【ポルシェの実力/最新モデル試乗】ポルシェ911カレラ(992-2型)は、さらにポルシェらしく魅力アップ! ターボ系の改良でパワー&実力を鮮明化した

ポルシェ911カレラ/価格:8DCT 1694万円。992-2型カレラの3リッター水平対向6ツインターボは従来のGTS用タービンとターボ・グレード用インタークーラーを得てパワーアッップ。394ps/450Nmを発揮する

ポルシェ911カレラ/価格:8DCT 1694万円。992-2型カレラの3リッター水平対向6ツインターボは従来のGTS用タービンとターボ・グレード用インタークーラーを得てパワーアッップ。394ps/450Nmを発揮する

992-2型のニュースは「t-hybrid」のカレラGTSだけではない

 いわゆる992-2型と呼ばれるマイナーチェンジ版の新型911が正式にアナウンスされたのは2024年の5月28日だった。この日のポルシェジャパンがリリースしたニュースに、それが載っていた。モデルは911カレラと911カレラGTS。それはわれわれを驚かせた。

 理由は911カレラGTS。そのパワーユニットは3リッターユニットをスープアップした3.6リッター水平対向6気筒エンジンを軸とし、そこに電動ターボチャージャーと電気モーターが搭載されていたからだ。つまり911の電動化第1号。システム合計出力541psと合わせ、大きな話題となった。「ブルータスお前もか!」といったところだろう。ただポルシェの場合その背景にはレースがある。そこで培った電気モーターの技術をもとに、911に最適なハイブリッドシステムを開発した。名前はT-ハイブリッド(t-hybrid)という。

真横走り

室内全体感

 なんて話はともかく、そのニュースに隠れてしまったが、忘れてはいけないのが911カレラ。このベーシックなモデルこそ多くの人に愛されてきた真の911である。個人的にもこれまで複数台911カレラを所有してきただけに、愛着のあるグレードだ。

 エンジンはこれまでどおり3リッター水平対向6気筒ツインターボを搭載する。が、今回かなり手が入っていて、インタークーラーやターボチャージャーは再設計された。タービンは前期型GTS専用パーツだったものを採用。各部の効率化で最高出力は9psアップの394psに達した。

リア走り

 エクステリアではエアインテーク上部にあったLEDドライビングライトをなくした。その機能をマトリクスLEDヘッドライトが補うからだ。なので、見比べると表情がなんとなく変わったのがわかる。ちょっとスッキリした印象だ。

 インテリアではメータークラスターが12.6インチの全面デジタルディスプレイになった。伝統の5連メーターの面影を残すセンターの丸い枠はもうない。ただ、それをデジタル表示することはできる。ナビ画面を全面に映し出すなど7種類の表示があるが、その中のひとつに5連メーターは残された。

乗るほどにその真の実力を実感。懐の深さは、さすが911

 実際に走った印象に話を移そう。試乗車はご覧のカルタヘナイエローメタリックのボディで、リアに大きなウイングが装着されていた。タイヤはグッドイヤー・イーグルF1。サイズは前245/35ZR20、後305/30ZR21だった。

コーナリング

タイヤ

 まずはノーマルモードで走らせてみる。思いのほかフツーに動き出す。これがカレラのいいところ。ターボやGT3、GT2といった類のスペシャルなモデルとは異なり、カレラ系はユーザーフレンドリーに作られている。車両感覚は把握しやすいし、操作系もしばらく走っていると体に馴染んでくる。乗り心地もワルくない。これだけのロープロファイルタイヤを履きながら足はよく動き、キャビンをシェイクしない。これなら助手席からクレームは来ないだろう。

 とはいえ、ステアリング上にあるドライブモードの切り替えダイヤルを「スポーツ」、さらには「スポーツ+」にすると隠れていた顔が現れる。瞬時に足は引き締まり、操作系はシビアになる。エンジンはシフトアップのタイミングを遅らせ高回転まで引っ張り、エグゾーストノートが響き始めるからたまらない。あたりの空気が一気にサーキットのようになる。

九島さん

 このときの吹き上がりがポルシェ独特だ。ピークトルクは低回転域で発生させているはずなのだが、回転数に合わせグイグイとクルマを押し出す。そもそもは長年低回転型のユニットを設計してきたブランドなのだが、2011年デビューの991型あたりから高回転まで意識する作りになっている。また、それと同時にエンジン音とエグゾーストノートも変わった。いい意味で「演出」が入っている。センターコンソールにあるマフラーの絵を描いたスイッチを押すと、爆音モードが起動する。トンネル内で響き渡る音は刺激的だ。イタリアのV12とはまったく異なるが、モータースポーツという同じ土俵からのフィードバックであることを実感させる。

シート01

シート02

 8速PDKはシフトスイッチにある「M」を押せばマニュアルモードで走れる。スポーティな走りを楽しみたいときはパドルシフトを駆使すればいい。イタリア系のような派手なブリッピングやバックファイアはなく、しっかりと仕事をこなす。これがポルシェの流儀。

 燃費を気にするなら「ATモード+ノーマル」がいいかもしれない。高速道路では素早く8速まで上がるので、1200〜1300rpmくらいで巡航できる。7、8速はオーバードライブとなる。

 というのが2度目の試乗となった新型911カレラの印象。前回もそうだが、乗り始めは大人しく感じる。しかし、しばらく走っているとその先のパワーと足回りの懐の深さに驚かされる。そこでハッと我に返る感覚。911シリーズには魅力的なグレードがいっぱいあるけれど、やはり911カレラは侮れないというのが今回の結論である。

エンブレム

諸元

メーター

トランク

走り

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