【感動エンジン】飽くなき理想の追求。ランボルギーニはスーパースポーツの革新者である!

エンジン車よ永遠なれ/輸入車編 Lamborghini

ランボルギーニは1963年の創業以来18の量産モデルを生産。そのうち12車種がV12を搭載。ランボルギーニにとってV12は、アイデンティティであり魅力の源泉。写真は最新V12スポーツのレヴエルト

ランボルギーニは1963年の創業以来18の量産モデルを生産。そのうち12車種がV12を搭載。ランボルギーニにとってV12は、アイデンティティであり魅力の源泉。写真は最新V12スポーツのレヴエルト

猛牛の象徴は自然吸気のマルチシリンダー!

エンブレム

 ランボルギーニは、これまでに18の量産モデルを世に送り出している(ボディのバリエーション違いはカウントせず)。このなかでV12エンジンを搭載したモデルは1963年発表の350GTを含め、実に12車種に上る。V10モデルとV8モデルの各3車種に比べると、彼らが手がけるV12モデルの多さには驚かされるばかりだ。

 しかも、全18車種のうち、ターボエンジンを搭載しているのはウルスの1車種のみ。残る17車種がすべて自然吸気エンジンという点は実に興味深い。裏を返せば、自然吸気のマルチシリンダーエンジンこそがランボルギーニの魅力の根源といえる。

レヴエルト エンジン

 なぜ、ランボルギーニは自然吸気マルチシリンダーエンジンにこだわってきたのか?
 初作の350GTにV12エンジンを選んだ理由は明快だ。トラクター製造で巨万の富を手に入れるとともに、並々ならぬエンスージャストでもあったフェルッチオ・ランボルギーニが、「世界一のスーパースポーツカーを作る」ことを目標に、アウトモビリ・フェルッチォ・ランボルギーニS.p.Aを設立したのは1963年のこと。そのきっかけとなった」事件」については諸説あるものの、彼が所有するフェラーリのクラッチが度々焼き付くことに業を煮やしたフェルッチオがエンツォ・フェラーリと対立。このときの怒りが、自身の自動車メーカー立ち上げにつながったとする説が有力だ。

ミウラ

エンジン工場

 フェルッチオはエンジン開発者のジオット・ビッザリーニに「フェラーリよりもパワフルなエンジンを作れ!」と指示。しかも、新エンジンの最高出力が目標値を上回った場合、その馬力に応じてボーナスを与えるとの約束まで交わしたとされる。

 これに奮起したビッザーリーニは排気量3.5リッターの自然吸気式V12エンジンを開発。当時としては驚異的ともいえる320㎰を達成した。同時期にフェラーリが販売していた250GTベルリネッタ・ルッソの排気量3リッター・V12は、240㎰に過ぎなかった。

 なぜ、ランボルギーニとフェラーリのV12エンジンは、こうもパフォーマンスに開きがあったのか?最大の理由は、ビッザリーニがランボルギーニV12のバルブ駆動機構にDOHC(V型なのでカムシャフトは計4本)を採用したことだった。DOHCはバルブ駆動系の慣性重量が減って高回転化が容易になり、バルブの挟み角が比較的、自由に選べる。しかもバルブを大径化しやすく、点火プラグを燃焼室の中心近くに置けるなど数々のメリットが存在した。DOHCは高回転化にくわえて理想的な燃焼室の実現にも有利だったのだ。

 ターボチャージャーがまだ市販車に応用されていなかったこの時代、高出力化を達成するには高回転化、もしくは大排気量化のどちらかしか実現手法はなかった。もっとも、俊敏な走りが肝要なスーパースポーツに重量増が避けられない大排気量エンジンを搭載する選択肢は事実上、存在しない。つまり、自然吸気エンジンの高回転化こそ、エンツォに打ち勝ちたいフェルッチオにとって唯一無二の方法だったのである。

クンタッチ

 V12エンジンを積んだ350GTはランボルギーニの名前を世界に知らしめるうえで大きな役割を果たす。さらに、1966年にはこのV12をキャビン後方に横置きしたミッドシップ・スーパースポーツの先駆け」ミウラ」を発表して再び世界を驚かせると、1971年にはマルチェロ・ガンディーニ・デザインの奇抜なボディをまとったクンタッチを投入。みたび世界をあっといわせた。

最新V12モデル、レヴエルトが示唆する未来。スーパースポーツはまだまだエンジンが主役となる

 クンタッチは、通常の縦置きミッドシップモデルとは逆方向にエンジンを搭載。ギアボックスを前向きとしてキャビンに食い込ませることでマスの集中化と効率的なパッケージングを実現して見せた。

 ランボルギーニは、クンタッチの発展型としてその後、ディアブロ、ムルシエラゴ、アヴェンタドールといったV12ミッドシップ・モデルを次々に投入。ムルシエラゴまでは、そのV12エンジンに350GT用と基本的に同じアッパークランクケースを流用していたとされる。

 それが、2011年デビューのアヴェンタドールで完全新設計のエンジンに変わった。そして、先ごろ発表されたレヴエルトではついに」ギアボックス前置き」のレイアウトを諦め、プラグインハイブリッドシステムと組み合わされたのだ。それでも自然吸気式を守り続けたところに、ランボルギーニの矜持は表れている。レヴエルト レイアウト

ウラカンimage

 ランボルギーニ製V12エンジンの特色は、フェラーリV12の甲高い澄んだ音色に対して、音程的にはやや低く、メカニカルノイズを多く含んだ迫力あるサウンドにある。回転フィールにしても、絹のように滑らかなフェラーリに対して、ランボルギーニのV12にはどこかざらついた感触があった。ある意味でそういった野生的な印象がエンジンの鼓動を際立たせ、独特の官能性を生み出していたともいえる。

 未来はどうなるのか、スーパースポーツカーに関しては、あくまでも自然吸気の超高回転マルチシリンダー・エンジンにこだわってきたランボルギーニは、前述のようにNA・V12エンジンにハイブリッドシステムを組み合わせたレヴエルトを発表。来年にはウルスを、その翌年にはウラカンをハイブリッド化し、さらに2020年代後半には2台のフルBEVをリリースすると公言している。

「ただし、スーパースポーツカーのEV化に関しては、まだ方針を決めていません」とステファン・ヴィンケルマン会長。「これについては、ギリギリまで待ってから判断するつもりです」 と語った。つまり、超高回転型自然吸気マルチシリンダーエンジンが生き延びる可能性は、まだまだ残されているのだ。

ウラカン走りimage

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