【最新モデル試乗】究極の乗り味を実現したアルピナ・ラストモデル、D3 Sツーリング・オールラッドは理想の超快速ドライバーズワゴンである!

BMWアルピナ D3 Sツーリング・オールラッド/価格:8SAT 1410万円。D3 Sのパワーユニットは3ℓ直6DOHC24Vディーゼルターボ(355ps/730Nm)のマイルドHV。アルピナ独自の吸排気抵抗低減とエンジンマネジメント最適化でノーマル比15ps/30Nmパワーアップ。さらにスムーズフィールを実現。まさに絶品の味わい。巡航最高速度は270km/h、0→100km/h加速は4.8秒でクリア

BMWアルピナ D3 Sツーリング・オールラッド/価格:8SAT 1410万円。D3 Sのパワーユニットは3ℓ直6DOHC24Vディーゼルターボ(355ps/730Nm)のマイルドHV。アルピナ独自の吸排気抵抗低減とエンジンマネジメント最適化でノーマル比15ps/30Nmパワーアップ。さらにスムーズフィールを実現。まさに絶品の味わい。巡航最高速度は270km/h、0→100km/h加速は4.8秒でクリア

D3 Sは長距離派に最適な世界最上モデル

 アルピナのラストイヤーが残り少なくなってきた。ラストイヤーといっても創業家が手を引くだけでブランドはBMW傘下で存続するのだから正確ではないが、会社もコンセプトも変わるのだからそう感じてしまう。とくにここ30年このブランドを追いかけて来た身からするとまさにラストイヤーだ。

 なので、今年リリースされたB3 GTとB4 GTの試乗を済ませ郷愁の念に浸っていたが、輸入元であるニコル・レーシング・ジャパン合同会社から、新たな試乗のチャンスをいただいた。それがこのD3 Sツーリング。かなり魅力的なモデルである。

リア

 日本導入からは少し時間が経っているが、このモデルには近年のアルピナの要素がふんだんに詰まっている。まずは彼らの得意とする3シリーズボディであること、それとディーゼルエンジンを搭載すること、さらにいえば、モーターを積んだマイルドハイブリッドだという点だ。もちろんあのアルピナマジックともいえる乗り心地とハンドリングもそこに含まれる。

すべてにアルピナマジックを実感。エンジンもステアリングの正確性も抜群

 E36時代からアルピナをテストドライブしているが、やはりこのブランドの得意とするのは3シリーズボディだと思う。彼らが理想とするハンドリングと身のこなしはこのサイズでこそ具現化されている気がする。5シリーズベースのB5やD5といったラインアップも魅力的だが、それは少し路線が異なる。運動性能とラグジュアリーの融合といった感が強い。

 D3 Sツーリングのパワーソースは3ℓ直6ディーゼルツインターボ+マイルドハイブリッドという設定。アルピナがディーゼルエンジンを手がけると、こんなにスポーティになるのかと驚かされる。鋭く吹き上がるさまは明らかにこれまでのディーゼルの印象とは別。回転ゲージのマックスが6000rpmになっているが、イメージでは8000rpmくらいまで吹き上がりそうだ。このあたりは電動化以前からその味を体験しているが、これもまたアルピナマジックと呼べる仕上がりだ。

走り

インパネ

 今回はそこにさらにモーターがアシストされたのだから申し分ない。48Vのバッテリーとベルト駆動のスタータージェネレーターからなるこのシステムはディーゼルのネガティブポイントである瞬発力をしっかりサポートする。スタートからそうで、アクセルはクイックレスポンスではないのに、それ以上に鋭い加速を見せる。

 さらにいえば、ディーゼルの短所である停車時の振動や騒動はアイドリングストップとモーターでカバーできる。停車時はエンジンを止め、そこからモーターで動き出すのだから問題なし。ディーゼルにとってアイドリングストップ&モーターとの相性はバッチリなのだ。

 スペックは最高出力が355ps、最大トルクは730Nmとなる。とくにトルクの数値はこのサイズからは想像できないほど大きい。アルピナはこの太いトルクを最大限に活用して、クルマの絶対的なスピードを約束しながらジェントルな走りを提供してくれる。0→100km/h加速は4.8秒、巡航最高速度は270km/hを叩き出す。

エンジン

タイヤ

 そんなパワーソースの底力に感動だが、ステアリングの正確性にも驚きを隠せない。コーナーでは「このラインのまま出口のあそこを通過したい」というイメージをそのまま実行してくれる。だいたいあのあたりではなく、ほぼ1cmない程度の誤差で、思ったラインを描けるといった離れ技だ。これには足回りはもちろんステアリング剛性の高さがうかがわれる。この走りがドライバーの期待に応え、上質感という言葉で伝わっている気がする。

 乗り心地に関してはリアにバルクヘッドを持たないツーリングという点がかえってよかった気がしなくもない。ボディ剛性の高いリムジンよりも路面からの入力をうまい具合に逃がしているようだ。ある程度逃げ道がないと、振動はそのままドライバーに伝わってしまう。

シート01

シート02

 ただ試乗車はアルピナクラシック鍛造ホイール付きの20インチタイヤを履いていた。これは微妙な気がする。標準の19インチ鋳造ホイールよりもバネ下が軽くなるというが、まだまだ乗り心地はよくなる気がする。ここ数年はスポーツ色が濃くなり少し硬めにセッティングされるアルピナだが、インチダウンすることでそれ以前のあの上質な乗り心地が手に入れられたら幸せだろう。

 トランスミッションはZF社と共同開発した8速ATを搭載。駆動方式はトルクを可変配分する4WDシステムを採用し、リアに電子制御式のLSDを標準装備することで、高速域でのコーナリングを楽しくする。それにしてもこの安定した挙動はいったいどうやって実現するのだろう。

 新車で買えるアルピナが少なくなったいま、こうしたモデルは希少であることは間違いない。なんといっても、いま市場で出回っている車両以外、今後手にすることはできない。D3 Sツーリングの価格は1410万円だが、「いつかはアルピナに乗ってみたい」と思っている紳士淑女の方はご一考するべき1台である。シリアルナンバーが刻まれたセンターコンソールのプレートが希少性を物語っている。

九島さん

エンブレム

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