ヤマハ発動機がジャパンモビリティショー2025における出展概要を発表。「感じて動きだす」をテーマに掲げて、“ヒトとマシンの新たな関係。その未来”を探る概念検証を目的とした“MOTOROiD”プロジェクトの最新モデル「MOTOROiD:Λ」や、3輪パッケージのフルオープンEV「TRICERA proto」といった世界初披露のワールドプレミア6機種のほか、研究開発中のプロトモデル、電動モーターサイクルシリーズ、eBike(電動アシスト自転車)や電動車椅子のコンセプトモデルなど計16モデルを出展。音・音楽を中心にした事業を展開するヤマハのイマーシブオーディオソリューションや楽器も特別展示
ヤマハ発動機は2025年10月8日、本年10月29日から11月9日にかけて開催されるジャパンモビリティショー2025の出展概要を発表。合わせて、ヤマハ発動機のジャパンモビリティショー2025に関する様々な情報を発信していくスペシャルサイトを開設した。
今回のショーでは、「感じて動きだす」をテーマに据えて、ワールドプレミア6機種を含む研究開発中のプロトモデル、電動モーターサイクルシリーズ、eBike(電動アシスト自転車)や電動車椅子のコンセプトモデルなど計16モデルを出展。また、音・音楽を中心にした事業を展開するヤマハ株式会社のイマーシブオーディオソリューションや楽器なども特別展示すると予告した。
まず、“ヒトとマシンの新たな関係。その未来”を探る概念検証を目的とした“MOTOROiD”プロジェクトの最新モデル「MOTOROiD:Λ(モトロイド ラムダ)」を世界初公開する。ヤマハ発動機は“MOTOROiD”プロジェクトとして、2017年には自立してライダーに歩み寄る実験機「MOTOROiD」を、2023年にはヒトとマシンが呼応し合う「MOTOROiD2」を発表してきた。今回出展する「MOTOROiD:Λ」は、AI技術によって学習し、自ら成長する発展型の電動モビリティに位置する。AI技術である強化学習を用いて仮想環境で学習し、Sim2Real技術により現実世界での動作を実現。モビリティが独立した思考を持つことで、ヒトと共に成長し合える新たな関係性への一歩を踏み出す。主な特徴としては、学習によって生成される最適かつ有機的な動作や、失敗における衝撃を想定した耐久性と軽量化重視の外骨格デザインなどを採用。「モビリティ×強化学習による運動制御」という未開拓の領域に踏み込んで二輪の世界を刷新し、まったく新しい未来を創る実験機に仕立てている。
次に、新たなドライビングプレジャーを提案する、3輪パッケージのフルオープンEV「TRICERA proto(トライセラ プロト)」がワールドプレミアを果たす。TRICERA protoは感性に訴える刺激的な旋回性能と、新感覚の操縦感を併せ持ち、意のままに操るための習熟プロセスさえ楽しい3輪手動操舵(3WS)の実走コンセプトモデルとして開発。前後輪操舵可能な車両の特徴である旋回応答性の高さと旋回時のドライバー感覚とのつながりに着目し、人間研究視点で最もFUNを感じる旋回制御とすることで、異次元の人機一体感を実現する。また、走行音をチューニング&調律するサウンドデバイス「αlive AD」を搭載し、操縦に没入するドライバーの高揚感を増幅。3輪構造を際立たせたセンターフレームによるアーチ型シルエットに加え、人間空間と機能空間の対置表現により独創的なデザインを創出したことも、同車の訴求点である。
3台目のワールドプレミアモデルは、「大型バッテリーEVならではのFUN」を体現する実走プロトモデルの「PROTO BEV(プロト バッテリー イーブイ)」。FUNの最大化を目的に軽量化とコンパクト化を追求し、新感覚の乗り味と扱いやすさを兼ね備えたスーパースポーツEVで、従来の内燃機関モデルで培った優れた操縦安定性に、バッテリーEVの魅力であるリニアなスロットルレスポンスと力強くスムーズな加速性能を融合する。また、ライダーの手元に集約したシンプルな操作系と、車両の状態をライダーに伝えるメータービジュアライザーやサウンドなど、スポーツ走行に集中できる各種のHMI(ヒューマン―マシン・インターフェイス)を実装した。
