
SUBARUフォレスター・プレミアム S:HEV EX/価格:7CVT 459万8000円。燃費性能に優れた快適な走りを提供するストロングハイブリッド(S:HEV)はリミテッドとX-BREAKの2グレード構成。価格は420万2000〜459万8000円。プレミアムは19インチアルミ/パワーテールゲート/ワイヤレス充電器などを標準装備した最上級グレード。EXは渋滞時ハンズオフが可能な先進安全装備アイサイトX標準
新型フォレスターには好印象を抱いている。これまでサーキットやオフロード、一般公道でドライブし、高い走りの質感と、優れた悪路走破性を確認しているからだ。今回はごく日常的な使い方で何日か試してみた。
フォレスターの月販台数は、2025年7月が3737台、8月は2632台。ともに登録車の21位だ。このクラスのSUVではハリアーに次いで2番目に売れている。販売好調の要因は、新たに加わった待望のストロングハイブリッド、S:HEV(2.5リッター+モーター)の功績だろう。もうひとつのパワーユニットDIT(1.8リッターターボ)と比較して40万円あまり高額ながらデビュー当初から注文が殺到。納期が長くなることからS:HEVを断念しDITを選んだ人も多いと聞く。今回のテスト車は、最上級グレードのプレミアムS:HEV EX。本体価格が約460万円のモデルに約50万円のオプションを加えた500万円超の車両だった。
プレミアムは19インチタイヤをはじめ、前席パワーシート、ナビ機能内蔵の11.6インチセンターディスプレイなど装備が充実している。ブラウン系でシックにコーディネートされたインテリアの質感もなかなかだ。旧型比で価格が上昇しているとはいえ車格はさらに上がったように感じられた。
運転席に座って直感するのは、周囲が開けていて死角が小さいこと。SUVらしく着座位置が高いこともあり全方位、見晴らしがいい。スバルがこだわるAピラーとドアミラーの間の視界確保も好印象。ここがどうなっているかで運転のしやすさはかなり変わる。
また、フロントウィンドウの角度が浅く、ルーフ前端が比較的前方まで伸びていることも美点だ。サンルーフのシェードを開けると前席の乗員も開放感を味わうことができる。鮮明な画像を映し出すデジタルミラーを確認するときも視線移動が小さくてすむ。
車体形状はスクエア。サイズのわりに車両感覚が掴みやすいのはフォレスターのよき伝統だ。新型はベルトラインが水平基調になり、リアクオーターウィンドウが大きくなった美点で、脇道から本線に合流する際などに運転席から対角の後方の確認がしやすい。加えて、後席乗員にとっても開放的な空間を実現した。
パフォーマンスも優秀である。S:HEVは、日常的に使う速度域や停車後の発進加速でリニアさと力強いレスポンスが味わえる。速度域が高くなるとハイブリッドの通例で旨味が薄れるのは否めないが、車両重量を感じさせない軽やかな走り味は実に心地いい。条件がそろうとEV走行となり、よほど注意していないといつエンジンが停止し、再始動したのかはわからない。制御はスムーズで緻密だ。
静粛性もハイレベル。風切り音や外界から侵入する音の低さはクラストップ級。入念に対策されている。ただし、エンジン音だけは完全に抑え込むのではなく、煩わしくないレベルで少し聞こえるように調律されていた。これはスバル車を選んだユーザーへの心配りだろう。適度なボクサーサウンドは、ドライブの名パートナー。水平対向ユニットの強みで振動がないのもいい。
少々気になったのがブレーキだ。それほど強く踏んでいないのに吸い込まれるような感じで強く減速するケースがあった。スムーズに止めるには繊細なコントロールが求められる。ペダルの剛性感ももう少しあったほうがいい。
フットブレーキの操作には違和感を感じたが、ACC作動時のブレーキ制御はとても丁寧だった。ブレーキの効き始めから違和感はなく、停止時にもカクンとならない。一般道でもACCを使いたくなったほどだ。
足回りの完成度も高い。S:HEVは快適性重視のセッティング。良好な乗り心地実現のため、リアのダンパーロッドを延長して横力を受けたときのフリクション荷重を低減している。しなやかさと上質さをの融合は巧み。たしかにスムーズだ。適度に締まっていながらもよく動き、個人的に好みの味付けだった。
印象的だったのは、路面の大きめの段差や突起を乗り越えたときのいなし具合。段差や突起に合わせて必要な分だけ足回りがじわっと追従する。しかも減衰がしっかり効いて素早くショックを収束。衝撃が乗員までは伝わらない。横揺れも小さい。
ハンドリングはいい意味でおだやかだった。リラックスして乗れるよう味付けしたとのことで、市街地も高速道路も乗りやすい。ステアリングは軽いながらもしっかりとしていて、操舵に対して正確に応答する。しかも戻し切るところまでリアもきれいについてくる。動きに一体感があって挙動が乱れにくいのは大きな美点。修正舵はほぼ不要だ。ロールや横Gも抑えられ、同乗者にとっても快適にドライブできる仕上がりになっている。
新型フォレスターは、乗りやすく快適で安心感も高い。SUVとして逞しいだけでなく、良質なパッセンジャーカーとしても最適に仕上げられている。長く人気を維持しそうだ。
総合評価:79点
Final Comment
ユーザーサイドに立ったクルマづくりを実感
快適性とユーティリティはクラス最高水準
「正統派SUV」をコンセプトに、SUVの中心で戦えるクルマを目指したというだけあって、完成度の高さが印象的だった。快適性や利便性に関する項目の点数は高く、走行性能においても、S:HEVの強みが出るテーマはかなりの高評価となった。実走燃費計測が20km/リッターを超えたのは立派だと思う。エアコンを大画面ディスプレイで細かく調整できるほか、よく使う機能については物理スイッチでダイレクトに操作できるのは特筆ポイント。ユーザー思いのスバルらしい。