【ボクらの時代録】1991年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。ホンダ・シビック(EG3/4/6型)のビビッドな先進性

シビック01キャッチコピーは「スポーツ・シビック」、2BOXの新価値を提唱

 新型シビックのアピアランスは「正常進化」という表現が適切である。ひと目でシビックだとわかるアイデンティティを確実に継承したうえで、シビックならではの個性をさらに磨き込んでいる。

 ガラスハッチ部分とロアゲートを分離した「ツインゲートキャビン」や、キャビン内のリアセクションを思いきりよくクローゼット風に仕上げるといった、これまでの2BOXカーに見られなかったアイデアを見事に具体化したことには感心した。合理性に半ば見切りをつける、そんなリスクを背負ったうえで、不振といわれる日本の2BOXカーマーケットに新しい活路を見出そうとする姿勢。そこにFF2BOXカーの「布教者」たるホンダのエネルギーを感じるし、共感も覚えた。

キャビンエンジン イメージリーダー、SiR・IIの動力性能は鮮烈そのものだ。170ps/7800rpm、16.0kgm/7300rpmの絶対的なハイパワーだけでなく、いかにもスポーツエンジンらしい研ぎ澄まされたレスポンスと「ホンダ・ミュージック」と呼びたいメカニカルサウンド。そして5600rpm付近を境目として一段と盛り上がるパワー感を実現している。この3者の融合が、スポーツマインドをホットに刺激するのだ。さらに出来のいいMTが、鮮烈なエンジンフィールをバックアップする。確実に小気味よく決まるフィーリング、レッドラインまで引っ張ってシフトアップをすると、次の「パワーゾーン」入り口回転数となる設定は、まさにスポーツMTだ。血をたぎらすようなスパイシーな動力性能という点で、シビックSiRは他を寄せ付けない。

 走りの印象は、旧型とはかなり異なったフィーリングへと進化している。新型のボディは本当にしっかりとしている。ノイズ&振動性能もドラスティックなまでに向上していた。新型は速いペースでうねりのある道路や荒れた道路を通過しても、ボディの弱さ意識することはない。乗り心地も遥かに洗練されている。

 もともと長めだったホイールベースが、さらに70mmも伸びたことで、コーナリング時のキビキビ感は、ややマイルドになった。だが走りのポテンシャルを制限するような結果にはなっていない。4輪の接地感は明らかに向上しているし、トラクション能力も旧型を確実に凌ぐ。
 1990年代をリードするスポーツHBとして、そのポテンシャルは非常にハイレベルにある。
(河村康彦/1991年11月10日号発表)

1991年ホンダ・シビック/プロフィール

 5代目シビックは1991年9月にデビュー。愛称は「スポーツ・シビック」。カタログでは「いままた指標となるクルマへ。ニューベンチマーク・カー誕生」と記載し、シビックの伝統をリセットし、これからの人と地球のために、発想の転換を行ったクルマであることをアピールした。ボディタイプは3ドアHBとフェリオのサブネームを持つセダンの2種。5ドアHB(ワゴン)のシャトルは従来モデルの改良版が販売された。イメージリーダーとなる3ドアは前席優先設計の「ワンルーム&ツインゲート・コンセプト」を導入。後席を倒すとプライベート空間に変身する4シーターパッケージが話題を呼んだ。

フェリオ走り メカニズムは先代の「グランドシビック」の熟成版。サスペンションは全車4輪ダブルウィッシュボーン式。エンジンはホンダ独創のVTEC機構を広く採用した。スポーツモデルのSiR系は1.6リッタークラス最強となる、リッター100psを超える170ps(MT)を実現。燃費経済性を重視した1.5リッターのVTEC-E(94ps)も登場した。駆動方式はFFをメインに、フェリオにはイントラックと呼ぶ4WDシステムを用意。安全性の配慮も積極的で、運転席エアバッグやトラクションコントロール、ABSなどを装備していた。

1991年の時代録/ソ連崩壊で世界秩序が変化

【出来事】1月、湾岸戦争勃発。東京・新宿に東京都庁が移転/ジュリアナ東京がオープンし、「ワンレン・ボディコン」が女性の人気のファッションに/NTTが超携帯電話『mova』を発売し、携帯電話が普及し始める/ソ連が崩壊し、ロシア連邦に/マツダ787Bがル・マン24時間レースで日本車初優勝。搭載エンジンは4ローター・ロータリーだった 【音楽】オリコンシングル年間1位『Oh! Yeah!/ラブ・ストーリー突然に』小田和正/SMAPがCDデビュー 【映画】邦画配給収入1位『おもひでぽろぽろ』、洋画興行成績1位『ターミネーター2』 

1991年ホンダ・シビック 主要諸元

グレード=SiR・II
新車時価格=5MT 162万円/4AT 170万6000円
全長×全幅×全高=4070×1695×1350mm
ホイールベース=2570mm
トレッド=フロント:1475/リア:1465mm
車重=1050(AT1090)kg
エンジン(プレミアム仕様)=1595cc直4DOHC16V・VTEC
最高出力=170ps/7800(AT155/7300)rpm
最大トルク=16.0kgm/7300(AT15.6/6500)rpm
10モード燃=13.0(AT11.2)km/リッター(燃料タンク容量45リッター)
サスペンション=前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=195/55R15+スチール
駆動方式=FF
乗車定員=4名
最小回転半径=5.3m

表紙

SNSでフォローする