【ニッポンのSUV】日本の至宝、ロータリーを発電用に使用。マツダMX-30 Rotary-EVを世界で最もユニークな電動車と考えるワケ

マツダMX-30 Rotary-EVモダンコンフィデンス/価格:490万6000円。Rotary-EVはシリーズ式のPHEV。EV走行可能距離は日常ユースに十分な107km。発電専用ロータリーエンジンは830ccの1ローター(8C型/72ps)。ロータリーのコンパクトさを活かしエンジン/ジェネレーター/モーターを同軸上にレイアウトした。駆動用モーター(125kW/260Nm)はパワフル&スムーズ

マツダMX-30 Rotary-EVモダンコンフィデンス/価格:490万6000円。Rotary-EVはシリーズ式のPHEV。EV走行可能距離は日常ユースに十分な107km。発電専用ロータリーエンジンは830ccの1ローター(8C型/72ps)。ロータリーのコンパクトさを活かしエンジン/ジェネレーター/モーターを同軸上にレイアウトした。駆動用モーター(125kW/260Nm)はパワフル&スムーズ

PHEVメカニズムはもちろん、すべてにマツダのこだわり凝縮

 MX-30は、PHEV/BEV/MHEVが選べる電動SUVクーペ。中でもRotary-EVは、マツダが世界で唯一量産化に成功したロータリーエンジンを発電機として用いるシリーズ式のPHEVだ。走行のすべてをモーターで駆動し、バッテリーのみで最大107km走行可能。さらにロータリーエンジンで発電した電力で長距離もOKというオールラウンダーである。

 発電用ロータリーエンジンは、ゼロから開発した専用品。4500rpmで53kW(72ps)の最高出力と112Nmの最大トルクを発生する830ccのワンローターだ。コンパクトさを活かし、高出力モーター、ジェネレーターと同軸上に配置してフロントスペースに搭載している。Rotary-EVは、これに17.8kWh のリチウムイオンバッテリーと50リッターの燃料タンクを組み合わせ、トータルで十分な航続距離とかつてないドライビングの世界を実現した。

真横

エンジン

 走行モードはEV/ノーマル/チャージの3種。EVモードはバッテリー残量がある限りEVとして走り続ける。ノーマルモードではハイブリッド走行し、45%をメドにバッテリー残量が維持されるよう自動制御される。さらにチャージモードは、ロータリーエンジンが起動し、積極的に充電を行う。バッテリー充電量は20~80%の範囲で自由に選べる。ノーマルモードでは45%に設定されているが、ユーザーの好みで広範囲に設定できる点が特徴だ。

スムーズで十分な加速力。ロータリーの鼓動も味わえる!

走り

 市街地をEVモードで走りはじめる。アクセルを強めに踏み込んでもエンジンがかかることはない。EV状態が維持されて、いたって静かで滑らか、十分に力強い走りを楽しめる。高速道路に乗って中~高速で巡行しても好印象をキープ。暴力的な加速感こそないが、ドライバーを気持ちよくする刺激する。

 純BEVに対してモーター出力は107kWから125kWに高められており、若干だがRotary-EVのほうが速いという。確かに走りはパワフルに感じる。ブレーキフィールも上々だった。回生時でもブレーキフィール面の違和感は皆無。実に扱いやすい。

 まだ十分にバッテリーが残っている状況で、ノーマルモードに切り替えた。バッテリー残量が45%以上だと、大人しく走っているぶんにはエンジンはかからない。ただし、アクセルを強めに踏み込むとロータリーが始動し、より力強く加速できるようになる。

リア走り

インパネ

 エンジンがかかったときの感覚は、いままで経験したことのないものだった。ロータリーサウンドは、やはりレシプロとは別物。独特の乾いた連続音が低く控えめに聞こえる。とはいえ車速がある程度出ていると周囲の音にかき消されるほどのレベルだ。ロータリーなので始動してもレシプロのような振動を感じないところもユニークである。

 スピーカーから発せられる走行サウンドの演出も面白い。アクセル操作に応じたEVサウンドが、エンジンがかかったときのロータリー音とうまく連携する。アクセルワイドオープンでは2300〜4500rpmの間でスロットル操作と連動したサウンドが耳に届き、パワーメーターを振り切ると、そこで一定になる。車速やアクセルの踏み加減によって、ドライバーの意図を読み取るかのようにエンジンがかかり、求めた加速を得ることができた。

ドア開け

シート

 WLTCモードのハイブリッド燃費は15.4km/リッターと意外に低い。この点は、あまり気にする必要はないだろう。MX-30・Rotary-EVは基本的にBEVであって、燃費が問われるシチュエーションは限定的と考えられるからだ。何しろBEVとして107kmも走るのだ。充電は、PHEVとして珍しく、普通だけでなく急速にも対応している。
 外部給電機能も充実。別売の機器を組み合わせると最大で一般家庭なら約9.1日分の電力供給が可能だ。

 フットワークも申し分ない。600km+αを走れる電動車として車重(1780kg)は軽いほうとはいえ、BEV版よりも足回りは強化されている。BEVやMHEVのMX-30が、まるで路面をなめるかのようにしなやかだったことを思うと、いくぶん引き締まった印象は受ける。だが、MX-30の美点は失われていない。Rotary-EVの乗り心地は、ハイレベル。加えて、進化したGベクタリング・コントロール(GVC)は違和感がほぼなく、まさしく意のままに操れる感覚をサポートする。

 MX-30・Rotary-EVは、ロータリー特有の味わいが楽しいクルマだった。1台の独創的な電動車としても、目を見張る完成度の持ち主である。

エンブレム

チャート

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