フェラーリ365GTB/4 デイトナ。デイトナは「365GT/4」が正式名称。「デイトナ」の愛称は1967年のデイトナ24時間レースで330P4が1-2-3フィニッシュの完全勝利を納めた偉業に由来する。美しいボディは熟練の職人による手作り
フェラーリ365GTB/4デイトナは、モータースポーツシーンでも大活躍した250GTシリーズ(1955年登場)の系譜を継承したFRスポーツである。ロングノーズの下に4.4リッターのV12DOHC(352hp)を搭載し、圧倒的なパフォーマンスを誇った。
市販モデルのデビューは1968年のパリ・サロン。365GTB/4には2台のプロトタイプが存在した。1台は2灯式のヘッドランプで、リア回りが生産モデルとほぼ同様のモデル。もう1台は生産型に近いスタイリングながら、275GTB/4用の3.3リッター・V12ユニットを積むモデルだった。2台目は、フェラーリでレースに積極的に参戦していたアメリカのルイジ・キネッティの元に納車される。彼は、1967年のデイトナ24時間レースでフェラーリ330P4が1-2-3フィニッシュを決めたのに感激。キネッティは納車されたプロトタイプを「デイトナ」と呼んでいた。これがプロダクションモデルが「デイトナ」を愛称とする理由といわれる。
365GTB/4デイトナのスタイリングは、当時のフェラーリの他のモデルと同様にピニンファリーナが手がけている。張りのある面で仕上げられたスタイリングは、どこから見ても美しく破綻がない。ちなみにボディパネルはプレス成形ではなく、熟練の職人による手作り。パワーハンマーやイングリッシュホイールと呼ばれる板金加工装置で造形を作り出し、細部は当て金とハンマーによって丁寧に仕上げられた。
1960年代後半、アメリカや日本ではクレイモデルでデザインを検討。ボディパネルはプレス成形されていた。だが、イタリアン・カロッツェリアは、伝統の木型によるボディ作りを大切にしていた。イタリアンモデルらしい美意識が細部まで宿る365GTB/4の流麗なスタイリングは、古くからのデザイン&ボディ製作技法の賜物といってよかった。
デイトナは4390㏄のV12DOHCユニット(352hp)を搭載。ウェーバー製キャブレターを6連装したハイレスポンス仕様。5速MTミッションをデフと一体化したトランクアクスルとし理想的な前後重量配分を実現
365GTB/4の個性は、フロントライトの処理にある。初期型はノーズ先端を一体のプレキシガラスで覆った4灯式レイアウトを採用。オーセンティックな全体造形と、未来的な処理が独自の魅力を放った。ただしヘッドランプ処理はアメリカの安全基準の改定に伴い1970年モデルからリトラクタブル式に変更された。
フェラーリは356GTB/4を最後に、しばらくフラッグシップV12スポーツをFRレイアウトからMRに変更する。現在はまたV12搭載モデルはFRに回帰した。最新の12チリンドリのヘッドライトには、デイトナの面影が宿る。美しい造形は永遠なのである。