【欧州メーカーのBEVブランド戦略】メルセデスEQS試乗レポート

メルセデスEQシリーズのトップモデル

 メルセデスEQの頂点に立つEQSに試乗した。日本仕様のEQシリーズはEQC(2019年7月発売)、EQA(2021年4月発売)、EQB(2022年7月発売)と、すでに複数のモデルが存在する。

EQSはメルセデスの電動ブランド「EQ」の頂点。日本仕様はシングルモーター(RWD)の450+(写真)と、ツインモーター(4WD)のAMG53・4マチック+(2372万円)の2グレード構成

 この中でEQSはすべてが新開発。EQC/A/Bがエンジン車用骨格をモディファイして使用しているのに対し、EQSはBEV専用のプラットフォームを採用する。「日本で販売されているBEV中で最長」をうたう航続距離は、ホイールベースを長く採って電池搭載量を増やした専用プラットフォームのメリットだ。

 現在のEQSのバリエーションは、最高出力245kW(333ps)のモーターで後輪を駆動する450+(航続距離700km)と、トータル484kW(658ps)に達する2基のモーターで前後輪を駆動するAMG53・4マチック+(同601km)の2タイプ。

Cd値は量産車世界トップの0.20。空気抵抗の低減は、高速走行時の電費に好影響を与える

 試乗車は、450+。幅が1.4mを超えるディスプレイを備えたMBUXハイパースクリーンとARヘッドアップディスプレイなどで構成するデジタルインテリアパッケージ(105万円)を装着していた。

 EQSでまず目を引くのは、徹底したフラッシュサーフェス化と「ワンボウ」(弓)と紹介されるクーペのようなシルエット。前後のオーバーハングが極端に短くAピラーが前進したいわゆる「キャブフォワード」のプロポーションは、従来のメルセデス・セダンとは明らかに異なる。

 Cd値は0.20と「量産自動車最良」をアピールする。独立したトランクルームを持たず巨大なテールゲートを備える点やサッシュレスドアの採用も、専用設計されたことを実感させるポイントだ。

インパネは先進イメージ。写真のMBUXハイパースクリーン(セットop105万円)は左右12.7インチ/中央17.7インチの大型モニターを一体化したデザイン。操作系は既存のメルセデス各車と共通イメージ。走行セレクターはステアリングコラム右側に配置する

 乗り込むと未来的なダッシュボード・デザインに目を引かれる。が、個々の操作系は既存モデルを踏襲。メルセデスに慣れていれば「何が何やらわからない」という事態にはならない。

 キャビン空間は広々。しかし床下にバッテリーをレイアウトする関係かヒール段差は小さめ。エンジン車との違いを意識させられる。センタートンネルがないので後席足元も広々した雰囲気だが、着座姿勢には“高床レイアウト”の印象がついて回る。

室内スペースは前後席とも広い。ただし床下にバッテリーを積む影響でフロアはやや高め。乗り心地は全域で快適

 日常シーンでの加速力は十二分。バッテリーは107kWhという大容量。アクセルペダルを深く踏み込んでも一部のBEVが示すような爆速を感じないのは、シリーズ内にAMGバージョンも用意するゆえか。

 静粛性は非常に高いが、それでもロードノイズなどがあって「無音」では決してない。路面によっては鼓膜にドラミング的な音圧の変化を感じるシーンもあった。

EQSはハッチバック形状。荷室容量は最大1770リッター

 どっしりとして接地感の高い乗り味はメルセデスらしい。一方、ときにばね下の重さを意識させられるのは265/40R21というタイヤがもたらす影響でもありそうだ。

 それでもEQSは、「BEVにいまできることはすべて入れ込んだ」という意気込みが十分に伝わってくる。渾身の1台である。

450+のWLTCモード航続距離はBEV最長の700km

■主要諸元

グレード=EQS450+
価格=1578万円
全長×全幅×全高=5225×1925×1520mm
ホイールベース=3210mm
トレッド=フロント:1645/リア:1660mm
車重=2530kg
モーター型式=EM0027(交流同期発電機)
モーター最大出力=245kW(333ps)/4147〜11544rpm
モーター最大トルク=568Nm/0〜4060rpm
一充電走行距離=700km(WLTCモード)
交流電力量消費率=182Wh/km(WLTCモード)
駆動用バッテリー=リチウムイオン電池(BT0013)
駆動用バッテリー総電力量=107.8kWh
サスペンション=フロント:4リンク/リア:5リンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=265/40R21+アルミ
駆動方式=RWD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.5m

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