【最新モデル試乗】PHEV化でより高級に快適に成熟。トヨタ・アルファード&ヴェルファイアの到達点

アルファード・エグゼクティブラウンジPHEV/価格:THS 1065万円。PHEVのシステム出力は306psとパワフル。最大73kmのEV走行を実現し、0→100km/h加速を7.1秒で駆け抜ける俊足の持ち主。バッテリーの床下配置で車両の安定性も向上した

アルファード・エグゼクティブラウンジPHEV/価格:THS 1065万円。PHEVのシステム出力は306psとパワフル。最大73kmのEV走行を実現し、0→100km/h加速を7.1秒で駆け抜ける俊足の持ち主。バッテリーの床下配置で車両の安定性も向上した

アルヴェルPHEVは現時点で最良の電動車。運転しても2列目も最高に心地いい

 日本初のミニバンPHEVが登場した。PHEVモデルは、「快適な移動の幸せ」を謳うショーファーカーとしての価値を高めるとともに、カーボンニュートラルに貢献する重要な選択肢のひとつである。

 2.5リッターのPHEVシステムはクラウンなどと基本的に同じ機構。システム出力225kW(306ps)を誇り、18.1kWhのバッテリーを搭載する。EV走行距離は最大で73km、エンジンを併用すると無給油で850km以上も走れる計算になる。

走り

リア

 アルファード/ヴェルファイアともExecutive Loungeの6人乗りタイプのみの設定で、駆動方式はE-Four。HEVとの識別点は専用の19インチホイール。ヴェルファイアには新色プレシャスメタルが加わり、2色だったボディカラーの選択肢が増えたことも朗報だ。

 高級感たっぷりのインテリアにはいつもながらほれぼれする。駆動用バッテリーをはじめ諸々のPHEVユニットの搭載による車内空間への影響は皆無。ラゲッジフロア後端下のアンダーボックス内側の形状が変わった以外に、目に見える違いはまったくない。

ヴェルファイア・エグゼクティブラウンジPHEV/価格:THS 1085万円。ヴェルファイアには新色プレシャスメタル(写真)が登場。足回りの味付けはしっかり感を重視している

ヴェルファイア・エグゼクティブラウンジPHEV/価格:THS 1085万円。ヴェルファイアには新色プレシャスメタル(写真)が登場。足回りの味付けはしっかり感を重視している

PHEVの加速は力強く、全域で静粛性抜群。乗り心地も一段とリファイン

 試乗会ではPHEVのアルファード/ヴェルファイアとHEVのアルファードを乗り比べた。走りには想像以上に差があった。パワートレーンが異なるだけでなく、プラスアルファの進化が大きいからだ。PHEVは俊敏なアクセルレスポンスと瞬発力のある加速を実現している。HEVの加速フィールもいいが、明らかに扱いやすく、力強い。

 車両重量は増えているもののシステム出力が大幅に上回っている効果だろう。0→100km/h加速でいうと、HEVが8.8秒、2.4リッターターボが8.3秒のところPHEVは7.1秒で駆け抜ける。ターボより1秒以上も速いと知って驚いた。出足が控えめで上で伸びるターボに対し、PHEVは出足の力強さがそのまま速さにつながっている。

 走行モードをいろいろ切り替えると、走りや制御が変わる。バッテリーが十分に残っていればEVモードが選択可能となり、よほどでないとエンジンがかかることはない。約120km/hまでEV走行ができる。

 通常走行時に推奨のAUTO EV/HVモードでは、静粛性の高いEV走行を基本に、運転状況に合わせて最適な出力配分となるよう自動制御してくれる。PHEVの醍醐味をより明確に味わえるモードだ。

インパネ

2列目

 PHEVは静粛性についても入念に対策されている。エンジンがかかっても停止しても気にならない静かさが印象的だった。PHEV化によりEV走行する時間が長いのに加えて、HEV走行時でもバッテリーのパワーを活用することでエンジン回転数を低くすることができたおかげで、車内音のレベルを大幅に改善できたのだという。

 さらにはインパネ内に吸音材を追加したり、ドア内の遮音材を拡大したり、ラゲッジ部のカーペットを遮音性の高い素材に変更するなど、適材適所の手当てが施されている。その甲斐あって静粛性は最高レベル。これほど車内の会話明瞭度が高いクルマは心当たりがない。圧倒的に静かな空間だ。

 乗り心地もHEVよりかなりよくなっていた。既存モデルも基本的には悪くない。だが大柄で重い車体を安定して走らせるにはそれなりの対策を施す必要があったのだろう。走行シーンによっては、乗り心地に硬さを感じた。そのあたりの快適性は、電制ダンパーを用いた兄弟車のレクサスLMでは改善されていた。究極の乗り心地実現のためには、やはり電子制御化が必要なのだと思っていたが、PHEVは電子制御化せずにLMのフィーリングに近づいている。

タイヤ

サンルーフ

 PHEVはバッテリーの床下搭載で重心が低くなり安定性が高まったおかげで、HEVよりダンパーの減衰力を落とせたのだという。目からウロコである。電制機能を使わなくてもここまでのレベルを達成したのには恐れ入る。PHEV化が走り面にも大きなアドバンテージを生んだことは、開発関係者自身も驚いているという。

 アルファードとヴェルファイアでは、従来どおりフロントエンドのブレースの有無のほか電動パワーステアリングやダンパーの適合などが異なる。比較すると、しっとり系(=アルファード)としっかり系(=ヴェルファイア)というべき感触の違いがあった。ただし基本性能の向上が効いてか、既存モデルより差は小さくなったように感じた。

 PHEVにはスムーズストップという新機能が搭載された。ブレーキング時の前のめり姿勢を抑え、停止間際にカックンとならないようブレーキを抜いてフラットさを維持する。その効果は小さくない。既存のPDA(プロアクティブドライビングアシスト)とともに、運転が不得手な人ほど大きなメリットを感じることだろう。

岡本さん

 PHEVは、質の高い移動体験に加えて、エンジンをかけることなく待機時に空調を使用できたり、深夜早朝の住宅街を静かに送迎できたり、出先で外部給電が使えたりと、ショーファーカーとしての適性が一段と高まった。アルファード/ヴェルファイアはPHEVを得て真の高級車になった。

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