ダイハツが新たな一歩を踏み出した。一連の認証不正問題を受け、社内の意識と体制を刷新。本来の良心的なクルマ作りに立ち返り、生産を本格化したのだ。大幅減が続いた販売台数は、V字回復を見せている。このタイミングで、ダイハツの幅広いラインアップを取材した。
ダイハツは、1907年に、内燃機関の国産化を目的に設立された発動機製造株式会社を起源とする名門だ。1930年に3輪のHA型ダイハツ号で自動車メーカーとして出発。現在はトヨタ・グループの一員としてコンパクトカー部門を担う。
車種構成は多岐に渡る。中でもKカーはフルラインアップというべき充実ぶり。スーパーハイトワゴンのタントを筆頭に、チャーミングなムーヴ・キャンバス、SUVスタイルのタフト、経済性を重視したミラ・イース、デタッチャブルトップのコペンといった乗用車系はもちろん、生活を支えるハイゼット・カーゴ&トラックの商用車まで、まさに“痒いところに手が届く”モデルを用意している。
商品本部の担当者に、「新たなダイハツ」について尋ねた。車種企画室の大和誠歩氏は「ダイハツの伝統はお客様に寄り添う商品作りです。安全性、耐久性、使い勝手を重視してお客様に迷惑をかけない、高い満足感を感じていただけるクルマを改めて目指しています。これまでは[良品廉価]を掲げていましたが、廉価にこだわるあまり、問題を生み出したという反省があります。今後もリーズナブルさは追求しますが、それ以上に品質にこだわっていきます」とコメント。
同じ車種企画室の古川秀真氏は「ダイハツは、シンプル/スリム/コンパクトのモノ作りを追求しています。これは1㎜、1g、1円にこだわり[ムダを徹底的に省く]ことを意味しています。今後もこの思いは変わりません。ただしムダは省きますが、従来以上に品質を重視することを再確認しています」と教えてくれた。
実際にクルマに触れると、車種のキャラクターごとに見事に作り分けがなされている点に感心した。Kカー群は、プラットフォームやパワーユニットなど共通項が多い。その中でダイハツは車種に応じて細部までチューニングを実施。独自の個性を作り出している。
ドアにセンターピラーをビルトインする技術で助手席側の大開口を実現したタントは、抜群に広い室内空間でリラックスできるよう快適性重視のセッティング。背の高さを意識させない安定感が印象的だ。キャンバスは“デザインの力”が笑顔を誘う。スカイフィールトップを標準装備したタフトの適度な非日常感も新鮮である。
ラストワンマイルの小口配送で活躍するハイゼット・カーゴの魅力も、広い荷物スペースだけではない。ドライバーに優しく軽快な走り味の持ち主であることを実感した。これなら毎日乗っても疲れは少ないだろう。
ダイハツ各車は、どれも真面目にユーザーの立場に立ったモノ作りを実践している。今後、一段と品質にこだわっていくというダイハツに期待したい。