
12Rは、レース活動で培った技術とノウハウを惜しみなく注ぎ込んだ200台限定車。最高出力は200㎰、市販ロードスターとして最強パフォーマンスモデル。グランツーリスモ7への実装に先立ち、実車に限りなく近い体験を提供するためにメーカーが走行性能、サウンド、デザインの各要素を徹底監修
マツダが送り出すロードスター史上最も本格的なファクトリーモデル、それがスピリットレーシング・ロードスター 12Rだ。先日、200台限定で発売されたこの特別仕様車は、スーパー耐久レースで培った技術を盛り込み、公道走行可能なマシンとして仕立てられている。
エンジンは専用カムやピストンを組み込んだ自然吸気2リッターの4気筒で、最高出力は200㎰。ビルシュタイン製車高調、ブレンボ4ポットキャリパー、RAYS製鍛造ホイールなどを装備し、「ショールームからそのままサーキットへ」を実現する完成度を誇る。
12Rの市販に先立って、8月26日にはPlayStation®5/PlayStation®4用ソフトウェア『グランツーリスモ7』でバーチャル試乗会が行われた。筑波サーキットでは、NR-Aロードスターの1分10秒前後に対し、12Rは1分6秒台をマーク。標準モデルを大きく上回る速さを披露した。

収録された12Rは実車同様にハイグリップタイヤと専用サスペンションを採用。これが安定感とコーナリングスピードに直結している。対してNR-Aは市販タイヤ相当。12Rの速さの背景にはエンジン出力だけでなく、足回りや制動力の強化が効いていることがわかる。
試乗で印象に残った点は、前輪の食いつきだ。フロント寄りの重量感はあるが、タイヤは驚くほど路面を捉え、荷重をかけすぎてもアンダーにならない。「グッ」と溜めてからすっと回頭に移る。この「溜めてから解き放つ」挙動が12Rの真骨頂だ。筑波では第1ヘアピンからダンロップにかけてその特徴が際立ち、NR-Aのようなヒラヒラとした動きはない。それでいて重さや鈍さは見せず、ロードスター本来の軽快さと鮮やかなスポーツ感は失われていない。
音も素晴らしかった。自然吸気らしい伸びやかさが際立ち、乾いた金属的な響きが高回転で澄んでいく。耳に刺さらず、むしろ“もっと回したい”と思わせる快活なサウンドだ。
今回の実装は、200台限定モデルを多くの人に体験してほしいというマツダの思いを込めたもの。熱意がそのまま走りに表れていた。
