【クルマの通知表】新世代e-POWERを採用した第4世代の「タフギア」。X-TRAILの走りと完成度は電動SUVのトップ級である

日産エクストレイルG e-4ORCE 価格/474万8700円 試乗記

日産エクストレイルG・e-4ORCE/価格:474万8700円。e-POWERは発電用1.5リッター直3VCターボ(144㎰)と駆動用モーター(フロント204㎰/リア136㎰)で構成。エンジンは可変圧縮比仕様。パワーユニットは全域パワフル&静粛。燃費も優秀

日産エクストレイルG・e-4ORCE/価格:474万8700円。e-POWERは発電用1.5リッター直3VCターボ(144㎰)と駆動用モーター(フロント204㎰/リア136㎰)で構成。エンジンは可変圧縮比仕様。パワーユニットは全域パワフル&静粛。燃費も優秀

4代目は電動e-POWERモデル。最新技術ですべてを刷新

 4代目となる新型エクストレイルの評価は、2022-2023COTY「テクノロジー・カー・オブ・ザイヤー」を受賞するなど多方面で高い。だが、せっかく順調なスタートを切ったのに、納期の長期化で受注が停止されていた。それが4月中旬から、ようやく販売が再開された。

 筆者はエクストレイルに好印象を抱いている。実車を見ても、歴代モデルに対してずいぶん立派になったと感じる。最近のSUVは軒並みデザインと質感を競い合うようになってきた。その中でも、エクストレイルのジャンプアップは特筆レベル。今回のテスト車は最上級グレードのG・e-4ORCE。キルティング柄でタンカラーのナッパレザーシートは、まるでインフィニティのように高級感がある。チャレンジングな色使いも興味深い。

エクストレイル外観

エクストレイルインパネ

 インパネは機能的な構成。12.3インチのTFTメーターは、スッキリしていて見やすく、情報量も充実している。ヘッドアップディスプレイが装備され、カーナビは最新。操作性にも優れている。こうした装備が不得手なユーザーでもちょっと慣れれば使いこなせるほどわかりやすい。

 室内空間は余裕たっぷり。後席はヒップポイントが従来よりも下がったが、それでも前席よりやや高め。見晴らしはよく、頭部の周辺にも狭さは感じない。リクライニングの調整幅は大きく、前後スライドも可能。くつろげる。おまけにGグレードにはロールサンシェードが付く。ただし、Gに3列シート仕様は未設定。3列シートはXグレードのe-4ORCEでしか選べない。設定拡充を期待する。

 前後席の乗降性は良好。ドアは比較的大きく開き、サイドシルの高さは抑えられている。クラストップの容量を誇るラゲッジスペースは、確かに実用的。テールゲートの開口幅と高さは十分だ。1500Wの電源コンセントが設定された点も大歓迎である。

 運転席からの視界と車両感覚の把握しやすさにも工夫が見られる。ミラーとピラーの位置関係やウィンドウ形状など、できるだけ見やすくして死角を作らないよう配慮された。ただし、このサイズのSUVゆえどうしようもない部分もある。取り回し性は総合的に見て、平均レベルだ。

気持ちよく静かで俊敏な走行フィール。燃費も優秀

 メカニズムは最新仕様。高出力モーターとVC(可変圧縮比)ターボによる第2世代e-POWERとe-4ORCEという組み合わせで実現した走りは、高い完成度に驚かされた。

 サンルーフ付きのテスト車の車重は1900kg。車検証によると前軸重1070kg、後軸重830kgと前軸だけで1㌧を超える。だがドライブフィールはいたって軽やかだ。アクセル操作に対する反応は極めてリニア。応答遅れがなく気持ちよく走る。そのうえ、瞬発力は十分なのに唐突感はない。海外の高性能BEVによくあるガツンという衝撃は起こらないのだ。あくまでスムーズに、それでいてグングンとスピードが上昇する。このあたりの制御は見事。モーター走行車に多くの経験を持つ日産は、他社にはないノウハウをつかんでいるようだ。

 車速を高めると、60km/hあたりを境に力強さは徐々にマイルドに変化する。とはいえタウンスピードでのアクセルレスポンスは快感レベル。しかもアクセルを踏み込んでも静かな状況をキープする。発電のためエンジンが始動しても、遠くにあるかのような感覚。その存在を意識させない。走りは見事だ。

エクストレイル リア

エクストレイル エンジン

 燃費もよかった。従来のe-POWERは、高速走行すると燃費がガタ落ちしたものだが、エクストレイルはだいぶ様子が違う。厳密には計測していないが、瞬間燃費を見ていると、高速巡行時でもそれほど悪くない。これなら欧州市場への導入を予定しているというのも合点がいく。

