モータースポーツ新時代の幕開け!? 大人たちがいま本気で動き出している

 ジャパンモビリティショー2025(以下、JMS)の会期中の11月1日、日本自動車会議所モータースポーツ委員会の公開会議が行われた。同委員会は、国内の4輪・2輪のレース主催団体、さらに日本自動車連盟(以下、JAF)も所属する。今年7月に発足されたばかりの組織だが、当日はそうそうたる顔ぶれが揃った。

公開会議の翌週に行われたラリージャパンに出場したエルフィン・エバンス選手、サミ・パヤリ選手がサプライズ登場。会場脇にいた2人をモリゾウこと豊田章男会長が招き入れたかたちだ

国内4輪モータースポーツの統括団体JAFの坂口正芳会長、スーパーGTのGTアソシエイション(以下GTA)の坂東正明代表、スーパーフォーミュラの日本レースプロモーション(JRP)の近藤真彦会長、スーパー耐久未来機構(STMO)の桑山晴美副理事長、国内の2輪レースを統括する日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)の鈴木哲夫会長、そして同委員会の加地雅哉委員長(TOYOTA GAZOO Racingグローバル・モータースポーツ・ディレクター)だ。

議題にあげられた4つの表現は平易であったが実際に行われた議論は具体的なものだった。本会議は、登壇者に課題の共通認識化と今後の協調、そして具体アクションを促す重要な場だったのだろう。右の観客動員数グラフをみると、コロナ禍以降の“盛り上がり”はあるが、10年前よりも全体的な観客数は落としているのがわかる

 日本自動車会議所は終戦直後の1946年、わが国の自動車産業と社会の復興を目的として設立された業界団体。JMSを開催している日本自動車工業会も所属する総合団体で、業界横断的な組織として政府に対して政策提言や税制の見直しなどを主な取り組みとしている。今年6月に会議所の会長に就任したのがモリゾウこと豊田章男氏(トヨタ自動車会長)ということで、「クルマをニッポンの文化に」と同氏が掲げたスローガンのもと、今年7月にモータースポーツ委員会が発足されたのは必然だった。

 会議では、冒頭で加地委員長は「モータースポーツをニッポンの文化に」という大テーマを掲げられ、業界の喫緊課題について具体的な議論が交わされた。競技役員(オフィシャル)の人材不足と高齢化により次世代育成と継承が急務であることや、DX推進に不可欠なサーキット設備のデジタルインフラ改善の必要性などが議論された。また、主要カテゴリのレース開催日程の調整についても、2輪4輪合わせて横断的協力体制の構築が必要だとの指摘もあり、酷暑となる8月開催の是非や冬季開催拡充などの具体案も挙げられた。そして、肝心のサーキット来場者数の伸び悩みについては、アクセスの不便さや天候影響などの不可避要因はもとより、レース関係者外からの資金増加による「産業化」の必要性にまで話は及んだ。

 この会議がたくさんの人が集まるJMS会場にて公開形式で行われたことは、まずその存在意義を多くの人に知らしめたいという意図が伝わってくる。そして、この内容をどれだけ多くの一般の方々、というよりも、数多の自動車関係者に広く認知してもらい、今後への期待感醸成や、それに対する本気度を伝えたかったのだろう。

プロドライバーも参戦できるプロシリーズとアマチュアドライバーのみのクラブマンシリーズで開催されるGR86/BRZ Cup。プロシリーズは並大抵の覚悟ではトップをとれない競争激しいカテゴリーだ

 JMSでは他にもモータースポーツに関するセッションがあった。CUP Car Racers Talkとして、日本のグラスルーツ・モータースポーツにおけるナンバー付き車両によるワンメイクレース(トヨタ・ヤリス&トヨタGR86/スバルBRZ、ホンダN-ONE、マツダ・ロードスター)の代表者とモータージャーナリスト清水和夫氏による座談会で、各カテゴリーにおける現状や魅力、そして課題について紹介された。

2002年に始まったマツダ・ロードスター“NR-A”のワンメイクレースは歴史あるジェントルマンレースとして発展。接触するとノーポイントという独自ルールがあり、参加者同士の雰囲気も和やかなのが特徴だ

 ここでも横連携として、シリーズ間の情報交換の重要性や、新規参入障壁を下げるための取り組み、そしてeスポーツがもたらす次世代ドライバーの可能性などの議論があった。上位カテゴリの横連携が進む一方、グラスルーツカテゴリーでもこのような動きはポジティブな流れを感じる。

11月の最終戦でKYOJO CUP2025シーズンの順位が最終決定。上位3名の顔ぶれは昨年と同様ながら、その内容についてはまったく違ったともいえる。来シーズンは新たな挑戦者にも期待したい

 もうひとつ、紹介しておきたいのが、本誌が何度も紹介している女性だけのレースカテゴリー、競争女子という名前に由来するKYOJO CUPである。2025年シーズンは各マシンのイコールコンディションを徹底のために、主催者管理のフォーミュラカーを導入した。当初は危険性を叫ぶ声もあったが、蓋を開けば大きなトラブルもなく、昨シーズンとはまた違った白熱のバトルの数々が生まれる結果となった。シリーズチャンピオンシップこそ下野璃央選手(86号車)の圧倒的な強さが目立ったものの、昨年は下位に沈んでいた若い選手たちの成長と台頭も目立った。地上波TV番組も開始され、来場者も着実に伸びている。アスリートたちによるモータースポーツの存在意義を世の中に伝える、オーガナイザーであり世界に誇るレジェンドドライバー関谷正徳氏の理想にまた一歩近づいたシーズンだった。

シリーズオーガナイザーの関谷正徳さん(左)と前列はシリーズ総合1〜3位の選手。左から翁長実希選手/下野璃央選手/斉藤愛未選手(総合3位)

 いま、このモータースポーツ界隈で、大人たちが本気で動き出している。そして、新たな時代の幕開けがもうすぐやってくる。

写真/山本善隆(本誌)+日本自動車工業会+KYOJO CUP+B-Sports+Hondaワンメイクレース事務局

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