【魅力あるクルマ】「速さを研ぎ澄ました」FFスーパースポーツ、シビック・タイプRの立ち位置

ホンダ・シビック・タイプR/価格:6MT 499万7300円。新型は開発者が「速さを研ぎ澄まし人とクルマの一体感に注力した」と語る自信作。圧倒的なパフォーマンスとドライビングプレジャーを追求。現代のタイプRは、シビックの最速モデルというだけでなく、ホンダのスポーツスピリットの象徴。2024年シーズンからGT選手権500クラスに参戦する

ホンダ・シビック・タイプR/価格:6MT 499万7300円。新型は開発者が「速さを研ぎ澄まし人とクルマの一体感に注力した」と語る自信作。圧倒的なパフォーマンスとドライビングプレジャーを追求。現代のタイプRは、シビックの最速モデルというだけでなく、ホンダのスポーツスピリットの象徴。2024年シーズンからGT選手権500クラスに参戦する

新型は安心感と一体感も追求した究極の赤バッジ

シビック・タイプRはNSX-R/インテグラに続く第3の赤バッジとして1998年8月に誕生。初代(EK9)は「サーキットを射程に収めた走りの歓び」を追求。エンジンのファインチューンと各部の軽量化などスパルタンながらドライビングファンに特化したモデルだった

シビック・タイプRはNSX-R/インテグラに続く第3の赤バッジとして1998年8月に誕生。初代(EK9)は「サーキットを射程に収めた走りの歓び」を追求。エンジンのファインチューンと各部の軽量化などスパルタンながらドライビングファンに特化したモデルだった

 2017年に登場した先代シビック・タイプR(FK8)は、歴代タイプR初のグローバルモデルであり、スタンダードモデルと同時に並行開発されたモデルだった。ニュルブルクリンクFF最速のパフォーマンスと走る道を選ばない性能を兼ね備え、国内外で高い評価を得た。それは販売台数にもしっかりと表れ、歴代タイプR史上最も売れたモデルになった。

 しかし、その評価は賛否両論……。中でも否定的な声は「こんな巨大なボディはシビックではない」、「ターボなんて邪道」、「豪華装備はいらない」などなど。振り返ると初期のタイプRのチューニング手法は「ベースモデルを研ぎ澄ます」だった。だが、それは手段であり目的ではない。では、タイプR本来の開発コンセプトとは何か?  それは「その時点で最高の性能とポテンシャルを持たせ、一番速いクルマを作る」である。これは歴代すべてのタイプRに共通しているブレない軸だ。

新型は「抜群に速くて楽しい」タイプR。開発陣の魂が込められている

 タイプRの最新作は、11代目シビックをベースにした現行タイプR(FL5)だ。開発責任者(LPL)は先代に引き続き柿沼秀樹氏が担当する。柿沼氏は新型について、このように語っている。

「タイプRなので「速い」のは当たり前ですが、本当にクルマを信頼できているのか? 本当にドライバーのコントロール下にあるのか? 本当に意のままの走りができているのか? それを実現するために、新型は潜在能力を「研ぎ澄ます」ことと、人とクルマの「一体感」に注力して開発を行いました」。

 ズバリ、先代に対してスペック上の進化に加えて、多くのユーザーが「クルマの限界」まで使える「懐の深さ」を目指したのである。

 なぜ、そんなことが実現できたのか? ヒントは11代目シビックのグランドコンセプト「爽快」にある。爽快は人間の気持ちである。数値では測るのは難しい。それを引き上げるためには「人の感覚」で磨く必要がある。その結果、絶対性能より官能性能を重視した開発となり、いままで以上に「ドライバー中心」のクルマづくりにつながったのだ。それがクルマの伸び代に表れたのである。

リアスタイル

エンジン

 エクステリアでスタンダード・シビックとの共通部分はルーフとフロントドアのみ。先代以上に専用アイテムで構成している。旧型は機能をカタチで表現するがゆえにガンダムチックなフォルムになったが、新型は機能とデザインを両立させる造形に挑戦。迫力はあるが大人っぽい洗練された印象にまとまった。

 インテリアはタイプR伝統のブラック/レッドのコーディネートを継承。アルカンターラ巻きステアリング、アルミ製シフトノブ、スポーツシート、アルミ/偏光ガンメタの加飾などの専用アイテムをプラス。スポーツ性のみならずプレステージ性もアップした。専用メーターはドライブモードがスポーツ/コンフォート時はアナログ表示(針はタイプR伝統の黄色)、+Rモードはレーシングカーを彷彿とさせる専用グラフィックとなっている。

 エンジンは先代と同じ2リッター直噴VTECターボの改良版。ターボチャージャー効率向上やイナーシャ低減により、歴代タイプR最強となる330ps/420Nmを発揮する。トランスミッションは6速MTのみ。高トルク対応、シフトフィール/ブリッピング性能向上(軽量フライホイール&レブマッチシステム進化)などが行われている。

 シャシーは現行グローバルプラットフォームの進化版。ベースとなるシビックはリア回りの剛性アップが走りのレベルアップに強く貢献しているが、タイプRにもフィードバックされた。構造用接着剤塗布量は先代比3.8倍、強靭なだけでなくしなやかさも備えた車体になっている。
 サスペンションはジオメトリの最適化と各部の剛性最適化によりキャンバー剛性が先代比16%アップ。それに伴いZF製電子制御ダンパー(CDC)やスプリングもリファインされている。

 大きく変わったのはタイヤである。先代の245/30R20(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト6)から265/30R19(ミシュラン・パイロットスポーツ4S)に変更。スポーツモデルでインチダウンは珍しいが、このあたりもこだわりのひとつだ。
 ブレーキは先代同様、ブレンボ製モノブロックキャリパー+2ピースタイプのローターの組み合わせである。

インパネ

シート

 最新タイプRは、スペックや装備しているアイテム面を見ると、先代からの劇的な進化はない。だが、実際にステアリングを握ると「別物」といっていいくらいの差がある。最大の違いは「性能の引き出しやすさ」だ。旧型は速いけれど怖かった。だが、新型は速くて楽しい。これはメカニズムをより研ぎ澄ませたうえで、クルマ全体で高度にバランスさせたことが大きい。まさに数値ありきではなく、ドライバーの感覚を重要視した開発の賜物だ。

 新型シビック・タイプRには、柿沼氏をはじめとする開発陣の「魂」が込められている。幸運にも手に入れたユーザーはガレージに飾るのではなく、徹底的に走り込んでほしい。

ホンダ・シビック・タイプR主要諸元

エンブレム

グレード=タイプR
価格=499万7300円
全長×全幅×全高=4595×1890×1405mm
ホイールベース=2735mm
トレッド=フロント:1625/リア:1615mm
車重=1430kg
エンジン=1995cc直4DOHC16Vターボ(プレミアム仕様)
エンジン最高出力=243kW(330ps)/6500rpm
エンジン最大トルク=420Nm(42.8kgm)/2600〜4000rpm
WLTCモード燃費=12.5km/リッター(燃料タンク容量47リッター)
(WLTC市街地/郊外/高速道路:8.6/13.1/15.0km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=265/30ZR19+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=4名
最小回転半径=5.9m

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