ランボルギーニ・カウンタックLP400。カウンタックは全体が一直線に連なる「ワンモーションフォルム」が印象的。写真は1974年に公開された市販版LP400。スタイリングはM・ガンディーニ作品。彼はランチア・ストラトスでも知られる
ランボルギーニ・カウンタック(本国ではクンタッチと呼ぶ)は、千葉匠氏が「このクルマがなかったら、スーパーカーブームはなかった」と語る鮮烈な存在。1971年のジュネーブショーにプロトタイプのLP500を発表。その後、熟成を重ね市販型LP400が1974年にデビューする。スタイリングを手がけたのは、カロッツェリア・ベルトーネに在籍していたマルチェロ・ガンディーニ。まさに鬼才による奇跡のデザインである。シャープで他に類例のない造形は、永遠の傑作と呼ぶにふさわしい。
カウンタックのスタイリングは必然によって生まれた。カウンタックを生み出したもう一人の重要人物はエンジニアのパオロ・スタンツァーニ。彼のアイデアがなければガンディーニの奇跡のデザインは生まれなかった。
1960年代末にジャンパオロ・ダラーラの跡を継いでランボルギーニ開発部門の陣頭指揮を取ることとなったスタンツァーニは、12気筒エンジンを横置きミッド配置したミウラに代わるフラッグシップモデルの開発に取り組んだ。彼はエンジン縦置きにこだわっていた。重心が低くなり、走行性能が圧倒的に向上するからだ。けれども通常の縦置きではミッションケース本体がリアアクスルから後方へ大きく張り出してしまう。V8ユニットならまだしもV12では全長的にもトランクスペース的にも成立は難しい。だがランボルギーニにとって12気筒は宝だった。そこでパワートレーンごと「ひっくり返す」という奇策を思いつく。キャビン側にトランスミッションを組み合わせることで巨大な12気筒エンジンを縦置きミッド配置とする発想である。この時点で既に将来の4WD化も見据えていたという。
カウンタックの造形は当時の開発部門のトップ、パオロ・スタンツァーニが考案した画期的なV12縦置きレイアウトを成立させるために誕生。LP400は4リッター(375hp)ユニット搭載。最高速300㎞/hを誇った
カウンタックはスーパースポーツの象徴的存在として君臨。1982年にはLP500S、1984年には5000クワトロバルボーレ(5.2リッター/455hp)に発展する。カウンタックは1990年まで生産された
カウンタックの室内にはミッションケースの出っ張りがあり、大きなエンジンはリアアクスルの前にきっちりと収まる。そしてF1マシンのようにサイドラジエター方式を採用。ガンディーニはスタンツァーニの奇策、LPレイアウト(イタリア語でエンジン縦置きミッドシップを意味するLongitudibale posterioreの略)をベースにオリジナルデザインを描く。乗員2名用の十分なキャビンスペースを確保したそのスタイルは当然、短くそして平べったい。カウンタックの象徴というべきシザーズドアもまた、「そうでなければ乗り降りできない」という必然から生まれた。
ランボルギーニはフラッグシップのレヴエルトはもちろん、V8を積むテメラリオも、いまなおカウンタックの鮮烈なイメージを踏襲している。レヴエルトもテメラリオもPHEVに進化したが、その「熱い思い」はかつてのカウンタック時代と同様なのだ。