4台目のワールドプレミアモデルは、カーボンニュートラルの実現に向けた多様な選択肢の1つである水素エンジンを搭載した「H2 Buddy Porter Concept(エイチツー バディ ポーター コンセプト)」。H2 Buddy Porter Conceptはトヨタ自動車と共同開発中のコンセプトモデルで、二輪車への搭載に適した小型の高圧水素タンク(認可取得済)をトヨタ自動車が新規に開発し、ヤマハ発動機は主に水素エンジンや車体等の開発を担う。水素満タン時の航続距離は実測で100km以上を実現。また、既存法規を参考に公道走行に関わる技術要件を織り込み、NOxを含むEuro5排ガス規制にも対応している。
5台目と6台目のワールドプレミアモデルは、自分らしさを自由に表現できる、新しいスタイルのeBike(電動アシスト自転車)コンセプトモデルの「Y-00B:Base(ワイ ゼロゼロビー ベース)」と「Y-00B: Bricolage(ワイ ゼロゼロビー ブリコラージュ)。スリムでミニマルなデュアルツインフレームに小型で一体感のあるバッテリーとドライブユニットを搭載し、高い拡張性とカスタマイズ性を 備えてオーナーのライフスタイルや感性に寄り添いながら、共に成長する“愛車”を提案する。また、付属のUSB-PDコンバーターにより外出先でも手軽に充電が可能で、スリムなバッテリーながら行動範囲を自由に広げる。「Y-00B:Bricolage」はY-00B:Baseのカスタマイズモデルで、ヤマハ発動機創立70周年を記念し、同ブランドの第1号製品「YA-1」(1955年)へのオマージュとして、クラシックな美意識と現代のテクノロジーを融合した、唯一無二のスタイルを体現している。
技術展示として、自動車メーカーへの供給を目的とした、現在開発中の自動車用電動駆動ユニット「e-Axle(イー アクスル)」も披露する。e-Axleはモーター、インバーター、ギアボックスの3in1構造で、高出力・軽量・コンパクトを実現したことがトピック。350V~800Vの入力電圧に対応し、出力は200kW~450kWを発揮する。さまざまなタイプの自動車に適用可能であることも訴求点だ。
ハイブリッドバイクの2台の出展も要注目だ。1台は「静」と「動」、異なる2つの動力性能を自在に操る悦びを提供するシリーズ・パラレル・ハイブリッド(SPHEV)モデルの「PROTO HEV(プロト ハイブリッド イーブイ)」。電動モーターと内燃機関を効率的なパッケージング技術で統合して多彩な走行モードを実現し、都市部では静かで落ち着いた走行を、また郊外では力強く信頼感の高い走りを提供する。独自のパワー&エネルギーマネジメント技術によって同車格比で燃費を35%以上向上させ、“Fun to Ride”と優れた環境性能を両立したこともアピールポイントである。
もう1台は、内燃機関の魅力と電動技術を融合させて大型モーターサイクルの楽しみ方の拡張を目指す研究・開発モデルの「PROTO PHEV(プロト プラグインハイブリッド イーブイ)」。エンジンとモーターの駆動を切り替えることで、走行シーンに応じてEV走行やハイブリッド走行を可能とする。従来の魅力であるスポーティな走りと高い環境性能を兼ね備え、内燃機関の可能性を未来につなげる提案モデルだ。
電動車椅子の2シリーズのコンセプトモデルも見逃せない。1つは日進医療器とコラボレーションして開発した、電動アシストユニット「JWX-2」を搭載する3輪電動車椅子のコンセプトモデル「NACTUS VS TRE-X(ナクタス ブイエス トレックス)」。存在感あふれる26インチのマウンテンバイク用オフロードタイヤが生み出す高い走行性と3輪ならではの安定性により、これまでの車椅子では移動しにくかった不整地でも快適な移動をサポートする。剛性と美しさを備えた直線的なセンターフレームに加え、フロントキャリア、防水バッテリーケース、大型ステップボードなど、実用性を高める装備も充実させた。
