久々のアルファロメオらしいフレッシュモデル、ジュニアを、高速道路とワインディングで存分に走らせた。
ジュニアはアルファロメオの最新エントリーモデル。4195×1780×1580mmの日本でも扱いやすいコンパクトさが魅力で、パワートレーンはIbrida(イブリダ)と呼ぶMHEVとElettrica(エレットリカ)と呼ぶ完全BEVの2種。価格レンジは420万円から565万円。日本デビューは6月24日だった。発表に115年の歴史を誇るアルファロメオが、イタリアのミラノで創業した日が選ばれたのは、それだけ期待のモデルだからだろう。ちなみにジュニアはブランニューながら、フィアット600など、ステランティスの同セグメントの兄弟車とメカニズム上の共通性が高い。つまり信頼性は折り紙つきだ。
試乗車は、1.2リッター直3ターボ(100kW/230Nm)と、モーター(16kW/51Nm)を内蔵した6速eDCTを組み合わせたイブリダ・プレミアムだ。
以前、市街地で乗ったときから、これはいい!と感じるものがあったが、今回ワインディングを走って、その思いを強くした。身内の兄弟車も軽快な走り味は共通しているが、ジュニアは、アルファロメオらしく明らかに作り分けられている。溌剌としたキャラクターがいちだんと際立っており、刺激的だ。
圧倒的に速いとか、エンジンサウンドに魅了されるという大ワザの持ち主ではないものの、クルマ好きを虜にするツボを心得ている。まさに思いのままに走り、いつの間にかドライビングに没頭している自分に気づく。こんなクルマは久しぶりである。
高速道路では小さいのに安定しており、ワインディングでは小さいクルマならではのキビキビとした走りが楽しめた。この二面性は見事。とくにワインディングでの走りは想像以上に素晴らしかった。
ジュニアは、俊敏に素早く向きを変え、ラインがブレることもない。まさにイメージどおりに曲がっていける。ステアリングを戻すほうもキレイについてきて、一体感のある走りが堪能できる。
足回りは引き締まっているのだが、しなやかに動く。ストローク感があり、路面の影響を受けても軌跡が変わることはない。乗り心地も優秀である。
ステアリングがまた絶品だった。操舵力が軽いだけでなく回頭性が俊敏で、どこでもクイックなハンドリングを楽しめる。しかも無用な過敏さがないのがいい。ピタッと動いて、挙動が把握しやすい。あまり意識しなくても無駄な動きは出ない。まさしく意のままに操れるクルマである。だからワインディングが望外に気持ちいいのだ。
足元の215/55R18サイズのグッドイヤーのエフィシェントグリップが、いい仕事をしている。基本的にはエコタイヤだが、グリップは十分で音もそれほど気にならない。もちろんハンドリングのよさをスポイルすることもない。
システム出力145psのMHEVパワートレーンはスポーティな印象。ドライブすると兄弟車と明確な差を感じる。全体的にアクセルレスポンスがよく、速さでも上回るように感じられた。アルファらしさを演出するため、グループ内の兄弟車とはいろいろな点が専用に仕上げられているようだ。
パフォーマンスは良好だ。1.3トン台の車体を高速道路で巡行させるシーンでも不足を感じることはない。高速道路では、市街地のようにコースティングすることはないが、高めの車速域でも思ったよりもしっかり加速できるように感じられた。
パワーはアップダウンの連なるワインディングでも十分だった。きつめの上り勾配でもストレスを感じさせない。パドルシフトが装備されているので、必要に応じて簡単にシフトダウンすることができる。
走行モードは3種類。ワインディングを走る場合は、DNAセレクターでD=Dynamicを選択するのがベターだ。走りがより活き活きとするとともに、メーターパネルの表示やアンビエントライトの色も変わる。
ただし、3気筒モデルゆえに、回したときのエンジン音はどうしてもやや物足りない。3気筒の宿命といえばそれまでだが、何かアルファのブランド性を感じさせる演出があるとうれしい。
ブレーキは高水準な仕上がりだった。回生していることを感じさせないほど自然なフィーリングに仕上がっていた。一方で、高速道路でACC+車線維持機能を作動しているときに、ときおり左右どちらかの車線に寄っていく傾向が見受けられた。この点は個体差なのだろうか。あらためて確認したいと思う。
最初に目にしたときから気に入っているスタイリングは、ワインディングでもいっそう映えて見えた。そうなると、せっかくのイケメンを台なしにする日本仕様のナンバープレートが残念でならない。なんとかならないものだろうか……。
とにかくジュニアは、ワインディングで光る存在である。こんなに気持ちよく走れるとは思わなかった。見た目も走りも魅力的なイタリアンスポーツが誕生した。