 アクセル操作だけで走りをコントロールできるe-ペダルも熟成された。かつては手前で止まりすぎて戸惑う場面もあったが、導入から時間が経過して改善されている、最新版は人間の感性に合った自然なフィーリングに変化した。ただし、満点ではない。慣れれば問題ないのかもしれないが、e-ペダルのON/OFFでブレーキフィールは変化する。ブレーキ自体にも少々クセがあり、いわゆる「板」ブレーキ感と、ペダルを踏み込みんだり離したりしたときの応答遅れが気になった。

エクストレイル顔

エクストレイル タイヤ

 ハンドリングは素直で回頭性もよく、意のままに走れる。アウトランダーPHEVほど凝ったシステムではないが、e-4ORCEの巧みな内輪ブレーキと4輪の駆動力の制御により小さな舵角でコーナーを立ち上がっていけるのは気持ちいい。

 半面、キビキビとした走りの実現のため、足回りはそれなりに固められている。前席ではそうでもないが、後席では乗り心地が硬いと感じるシチュエーションが多い。「現状は走りを優先したセッティング」だと、開発陣から聞いた。

新型エクストレイルは、見た目も走りも上質でコーナリング性能も優秀。装備も充実している。完成度は非常に高い。街で見かける機会はまだ少なく、気になっている潜在ユーザーは大勢いるに違いない。受注再開を歓迎する。

通知表/X-TRAIL G e-4ORCE 価格/474万8700円

エクストレイル01

総合評価/81点

Final Comment

走り込むほど高い完成度を実感
新世代e-POWERは電動HVの新たなスタンダード

 総合的な評価は実力どおり高めとなった。新世代のe-POWERは、絶対的な性能に加えて、味付けも巧み。持ち前の滑らかで静かな走りには磨きがかかり、革新的な技術を用いた3気筒エンジンは、いい仕事をしている。日常域はBEVのようにウルトラスムーズ。踏み込むとあたかもエンジン駆動しているかのように車速とエンジン音が自然な感覚で高まっていく。実走燃費テストの結果もかなりのレベル。気になった点は乗り心地とブレーキだが、それも大きな問題ではない。

エクストレイル使い勝手エクストレイル快適性

エクストレイル動力性能

エクストレイル魅力

テストコース

日産エクストレイル主要諸元と主要装備

エクストレイル真横グレード=G-e-4ROCE
価格=474万8700円
全長×全幅×全高=4660×1840×1720mm
ホイールベース=2705mm
トレッド=フロント:1585mm/リア:1590mm
最低地上高=185mm
車重=1880kg
エンジン(レギュラー仕様)=1497cc直3DOHC12Vターボ
最高出力 kW(ps)/rpm=106kW(144ps)/4400〜5000rpm
最大トルク Nm(kgm)/rpm       250(25.5)/2400〜4000rpm
モーター最高出力=フロント:150kW(204ps)/4501〜7422rpm/リア:100kW(136ps)/4897〜9504rpm
モーター最大トルク=フロント:330Nm(33.7kgm)/0〜3505rpm/リア:195Nm(19.9kgm)/0〜4897rpm
WLTCモード燃費=18.4km/リッター(燃料タンク容量52リッター)
(市街地/郊外/高速道路:16.1/20.5/18.3 km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=235/55R19+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m

主要装備:プロパイロット(ナビリンク機能付き)/プロパイロット緊急停止支援システム/インテリジェント前方衝突予測&車線逸脱防止&後側方衝突防止支援システム/アドバンスドヒルディセントコントロール/標識検知機能/ホットプラスパッケージ(ヒーター付きドアミラー+前後席シートヒーター他)/インテリジェントルームミラー/インテリジェントアラウンドビューモニター/NISSANコネクトナビゲーションシステム(12.3インチワイドディスプレイ)/ETC2.0ユニット/テーラーフィットシート/前席電動調節機能/19インチアルミ/本革巻きステアリング/PTC素子ヒーター/アクティブノイスコントロール
装着メーカーop:アダプティブLEDヘッドランプ 1万1000円/クリアビューパッケージ(リアフォグランプ)2万7500円/ナッパレザーシート(抗菌仕様)7万7000円/BOSEプレミアムサウンドシステム+ルーフレール+パノラミックガラスサンルーフ29万7000円
ボディカラー:サンライズオレンジ/スーパーブラック2トーン(op7万7000円)

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