もう1つは松永製作所とコラボレーションして製作した、車椅子電動化ユニット「JWG-1」を装着した“旅する車椅子”の「ONE-MAX Urban(ワンマックス アーバン)」と「ONE-MAX Historical(ワンマックス ヒストリカル)」だ。アタッチメント機構の採用により、旅先に応じて外観や機能のカスタマイズが可能。都会の身軽な旅にフィットするONE-MAX Urbanは、コンパクトな車体に疲労感を軽減するラティス構造のシートを採用し、合わせて小物を簡単に収納できるボックスやスマートフォンを取り付けられるアクセサリーバーを装備する。一方でONE-MAX Historicalは、こだわりの旅行鞄を連想させる高級感のある外観が特徴。寺社仏閣や歴史的な街並みの石畳等でも安定した走行が可能な車体に、クラフトマンシップを感じるレザー調のシートなどを配備している。
2輪車ではほかにも、ライダーをサポートする充実した走行アシスト機能を装備した市販車の「TRACER9 GT+Y-AMT(トレーサーナイン ジーティープラス ワイエーエムティ)」や、レトロモダンなスタイリングの原付二種スクーターで市販予定車の「Fazzio(ファツィオ)」、鈴鹿8耐仕様のレースマシン「YZF-R1」、従来のTY-E 2.2から一新してさらなる軽量化と2速からなるギアを初採用したトライアル車の「TY-E 3.0」を披露する予定である。
ヤマハの協力を得た出展物としては、4アイテムを披露する。1つ目は、イマーシブオーディオソリューションの「Sound xR(サウンド エックスアール)」。Sound xRは実空間とバーチャル空間の両方において、臨場感・没入感のある音環境を創り出すことができるイマーシブオーディオソリューション。その中で、実空間向けのソリューションとして、空間の音の響きを最適化する音場支援システム「AFC Enhance」、音の定位を自在にコントロールする音像制御システム「AFC Image」があり、劇場、オペラ、コンサートなど多種多様なアプリケーションにおいて、複雑な音響演出の要求に応え、イマーシブな音響体験を実現する。今回のショーでは「AFC Enhance」と「AFC Image」両方をヤマハブース全体に用いて、周囲とは異なる音空間を創り出す計画だ。
2つ目は、フィンガードラムパッドの「FGDP-30/FGDP-50(エフジーディーピー30/50)」。指を使って手軽にドラム演奏(フィンガードラム)が楽しめる製品で、軽量コンパクトなボディにスピーカーや音源、充電式バッテリーを搭載し、時間や場所を選ばずに演奏を楽しむことを可能とする。ヤマハの電子ドラムのサウンドをフィンガードラムの演奏に最適化して搭載したほか、新たにデザインしたエレクトロニックサウンドも多数組み込んだ。今回のブースでは、タッチ&トライとして実機を演奏することができる。
3つ目は、ハイブリッドピアノの「AvantGrand N3X(アバングランド エヌスリーエックス)」。AvantGrandはグランドピアノに限りなく近い演奏感と現代のライフスタイルに寄り添った利便性を併せ持つハイブリッドピアノで、N3Xは同シリーズのフラッグシップモデルに位置する。グランドピアノそのままのタッチ感を実現する専用グランドピアノアクション搭載により、本格的な弾き心地を実現するほか、ヤマハのフルコンサートグランドピアノ「CFX」や、繊細で温かみのあるウィンナートーンで知られているベーゼンドルファーのフラッグシップモデル「インペリアル」から収録した音を配備。世界的に評価の高い2つのピアノの音での演奏が存分に楽しめる。
4つ目は、電子ドラムの「DTX10K-X(ディーティーエックス 10 ケイ エックス)」。DTX10シリーズは、電子ドラムの最高峰の機能性とアコースティックドラムの美しさを兼ね備えたフラッグシップモデルに位置。ドラマーが求める理想のアコースティックサウンドと演奏感、デザイン、そして電子楽器ならではの利便性とその操作性を徹底的に追求し、自宅での練習はもちろんのこと、レコーディングやライブ演奏にも活用できる逸品である。
なお、ブースではヤマハの協力により、ボーカロイドの初音ミクがヤマハブースのエバンジェリスト(伝道者)を務めるほか、電子楽器等の展示・演奏に加え、同社の立体音響技術を活かしたダイナミックなステージ演出等を実施するとアナウンスしている。