【カーデザインを語ろう】ディーノ206&246GTは、工芸品の味わいとサーキットの興奮をブレンド。その美しさとMRの走りでマニアを魅了した

ディーノ246GT。1969年に登場した2.4リッターユニットを積む246は美しいスタイリングはそのままに前身の206比でホイールベースを60mm、全長は110mm拡大。ボディパネルをアルミからスチールに変更して生産性に配慮していた

ディーノ246GT。1969年に登場した2.4リッターユニットを積む246は美しいスタイリングはそのままに前身の206比でホイールベースを60mm、全長は110mm拡大。ボディパネルをアルミからスチールに変更して生産性に配慮していた

モータースポーツシーン直系のハンドリングマシン

 1960年代、モータースポーツシーンではMRレイアウトが主流になる。MRは理想的な前後重量配分により、自在なハンドリングと良好なトラクション性能を実現。それまでにない圧倒的な速さを披露する。フェラーリは1960年シーズンからF1をMR化、1961年にはF2マシンもMRとする。その後、250LMを筆頭にMRレーシングカーをスポーツカーレースに積極的に投入した。
 モータースポーツで大活躍するMRレイアウト車に「一般公道で乗りたい」という声が高まるのは必然だった。ディーノ206は、フェラーリ初のプロダクションMRモデルである。1965年のパリ・サロンでプロトタイプを発表、1967年に正式デビューした。そのスタイリングは、サーキットを席巻していた330P、そして206SPのイメージを継承。流麗なラインでエレガントさを主張する一方、鮮烈な走りのイメージを携えていた。

ディーノ206 & 246はフェラーリ初のMRプロダクションモデル。キャビン背後にV6DOHCを横置き搭載。排気量は206が2リッター(180hp)、246は2.4リッター(195hp)。ディーノはハンドリングの良さで好評を博す

ディーノ206 & 246はフェラーリ初のMRプロダクションモデル。キャビン背後にV6DOHCを横置き搭載。排気量は206が2リッター(180hp)、246は2.4リッター(195hp)。ディーノはハンドリングの良さで好評を博す

ディーノはサイドビューではクーペに見えるが、リアウィンドウが直立したトンネルバック・スタイルを採用。スタイリングはピニンファリーナ作。当時のレーシングカーのイメージを投影している

ディーノはサイドビューではクーペに見えるが、リアウィンドウが直立したトンネルバック・スタイルを採用。スタイリングはピニンファリーナ作。当時のレーシングカーのイメージを投影している

 ディーノ206は2リッター・V6DOHC(180hp)をキャビン背後に横置きに搭載。ボディパネルは総アルミ製で、カロッツェリア・スカリエッティで1台、1台と手作りされていた。ちなみにディーノ206は、フェラーリの作品ながら、正式には「フェラーリ」の名称はつかない。その理由には諸説あるが、ディーノの発表時、フィアットとの関係が深まり、エンジン生産をフィアットが担当したことが理由といわれている。当時エンツォ・フェラーリは「12気筒以外はフェラーリと呼ばない」と公言していた。
 ディーノ206は、その美しさと素晴らしいハンドリングが評価され高い人気を獲得した。その結果、生産の拡大が急務となった。対応策が1969年に登場したディーノ246だった。246は、パワーユニットを2.4リッター(195hp)に拡大。ボディもホイールベースを60mm、全長は110mm延長した。最大の違いはボディパネル、206のアルミから246は一般的なスチールに変更された。これは生産性向上が最大の理由。246はピニンファリーナの工場で金型によりプレスされ、スカリエッティで組み立てられ、フェラーリの工場ラインで最終的な完成形に姿を変えた。ちなみにスカリエッティは1970〜71年にフェラーリが吸収合併した。

真横

ディーノのキャビンは適度にタイトな純2シーター。本革シートはサポート性に優れたノンリクライニング式。5速MTは当時の伝統に従って金属製プレートで仕切られていた。ステアリングはマニュアル式

ディーノのキャビンは適度にタイトな純2シーター。本革シートはサポート性に優れたノンリクライニング式。5速MTは当時の伝統に従って金属製プレートで仕切られていた。ステアリングはマニュアル式

 ディーノは、その後V8シリーズに発展し、フェラーリの主軸に成長。現在の296GTがその直系モデルといえる。296GT系は初代ディーノと同様にV6ユニットを搭載。造形にもどことなくディーノの面影が宿っている。

ディーノ・シリーズはその後V8シリーズに発展。現在の主力モデル296シリーズが伝統を継承する。296はディーノと同様のV6モデル。クーペのGTBとオープンのGTSを設定。サーキット志向のスペチアーレも新登場

ディーノ・シリーズはその後V8シリーズに発展。現在の主力モデル296シリーズが伝統を継承する。296はディーノと同様のV6モデル。クーペのGTBとオープンのGTSを設定。サーキット志向のスペチアーレも新登場

 

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