ホンダが新グローバルEV「0シリーズ」を米国で発表。2026年よりグローバル市場への投入を開始予定

米国ラスベガスで開催されたCES2024において、ホンダが新たなEV「0(ZERO)シリーズ」を初公開。コンセプトモデルとして「サルーン(SALOON)」と「スペース ハブ(SPACE-HUB)」を披露。次世代EVへの新たな決意を示す新“H”マークも発表

 ホンダは2024年1月10日(現地時間)、米国ネバダ州ラスベガスで開催された家電エレクトロニクスショー「CES2024」において、2026年よりグローバル市場への投入を開始する新たなEV「Honda 0(ゼロ)シリーズ」を発表するとともに、そのコンセプトモデルである「サルーン(SALOON)」と「スペース ハブ(SPACE-HUB)」を披露。さらに次世代EV向けの新“H”マークを世界初公開した。

▲ホンダは米国ラスベガスで開催されたCES2024で新たなEV「0(ZERO)シリーズ」の概要を発表。コンセプトモデルとして「サルーン(SALOON)」と「スペース ハブ(SPACE-HUB)」を披露する

▲ホンダは米国ラスベガスで開催されたCES2024で新たなEV「0(ZERO)シリーズ」の概要を発表。コンセプトモデルとして「サルーン(SALOON)」と「スペース ハブ(SPACE-HUB)」を披露する

 

 ホンダはグローバルブランドスローガンとして“The Power of Dreams-How we move you.”を掲げ、ホンダの夢をかたちにした「時間や空間といったさまざまな制約から人を解放するモビリティ」や、「人の能力と可能性を拡張するモビリティ」により、より多くの人の夢の実現を後押しし、社会を前進させるための原動力となっていく、という思いを込めた活動を展開している。そして、2050年にホンダの関わる全ての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルを目指し、その実現に向けて四輪車においては2040年までにEV・FCEV販売比率をグローバルで100%とする目標を掲げ、電動化に取り組んでいる。

 今回発表された「0シリーズ」は、グローバルブランドスローガンや電動化方針のもと、大きく変革するホンダを象徴するEVシリーズとして企画。開発に当たっては、「ホンダのクルマづくりの出発点に立ち返り、ゼロから全く新しいEVを創造していく」という決意が込めて0としている。具体的には、ホンダがクルマづくりで大切にしてきた理念である「M・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想」と「操る喜び」、そして「自由な移動の喜び」をさらなる高みへと進化させることを目指している。なお、ホンダはその第1弾となるモデルを2026年より北米市場を皮切りに、日本、アジア、欧州、アフリカ・中東、南米と、グローバル各地域へ投入していく予定である。

▲「ホンダのクルマづくりの出発点に立ち返り、ゼロから全く新しいEVを創造していく」という決意を込めて、新たなEV を0シリーズとする

▲「ホンダのクルマづくりの出発点に立ち返り、ゼロから全く新しいEVを創造していく」という決意を込めて、新たなEV を0シリーズとする

 

 0シリーズの車両を開発するに当たって、ホンダは「これからの時代にホンダが創りたいEVとは何か」を原点から見つめ直す。そして、長い航続距離を確保するためのバッテリー搭載量の増加や、それを搭載するための車体やプラットフォームの大型化などによる“厚くて重い”EVという制約から解放し、新たなEVの価値を創造することを目標に据える。さらに、この新たなEV開発アプローチを「Thin, Light, and Wise(薄い、軽い、賢い)」という表現でまとめた。Thinはフロア高を抑えた“薄い”EV専用プラットフォームにより、低全高のスタイルなどデザインの可能性を拡張するとともに、高い空力性能を志向。また、Lightは原点に立ち返って生み出した独自技術で、これまでのEVの定説を覆す軽快な走りと電費性能の実現を目指す。そしてWiseは、これまで培ってきた知見と知能化技術の進化により、クルマそのものが賢くなる、ホンダ独自のソフトウェアデファインドモビリティの創出を意図している。

▲新たなEV開発のアプローチを「Thin, Light, and Wise(薄い、軽い、賢い)」という表現でまとめる。Thinはフロア高を抑えた“薄い”EV専用プラットフォームにより、低全高のスタイルなどデザインの可能性を拡張するとともに、高い空力性能を志向する

▲新たなEV開発のアプローチを「Thin, Light, and Wise(薄い、軽い、賢い)」という表現でまとめる。Thinはフロア高を抑えた“薄い”EV専用プラットフォームにより、低全高のスタイルなどデザインの可能性を拡張するとともに、高い空力性能を志向する

 

 この開発アプローチのもと、専用に開発したアーキテクチャーを軸に、①共鳴を呼ぶ芸術的なデザイン、②安全・安心のAD/ADAS、③IoT・コネクテッドによる新たな空間価値、④人車一体の操る喜び、⑤高い電費性能という5つのコアバリューの提供を目指していく。

 ①としては、デザインコンセプトに“The Art of Resonance(ジ アート オブ レゾナンス)”を掲げ、「環境、社会、ユーザーとの共鳴」をテーマに、見る者の共鳴を呼び起こし、暮らしの可能性を拡げるサステナブルなモビリティの創出を目指す。

 また②としては、今まで培ってきたHonda SENSING Eliteの技術を活用したADAS(先進運転支援システム)の採用に加え、2020年代後半にはAD(自動運転システム)を採用し、より多くのユーザーが手の届く自動運転車として展開していく。自動運転システムについては、“人間中心”という哲学のもとに培ってきたホンダの安全思想をベースに、AI、センシング、認識判断、ドライバーモニターといった知能化技術の進化により、人の感性に近い、自然で高精度な危険予測を可能とし、安全・安心な自動運転の実現を目指す。これにより、高速道路における自動運転領域を拡大するとともに、現在、高速道路のみで使用可能なハンズオフ機能を、一般道でも一部利用可能とすることを目指して開発を進める。

