KYOJO CUPに挑んだ現役高校生「佐藤こころ」選手にインタビュー!

現役女子高生がKYOJO CUPに参戦。デビューレース密着レポート

 5月11日(土)と5月12(日)、静岡県の富士スピードウェイで「インタープロトシリーズ POWERED BY KeePer& KYOJO CUP Round 1」が開催され、この女性ドライバー日本一の座をかけたレース「KYOJO CUP」で、佐藤こころ選手が自身初の4輪車レースの初陣を飾った。さらに彼女は参戦ドライバーの中で最年少だ。

今回は初レースの振り返りに加え、佐藤選手について、今後の目標について伺った話をお届けする。

佐藤こころ選手

▲佐藤こころ選手

 佐藤こころ選手は、現在16歳の高校生レーシングドライバーだ。

 4歳(2012年)からカートに乗り始め、翌2013年にはSL宝塚シリーズ、キッズフレッシュマンクラスで優勝。その後もランキング上位に名を連ね、2020年にはJAF ジュニアカート選手権FP-Jrクラス2連勝を飾り選手権史上初の女性優勝者に選抜。昨年2023年は、JAF 全日本カート選手権FS-125クラス ランキング5位を獲得している。

 JAF公認カートでの成績が認められ、16歳でありながら四輪車のJAF公認国内競技に参加できる限定Aライセンスを取得した経歴を持つ。

 そして、2024年はゼッケン76号車「ELEVレーシングドリーム OS スハラ VITA」よりKYOJO CUPに参戦中だ。

■佐藤こころ選手 コメント
「4歳のときからカートに乗っています。5歳のときに、初めて出たレースで優勝することができ、レースの楽しさを知りました。そこからたくさん練習をしてレースにでるようになりました!レースを通じて自分より格上相手に挑めることに魅力を感じています。一般車の方は、そんなに詳しくないのですが、免許をとったらたくさん人が乗ることができるクルマで家族や友人をのせて運転してみたいです!速いクルマは、サーキット内だけで十分です(笑)」

佐藤こころさん

▲「5才の時に、初めて出たレースで優勝することができ、レースの楽しさを知りました。そこから沢山練習してレースにでるようになりました!」

76号車「ELEVレーシングドリーム OS スハラ VITA」のステアリングを握る佐藤こころ選手

▲76号車「ELEVレーシングドリーム OS スハラ VITA」のステアリングを握る佐藤こころ選手

 KYOJO CUPではVITA-01が参戦車両として使用される。マシンはイコールコンディションのワンメイクレースとし、一人の一人のドライビングテクニックが試される。

 VITA-01は、より安価にモータースポーツを楽しみたいというドライバーを対象にしたVITA CLUB製レーシングカーで、2代目ヴィッツのパワートレインをミドシップに搭載(MR)、出力は約110馬力と控えめだが、車両重量は約600kgと超軽量でドライバビリティに優れるマシンだ。シフト操作は古典的なHパターンの5速マニュアルで、普通車のマニュアル車と同じく3ペダルで操作する。

 自動車免許をまだ持っていない16歳の佐藤選手は、クラッチ操作やシフト操作は最初シミュレータで学んだという。

■佐藤こころ選手 コメント
「カートは小さい時から乗っていたので、何も考えずに体に染み付いた動きだけで走ることが出来るのですが、VITAはギアチェンジ、荷重移動、ペダルワークと他にも色々考えて走らないと速く走れないので、毎秒毎秒考えながら走るようになりました。今苦戦している所は、フルブレーキが必要なコーナーでのブレーキの強さです。どこまでがロックせずブレーキを踏めるのかが、すごく難しいです。」

佐藤こころさん

「今苦戦している所は、フルブレーキが必要なコーナーでのブレーキの強さです。どこまでがロックせずブレーキを踏めるのかが、すごく難しいです」

■#76 ELEVレーシングドリーム OS スハラ VITA チーム代表 前田大道氏 コメント
「VITAはハコとフォーミュラの中間といった乗り味で、フォーミュラの軽快かつリアタイヤを使って曲げる動きや操作レスポンスのよさを持ちながら、ハコに近いサスペンションの動きで唐突な挙動乱れや機敏さを暖和します。そして、パワーとグリップのバランスがとくによく若干グリップが高めなので攻め込みやすく、ドライビングスキルも上げやすい仕様です。また、国内で開催されているレースカテゴリーは多々ありますが、VITA-01は総合的に考えると非常にリーズナブルです。消耗品の消耗度合いの低さやパーツ点数の少なさや価格の安さ。整備性もよく注意個所を把握すれば維持管理は容易です。そしてなんといってもクラッシュ破損した際の修理費用がハコと比べると安い。費用面の内容ばかりですが、走っていくうえでとても大切なことです。」

KYOJO CUP 第1戦 参戦ドライバー

▲2024シーズン、KYOJO CUP 第1戦 参戦ドライバー

 KYOJO CUPは、オーガナイザーにレーシングドライバー関谷正徳氏を迎え「スポーツとして観るレースを確立していきたい」という思いのもと、女性ドライバー限定のプロレースシリーズとして2017年に誕生し、今年で8シーズン目を迎えた。

 富士スピードウェイで開催のFCR-VITAとKYOJO CUPは年々エントリー台数が増加しており、5月11日のFCR-VITA開幕戦は42台、5月12日のKYOJO CUP開幕戦には28台ものマシンがエントリー。レースのレベルも非常に高くVITA-01の富士スピードウェイのコースレコード記録も毎戦更新されていくなど、現在ヒートアップ中のカテゴリーだ。

