りばめられている。ボリューム感のあるフェンダーやアルミホイールも印象的だ。

 小柄でも、「車内が狭い」とは感じない。長いホイールベースと高めの車高、角度を立てたガラスウィンドウの効果だろう。後席が左右独立してリクライニングと前後スライドが可能なのも重宝する。

全席ホールド

 さらには、全席フォールディングが可能な点に驚いた。後席と助手席を倒せば長尺物が積めるほか、運転席も倒すとフルフラットなスペースになる。車中泊もできそうだ。用途に応じてフレキシブルに活用できる室内はインスターの大きな魅力である。

 ラインアップは3グレード。価格が284.9万円のCasual(カジュアル)と335.5万円のVoyage(ボヤージュ)、そして357.5万円のLounge(ラウンジ)を用意する。試乗車は最上級のラウンジである。

装備は超充実! 各部の日本最適セッティングが滑らかな走りを実現

 ラウンジは、装備の充実ぶりに目を見張った。ボヤージュに対して17㌅アルミ、205/45R17タイヤ、電動スライド式サンルーフ、前席シートヒーター&ベンチレーション、スマートフォンワイヤレスチャージャー、デジタルキー、インタラクティブピクセルライトなどが与えられ、まさにフル装備だ。充電ステーション検索フィルターを統合した最新のカーナビが全車に標準装備されるのもうれしい。

フロント

走り

 気になる一充電での航続距離は458㎞(WLTCモード)。スモールBEVでありながら十分以上に航続距離が長い点にも感心した。充電の受け入れ性能も高く、150kWの急速充電で10%から80%まで約30分で充電できるという。

 V2L給電も万全の体制。車外充電口と車内のコンセントで最大1360Wまで電力供給が可能で、ニチコンとオムロンのV2H機器に対応しており、日本製のBEVと同等の効率で日常利用できる。

 走りもなかなかの実力の持ち主で感心した。まさに軽快に颯爽と走る。軽快で正確なステアリングは、低速から高速まで安定した挙動を実現。日本仕様は、首都高のジョイントや凹凸路でも快適な乗り心地を実現するために、ステアリングシステムとサスペンションを日本専用セッティングとしたという。サスペンションは、仕向け地によってスプリングなどに何通りかの設定がある中から最適な組み合わせを選択。ダンパーに関しては、日本専用品を用意した。

インパネ

シート

 乗り心地は適度に引き締まっていてちょうどいい。硬さを感じることはなく、コーナリングでのロールも気にならない。高速走行時にはフラットで安定感のある走りを実現している。直進安定性が高く、荒れた路面でも影響を受けにくい点は好印象だ。

 ドライブしていると、小柄でも車内が広いこともあり、とてもコンパクトサイズのクルマに乗っているとは思えない。安定感があり快適な乗り心地を実現できているのは、重心が低く前後重量配分にも優れるBEVなればこそだ。

 インスターは騒音と振動の低減にも、なかなか手の込んだ対策を施している。たとえば、フロアメンバーを採用して剛性の強化と振動の低減を図ったり、補強した厚いラゲッジボードを追加したり、ドアとボディにウェザーストリップを備え二重でシーリングを施したりという具合だ。クラスを超えた上質な乗り味には、これらが効いている。

 パフォーマンスも気持ちいい。最高出力84.5kW/最大トルク147Nmで、最高速度が150㎞/h、0→100㎞/h加速は10.6秒と動力性能の絶対値はそれなりだが、「日本の穏やかな交通環境に最適化を図った」という加速特性により扱いやすく、ストレスを感じる場面はない。

モーター

タイヤ

 走行モードは、エコ/ノーマル/スポーツ/スノーの4種。回生ブレーキは、強さを選べるほか、ワンペダルドライブのi-Pedalの採用や、先行車やナビ情報をもとに回生ブレーキ強度を自動的に調整し停止までサポートするスマート回生ブレーキといった先進的な機能も搭載している。先進機能の完成度もかなり高いレベルにあることが確認できた。
 運転支援機能も充実していて、車線維持機能については、よりライントレース性を高めるように日本仕様は制御を見直したという。

 インスターは、手ごろな価格とサイズで十分な距離が走れる。確かに「想像より、相当たのしい。」というキャッチフレーズどおりのBEVである。見て乗って、本当にオールマイティなスモールBEVだと感心した。

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