 さらに③としては、ホンダ独自のビークルOSを軸とするIoT・コネクテッド技術により「運転して楽しい、使って楽しい、繋がって楽しい」という価値の提供を目指す。AIやビッグデータの活用により、音楽などのユーザーの好みや運転中の行動傾向をクルマが学習し、様々な提案を敢行。加えて、下車後から目的地までのラストワンマイルもクルマが周辺情報や経路を教えてくれるなど、ユーザーの気持ちを理解するかのような価値を提案する。

 他方で④としては、ホンダ独自の電動化技術とダイナミクス技術により、軽快で、心も身体もクルマと一体になる高揚感が得られる次世代の操る喜びの提供を目指し、合わせて0シリーズの低全高のスタイルに、モータースポーツで鍛え上げた空力技術を惜しみなく投入することで、空力性能、ダイナミクス性能、デザインを高次元で融合させる。

 そして⑤としては、ハイブリッド車の開発などで培った電動化技術をベースにエネルギー効率を突き詰め、高い電費性能を実現。具体的には、電気変換効率やパッケージングに優れたe-Axle(イーアクスル)、軽量で高密度なバッテリーパック、高い空力性能により、バッテリー搭載量を最小限にしながら充分な航続距離を目指す。EVの普及において課題となる充電時間やバッテリー劣化への不安に対しても、ストレスフリーな充電性能と、長年使用しても性能劣化が少ない安心のバッテリー性能を提供。0シリーズでは、15%~80%急速充電時間を10~15分程度に短縮するとともに、100万台を超えるリチウムイオン電池搭載車の膨大な走行データをベースに培ったバッテリーシステム制御技術により、使用開始から10年後のバッテリー劣化率を10%以下とすることを目指す。

▲0シリーズでは15%~80%急速充電時間を10~15分程度に短縮することを目指す

▲0シリーズでは15%~80%急速充電時間を10~15分程度に短縮することを目指す

 

 今回披露された2台のコンセプトモデルを見ていこう。

 まずサルーン(SALOON)は、Thin, Light, and Wiseを体現する、0シリーズのフラッグシップコンセプトモデル。最新のEV専用アーキテクチャーにより、デザインの自由度を拡張し、EV時代においてM・M思想を昇華させた。

 エクステリアは、一目見て他車との違いを感じさせる低全高でスポーティ、かつ魅惑的なスタイルを具現化。一方でインテリアは、外観からは想像できないほどの広い室内空間を内包する。また、インパネはシンプルで直感的な操作が可能なHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)を採用し、洗練されたシームレスなUI(ユーザー・インターフェース)を実現。さらに、ステア・バイ・ワイヤの採用に加え、ホンダ独自のロボティクス技術で培った姿勢制御などのモーションマネジメントシステムをさらに進化させることで、様々な走行シーンにおいてドライバーの思い通りのコントロールの実現を目指し、0シリーズのフラッグシップとしてEV時代における究極の「操る喜び」を追求している。

▲サルーン(SALOON)はThin, Light, and Wiseを体現する、0シリーズのフラッグシップコンセプトモデル。EV専用アーキテクチャーにより、デザインの自由度を拡張し、EV時代においてM・M思想を昇華させる

▲サルーン(SALOON)はThin, Light, and Wiseを体現する、0シリーズのフラッグシップコンセプトモデル。EV専用アーキテクチャーにより、デザインの自由度を拡張し、EV時代においてM・M思想を昇華させる

 

 一方でスペース ハブ(SPACE-HUB)は、0シリーズ共通のデザイン言語のもと、「人々の暮らしの拡張」を提供することをテーマに開発する。

 Thin, Light, and Wiseの開発アプローチにより、広々とした空間と見晴らしの良い視界を実現。「ユーザーの“やりたい”に即座に応えるフレキシブルな空間を備えるSPACE-HUBが、人と人、人と社会をつなぐハブとなり共鳴を生み出す」という思いを込めて企画している。

▲スペース ハブ(SPACE-HUB)は0シリーズ共通のデザイン言語のもと、「人々の暮らしの拡張」を提供することをテーマに開発。Thin, Light, and Wiseの開発アプローチにより、広々とした空間と見晴らしの良い視界を実現する

▲スペース ハブ(SPACE-HUB)は0シリーズ共通のデザイン言語のもと、「人々の暮らしの拡張」を提供することをテーマに開発。Thin, Light, and Wiseの開発アプローチにより、広々とした空間と見晴らしの良い視界を実現する

 

 最後に、新“H”マークの特徴を紹介しよう。

 現在のHマークは1981年に改定されて以降、その歴史を積み重ねてきた。今回、次世代のEVを新たに開発するにあたり、ホンダ四輪車の象徴であるHマークを新たにデザインすることで、変革への思いを示すとともに、原点を超え、挑戦と進化を絶えず追い求めるホンダの企業姿勢を主張。また、両手を広げたようなデザインは、モビリティの可能性を拡張し、ユーザーに向き合う姿勢を表現している。この新たなHマークは、0シリーズを含むホンダの次世代EVに採用する予定だ。

▲ホンダ四輪車の象徴であるHマークを新たにデザインすることで、変革への思いを示すとともに、原点を超え、挑戦と進化を絶えず追い求めるホンダの企業姿勢を主張する

▲ホンダ四輪車の象徴であるHマークを新たにデザインすることで、変革への思いを示すとともに、原点を超え、挑戦と進化を絶えず追い求めるホンダの企業姿勢を主張する

 

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