
ルノー・ルーテシア・エスプリ アルピーヌ フルハイブリッドE-TECH/価格:399万円。最新型はモノグレード構成。エクステリアはフォルムはそのままにフロントマスクの印象を一新。スポーティな印象を高めた。E-TECHハイブリッドのシステム出力は143㎰。従来比3㎰向上
フレンチ・コンパクトの代表、ルノー・ルーテシアが一段と「通好み」に変身した。ルーテシアは、欧州では「クリオ」を名乗る主力モデル。1990年の登場以来、欧州カー・オブ・ザ・イヤーを2度受賞するなど一貫して高評価を受け、世界中で1600万台以上を販売している。日本名のルーテシアは、ラテン語で現在のパリ周辺を意味するルテシア(Lutecia)に由来。軽快な印象のクリオの名称も悪くないが、おしゃれで、どことなく優雅なスタイリングを見ていると、パリを意味するルーテシアのほうが似合うと感じる。
最新のルーテシアは、上級仕様「エスプリ・アルピーヌ」のモノグレード構成。パワートレーンはルノー自慢のEテック・ハイブリッドに一本化された。つまりF1を戦うアルピーヌのスポーツパッションと、ひとクラス上の上質さ、輸入車唯一のフルハイブリッド・システムの高効率が味わえるドライバー心をそそる組み合わせだ。価格は400万円を切る399万円になる。
スタイリングは新造形のフロントマスクが印象的。シャープな薄型LEDヘッドライトと存在感のあるグリル、そしてブランドロゴからインスピレーションを得たという縦長のデイタイムランプが個性を主張する。ボディフォルムそのものは従来と共通だが、新造形の17インチアルミと相まって、ぐっとモダンで走りの印象を高めた。さすがフランス生まれ、造形に深みがある。
ボディサイズは4075×1725×1470mmとコンパクト。ルーテシアのSUV版であるキャプチャー(同4240×1795×1590mm)よりひと回り小さく、同一世代のプラットフォームを使用する日産ノートオーラ(同4045×1735×1525mm)に近い。小さすぎず、また大きすぎない、日本の道路状況に最適な設定である。もちろん一般的な立体駐車場にも余裕で対応する。
Eテック・ハイブリッドもさらに進化した。Eテックは、メインとサブの2モーター(E-モーター+ハイボルテージスターター&ジェネレーター)と1.6リッターエンジンを組み合わせたルノー独自のシステム。ポイントは、モータースポーツ由来のドッグクラッチを使用したマルチモードATだ。モーター側に2速、エンジン側に4速のギアを配し、全体で12通りの変速比から、モーターとエンジンからつねに最高効率のパワーを引き出す。
具体的には発進時はつねにモーターが受け持ち、中速域ではモーターとエンジンが協働、高速時はエンジンが主体となり、追い越し時などではモーターがアシストする。
最新モデルは、システム出力が従来の140㎰から143㎰に向上。車重が10kg軽量化された関係もあり、WLTCモード燃費は25.4km/リッターに0.2km/リッター向上した。燃費性能は輸入車トップだ。
以前、従来モデルで横浜から四国の松山まで約800km走った際には30.3km/リッターを記録して驚いたが、新型がそれを上回ることは間違いなさそうである。
ドライビングフィールは実に心地いい。まず走り出す前から、モダンさを高めた室内造形と、ルノーらしい優しい座り心地のシートがパッセンジャーをもてなす。9.3インチに拡大されたスマホのミラーリング機能付き縦型センターディスプレイの操作性は良好。高音質の9スピーカーBoseサウンドシステムが標準装備されるのもうれしいポイントである。
走りはスムーズで軽快だった。加速はダイレクト感にあふれ、市街地はもちろん高速道路やワインディングも、まさに思いのままに走れる。パワーの余裕はどんな走行状況でも十分。右足に力を込めるだけで、ドライバーが期待する速さを披露する。シフトセレクターでBレンジを選ぶと、アクセルを離すだけで、最大減速度0.15Gのブレーキ力が得られ、ワンペダル感覚のドライブが楽しめるのもプラスポイントだ。最適効率を求めるEテックは時折、緩加速にもかかわらすエンジンを唸らせるが、それを除けばパワートレーンに注文をつける点はない。
足回りの印象も素晴らしい。サスペンションは適度に引き締まった調律。ステアリング操作に対し自然な身のこなしを見せ、駆動用バッテリーをリアに搭載する重量配分の良さや重心の低さが実感できた。安定していながら俊敏というイメージだ。
乗り心地もしなやかである。速度を上げるほどにフラットでしっとりとしたフィーリングに変化する。パフォーマンスはもちろん、快適性はコンパクトカーのレベルを大幅に凌駕している。
最新のルーテシアは、大型車からのダウンサイジング層にも最適な選択肢だと感じた。クラスを超えた上質感と走りは大いに魅力的。しかも燃費もいい。SUV全盛のいまだからこそ、ローシルエットのコンパクトHBを選ぶのは、クルマ好きであることを周囲にアピールする行為かもしれない。大人が似合う1台である。
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