KYOJO CUP Rd.1

▲KYOJO CUP開幕戦には28台ものマシンがエントリー。熱いバトルを繰り広げた

 5月12日、朝8:00、路面温度18.8度のドライコンディション中20分間の予選が開始した。佐藤選手は、自己ベストに迫る走りを見せるものの、ストレートスピードに悩まされ、予選19番手でセッションを終えた。

■佐藤こころ選手 コメント
「このデビューレースの目標は、レース経験を積むことと、完走が目的だったので、あまり結果は求めていなかったのですが、トップ集団との差が大きかったので、わかりきっていたことだけどショックでした」

ELEVレーシングドリーム OS スハラ VITA

▲予選は、自己ベストに迫る走りを見せたが、ストレートスピードに伸び悩み予選19番手スタート

 同日10:45、薄曇りの中KYOJO CUP Rd.1、12週による決勝レースが開始した。

 レッドシグナルが点灯しスタンディングスタートにて開始。総勢28台のマシンのエンジン音が一斉にとどろいた。佐藤選手は慣れないスタートに失敗してしまい、1コーナーまでに順位を落としてしまうものの、TGRコーナー(1コーナー)で、前方の1台がスピン。

 各車がスピンした車両をうまく避け混乱は最小限だったものの、佐藤選手は、コース外から復帰してきた車両と軽く接触し、左フロントカウルにダメージを負ってしまう。しかし運よくメカニカルなダメージはなくそのまま走行を継続した。

■佐藤こころ選手 コメント
「スタートで順位を下げてしまったのは、クラッチを離すまでのアイドリングを上げすぎてホイルスピンしたのが原因です。スタート失敗して19番手から24番手に落ちたときはかなり焦りましたが、自分の経験上、焦っていてもいいことがなかったので、気持ちを切り替えて冷静に1台ずつ抜いていくことに徹底していました。」

1コーナーの混乱でフロントカウルにダメージを負ったものの、幸いなことにメカニカルダメージはなかった

1コーナーの混乱で左フロントカウルにダメージを負ったものの、幸いなことにメカニカルダメージはなかった

 一時順位を24番手まで落とすものの、その後ペースを上げていき、毎周オーバーテイクを決めて順位を戻していく。

 決勝レース、富士スピードウェイの長いホームストレートには追い風が吹いており、各車のストレートスピードは伸びていた。

 ストレートスピードが伸び悩んでいた76号車にも追い風が有利に作用した。最高速が伸びたことで、スリップストリームが味方し順位の挽回を助けた。4周目には19位まで順位を戻した。

走行写真

「スタート失敗して19番手から24番手に落ちた時はかなり焦りましたが、自分の経験上焦っていてもいいことがなかったので、気持ちを切り替えて冷静に1台づつ抜いていくことに徹底していました」

 さらに、5周目には18位にポジションアップ。この時点で17位には5秒のギャップがあったが、その後も安定したラップタイムを記録し、8周目には前走車と1.3秒差までつめ、9周目には17位に上がり、そのままチェッカーフラッグを受けた。

走行写真

▲「今回のレースで、自分とトップとの明確な実力差が分かりました」

■佐藤こころ選手 コメント
「今回のレースで、自分とトップとの明確な実力差がわかったので、気持ちを切り替え、次戦に向けての練習を頑張って行きます。決勝レース17番手でフィニッシュという結果でしたが、デビューレースの自己採点は、90点です。90点の理由は完走できたことと、いま自分が持ってる力を出し切れたと思ったからです。次戦に向けて速い選手の走りを分析して走りに活かしていきます。」

レース後のKYOJO トークショーより

▲レース後のKYOJO トークショーより

■佐藤こころ選手 コメント
「また、今回KYOJO CUPに参戦して、速さやバトル力も大事なのですが''プロ意識''がすごく重要なことを学びました。どれだけ悔しくてもそれを態度や表情に出さない、レース後のインタビューの完璧な受け答えに、すごく感動しました! 将来は、速さとプロ意識を兼ね備えたレースドライバーになりたいです! 目標にしているフォーミュラカーは、SUPER FORMULAです!まだまだ未熟な私ですが、地道に努力していきますので、成長を見守ってもらえれば幸いです。応援よろしくお願いします!」

■#76 ELEVレーシングドリーム OS スハラ VITA チーム代表 前田大道氏 コメント
「チームとしても初参戦となるFCR-VITAそしてKYOJO。四輪初のデビューレースで正直不安と緊張が9割以上の過酷なコンディションでしたが、その状況を跳ね飛ばす走りとレースへの集中力は素晴らしいのひと言です。まだ16歳の女子高校生とは思えないほど立派なレーサーでした。まだ経験を得て学ばなければいけないことは山ほどありますが、佐藤こころさんの類まれないドライビングセンスと本番にも怯まないメンタリティがあれば必ずトップ集団と競うことができると感じました。これからの彼女の活躍に期待で胸が熱くなります」

■佐藤こころさん プロフィール
佐藤こころ(さとう・こころ) 、2008年3月4日生まれ、A型、16歳。兵庫県出身。4歳からレースを開始し、2023年には全日本カートのFS125で年間ランキング5位を獲得。限定Aライセンスを取得し16歳でKYOJO CUPに参戦を決めた。

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