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アマルフィは、ローマの後継として誕生した。基本となるFRプラットフォームを共有し、エンジンもその進化版を搭載する。一般的なカーメーカーなら見た目からもビッグマイナーといったところだろう。ただフェラーリはそうはいわない。というのも、モデルごとにかける時間とコストが量産車メーカーとは異なるからだ。毎年積み上がるサーキットからのフィードバックを結集して市販車のアップデートに取り組んでいる。よって各モデルは固有のキャラクターとパフォーマンスを発揮する。
ではアマルフィの個性とはなんなのか。今回ポルトガルのファロでステアリングを握って感じたことがある。それは快適な乗り心地と操作系の気持ちよさ。マネッティーノを「コンフォート」や「ウエット」にしたときのロードゴーイングカーとしての仕上がりはさすがだ。高いレベルで完成している。ここで疑問を持ったのは、これらはサーキットからのフィードバックとは関係がないこと。 「コルサ」ではそれが明確に現れるが、コンフォートやウエットのアップデートはサーキットとは別物だ。テストドライバーと開発陣が新たな領域に足を踏み入れないと進化しない部分である。
具体的に何がいいかといえば、アマルフィは段差や細かい路面の凹凸にしっかり対応しているということ。ローマでは細かいピッチングが起きるような場面もスーッと滑るようにこなし、キャビンを快適な空間に押し上げる。このしっとりさはスーパーカーであると同時に高級車に近い。また、このときのステアリングフィールが気持ちいい点も伝えておきたい。スッと切ったときの手のひらに伝わる感覚はクルマの挙動を感じさせながらも、おさまりがいい。無駄な振動はカットされ、最低限必要なだけの情報がドライバーの手に伝わる。まさに秀逸なFRスポーツといったイメージである。
このあたりは日常使いを前提にしたサスペンションのセッティングとEPS(電動パワーステアリング)を基にしたグリップ推定システムが関与していると思われる。後者は296GTBで導入されたシステムで、それを今回バージョンアップした。全領域で路面のグリップレベルを見極める制御システムが効率的にトラクションを管理してくれる。よってキャビンはフラットにキープされ、高級感が得られるのだ。
なんて話をするとアマルフィにレーシーさがないように思われるかもしれないがそうではない。アマルフィは3.9ℓのV8ツインターボ(640cv)を搭載。ローマ+20cvのパワーソースは「コルサ」モードで豹変する。V8サウンドと共にドライバーをゾクゾクさせる領域に突入するのは明白だ。
ローマからアマルフィへのフルモデルチェンジ。その内容をみればクルマ好きほど「ナカミは同じ」といいたくなるものだった。プラットフォームやエンジンはなるほど「キャリーオーバー」だ。なんならフロントウィンドウも同じ。フォルムだって似ているから、昔だったら「ビッグマイチェンだ」と片付けられそう。
その実、エンジンはほぼ新設計で、足回りから細部までダイナミクスで手の入ってないところは皆無。おまけに開発陣から「乗った瞬間に違いがわかるよ」と前もって聞かされていた。だから、大いに期待して(といいつつ、実は半信半疑で)乗り込んだ。
まさに「似て非なるもの」だった。正方形の石を敷き詰めた駐車場で走り出した途端、「ローマとは別物である」と確信できた。進化幅は大きい。まず微速域での動的フィールからしてワイドスタンスに感じる。とくに前アシ。突っ張った印象はなく、ノーズが低く広がった感覚さえあった。ローマよりしなやかさが増し、自由に動く感覚が前面に出ている。乗り心地も断然よくなった。
結果、テストの日は朝から雨で路面はハーフウエットだったにもかかわらず、気にすることなくドライブできると自信を持てた。これは多くのユーザーにとってありがたい進化だと断言できる。
さほど道幅の広くないカントリーロードで躊躇なくペースを上げていく。V8ツインターボ(640cvs/760Nm)の力強さはいうまでもなく、それを路面へと伝えるまでの「スムースな俊烈」がたまらない。サウンドのボリュームこそ控えめながら音質は微に入り細にわたって整えられており、脳に軽く響き渡った。ずっと聴いていられるという点で爆音とは一線を画す。
そんな力と音に盛り立てられての操縦性はスポーツカーそのものだった。走る/曲がる/止まるがまさしく高次元でバランスしている。中でも最も感銘を受けたのがバイ・ワイヤシステムを採用したブレーキの制動フィール。これはもう以前のV8・FR系とは雲泥の差。ブレーキの踏み応えがよかったからこそ積極的なドライビングに自信が持てた。「減速の楽しさ」は優れたスポーツカーの必須条件だ。
アマルフィは同じV8・FRながらローマとは商品キャラクターがはっきりと違う。ローマはフェラーリに乗り慣れたカスタマーのための、「美しいけれど猛々しい跳ね馬」だった。対するアマルフィは、かつてのカリフォルニアがそうであったように、新たなユーザー向けの「力強くレンジの広い跳ね馬」であると確信した。
