
ジムニー・シリーズは軽量&コンパクト設計を武器に圧倒的な走破性を実現。劣悪な条件になるほどタフさが光る。現行型は「プロの道具」をテーマに開発され、造形からメカニズムまですべてに意味がある逸材。2025年10月にジムニーとジムニー・シエラは商品改良を実施。安全機能が充実した
ジムニー・シリーズは、世界で最もコンパクトな「本格ヨンク」である。軽自動車のジムニーと、1.5リッターユニットを搭載したシエラ&ノマドの3モデルでラインアップを構成。1970年の誕生以来、一貫して磨き続けてきた走破性を武器に、世界199の国と地域で活躍。累計販売は350万台を超え、世界に熱烈なファンを獲得している。日本はもちろん、地球にはジムニーでなければ走れない道が存在する。
2018年6月に登場した現行モデル(4代目)は、20年ぶりにモデルチェンジされた自信作。「プロの道具」をテーマに一段と骨太に生まれ変わった。エンジンはジムニーが0.66リッター直3DOHC12Vターボ(64㎰)、シエラとノマドは新開発1.5リッター直4DOHC16V(101㎰)。トランスミッションはともに5速MTと4速ATの2種。駆動方式はFR→4WD切り替え式パートタイム4WDになる。
その人気は凄まじい。納車までの時間は、ジムニーで半年ほど、シエラでは1年に伸びる。2025年1月に発表されたノマドは、発表後わずか4日で5万台の注文を獲得。現在は受注停止中。すでに受注したユーザーも納車までに相応の時間が必要な状況である。
最新のニュースは2025年10月にジムニーとシエラの一部仕様を変更したこと。全車に衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポートII」を採用し、車線逸脱抑制機能を標準装備。さらにアダプティブクルーズコントロールや後方誤発進抑制機能をプラスし、スズキコネクトに対応。メーカーオプションとしてバックカメラ付き9インチディスプレイオーディオを新設定したのもニュースだ。ラインアップは従来通りだが、価格は従来比で上昇。MTとATは同価格になった。価格帯はジムニーが191万8400〜216万400円。シエラは227万1500から238万5900円になる。
人気の要因は多岐にわたるが、まずはデザインが魅力的だ。現行型は機能性を徹底追求。外観は車両の姿勢・状況を把握しやすいスクエアデザイン。降雪時に雪がたまりにくい凹凸の少ない形状に仕上げた。さらに丸型ヘッドライトや5スロットグリル、クラムシェルボンネットなどジムニーの伝統となるデザインアイコンを取り入れ、どこか懐かしい印象を与える。
ジムニーとシエラは、伝統の3ドア/ショートホイールベース仕様。両車の基本造形は共通。シエラは、大型バンパーと樹脂製オーバーフェンダーが個性を主張する。ボディサイズはジムニーが3395×1475×1725㎜。シエラは3550×1645×1730㎜。ホイールベースは2250㎜だ。最低地上高はジムニーが205㎜、シエラは210㎜になる。
一方、新登場のノマドは待望の5ドア/ロングホイールベース仕様。シエラ比で全長/ホイールベースともに340㎜拡大し、実用性に優れた5ドアボディを構築した。ボディサイズは3890×1645×1735㎜、ホイールベースは2590㎜。最低地上高は210㎜。ノマドの生産はインド・グルガオン工場が担当。輸入車として日本に上陸する。
現行モデルは、ボディカラーも印象的である。多彩なラインアップを揃え、イメージカラーはジャングルグリーンとキネティックイエロー(ノマドは未設定)。ともに大自然を舞台に活躍する森林警備隊やハンターのグッズを参考に開発されたカラーリングだ。ジャングルグリーンは森になじむロービジリティカラー(=隠れる色)、キネティックイエローは濃霧や悪天候時でも存在を主張するハイビジリティカラー(=目立つ色)となっている。
インパネは全車共通の水平基調。ドライバー正面に2眼式メーター、中央にナビ用スペース、助手席側にアシストグリップを配置する。スペースは想像以上に広い。現行型は前席ヒップポイントを旧型比で30㎜後方に下げながら、前後席乗員間距離を同40㎜拡大。さらにピラーを立てたスクエアボディにより頭上や肩回りのスペースも十分に確保した。室内寸法はジムニーとシエラが長×幅×高1795(ジムニーXG1770)×1300×1200㎜。ノマドは1910×1275×1200㎜。ノマドの後席は3ドア比で後方に50㎜移動され、ひざ回りの空間を改善。同時にホイールハウスの影響が少なくなったことでシート幅を90㎜拡大した。シート自体のクッション性も見直され、ファミリーユースにも最適な空間に仕上げている。ただし乗車定員は3ドア同様の4名だ。
現行型は、シートの作りがいい。全車の前席はシートフレーム幅を旧型比70㎜拡大し、クッション性能を見直した快適仕様。前席のシートスライド量は45㎜延長され240㎜を確保。強度も高まり、横剛性が7%、後方強度が40%向上した。そのしっかりとした座り心地は、本格ヨンクらしい本物感たっぷりだ。
走りとメカニズムは一級品である。新開発ラダーフレームを採用。新たにXメンバーと2本のクロスメンバーを追加することでねじり剛性を従来の約1.5倍に高めた。さらにノマドではセンターにメンバーを加え、車体とフレームをつなぐボディマウントゴムも新設計。乗り心地と操縦安定性をリファインしている。サスペンションは前後3リンクリジッド式。優れた接地性と大きな対地クリアランスが確保できる伝統のシステムである。
駆動方式はパートタイム4WD。2H(2WD高速=FR)、4H(4WD高速)、4L(4WD低速)をシフトレバー後方の副変速機で切り替える。現行型は電子制御デバイスにより走破性をリファイン。4L時に作動するブレーキLSDトラクションコントロールを新採用。これは空転した車輪にだけブレーキを作動させ、悪路脱出性を高める機構だ。さらに急な下り坂で有効なヒルディセントコントロール、坂道発進をサポートするヒルホールドコントロールを全車に装備している。今回、改めて河原を走行したが、ランクルやジープなどの大型ヨンクと違い、軽量な点がプラスに働き、ソフトな河原でも車両が沈まず、良好なトラクションと乗り心地を実感した。
パフォーマンスはなかなか優秀。軽自動車のジムニーでも実用上十分。5速MTを選べば、なかなかスポーティだ。パワースペックは64㎰/6000rpm、9.8㎏m/3500rpmだが、高回転までストレスなく回るのは好印象。通常時の騒音レベルも、さほど気にならない。
1.5リッターエンジンを積むシエラは、101㎰/6000rpm、13.3㎏m/4000rpmのスペックだけに余裕がグッと高まる。絶対的な加速レベルはマイルドだが、4速ATでも周囲の流れに遅れをとることはない。このATは積極的に踏み込むと絶妙なタイミングでシフトダウンを行い、その気になればアップテンポな走りも楽しめる。新登場のノマドにはまだ試乗できていないが、車重がシエラ比で100㎏ほど増加していることを考えるとマイルド志向と予想できる。ロングホイールベース化に伴う乗り心地の向上と相まって、日常ユースで輝くキャラクターに違いない。
ジムニー/ジムニー シエラ/ジムニー ノマドに共通するのは「本格的な4WD性能」と「無駄のない機能美」を併せ持っていることです。
機能美という点を具体的に説明しますと、たとえばヘッドランプは障害物に当たっても割れにくいように車両の内側にレイアウトしています。ワイパーの付け根をフラットにしているのは、雪がたまりにくく、たまった場合には落としやすいようにという配慮した成果です。このように機能を徹底して追求したデザインが、エクステリアやインテリアの随所に施されていることが特徴です。
ジムニーの人気グレードは、上からXC/XL/XGの順で、ジムニー シエラはJC/JLとなっています。
人気のボディカラーは、ジムニーがミディアムグレー、シエラも一番人気はミディアムグレーです。ジムニー ノマドはブルーイッシュ・ブラックパールが最も人気になっていますが、このカラーはジムニーとジムニー シエラで2番目の人気です。なお、ジムニー ノマドの2番人気色はアークティック・ホワイトパールになっています。
今年1〜8月の販売台数は、ジムニーが約3万4000台、ジムニー シエラが約1万5000台、ジムニー ノマドが約9000台です。
※スズキ株式会社 広報部 東京広報課
グレード=シエラJC
価格=5MT/4AT 238万5900円
全長×全幅×全高=3550×1645×1730mm
ホイールベース2250=2250mm
トレッド=F1395/R1405mm
最低地上高=210mm
車重=1010(AT 1110)kg
エンジン(レギュラー仕様)=1460cc直4DOHC16V
最高出力=74kW(101ps)/6000rpm
最大トルク=130Nm(13.3kgm)/4000rpm
WLTCモード燃費=15.4/AT 14.2km/リッター(燃料タンク容量40リッター)
(WLTC市街地/郊外/高速道路=(13.9/AT 12.1/16.2/AT 15.0/15.6/AT 14.8km/リッター)
サスペンション=FR3リンクリジッドアクスル・コイルスプリング
ブレーキ=Fディスク/Rドラム
タイヤ&ホイール=195/80R15+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員= 4名
最小回転半径=4.9m
