水彩画を中心に、クルマや乗り物をテーマにした作品を発表するイラストレーター、コサカダイキさん。作品を拝見したとき、『散歩、日傘をさす女性』や『睡蓮』のシリーズで知られる“光の画家”クロード・モネ(1840〜1926年、フランスの印象派の画家)を思い出しました。今回はご自身の愛車にまつわるエピソードと作品です。
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今回の2作品は約3日間で仕上げました。制作中に時間をあけてしまうと絵に迷いが出てしまうので、描くときは集中します。
作品①は、アクリルで描いたNC1ロードスターです。この作品は、クルマに反射する光を描きたかったというのが制作の理由です。作品②のボルボにもいえるのですが、自分が惹かれるクルマのデザインといえば、曲線と直線が美しいクルマになります。光の当たり方が綺麗だからですね。 なぜ自分がクルマやバイクに惹かれるのかと考えたとき、この点が大きな理由になると思います。エンジンなどの性能面に魅力を感じる部分もありますが、「見た目が好きかどうか」のほうが、自分にとっては優先度が高い気がします。
ファーストカーでもあるこのロードスターは、実は乗りたかった第1希望のクルマではありませんでした。本当はFD3S(マツダRX-7)に乗りたかったんです。そして、ロードスターの中でもNBに興味を持っていました。 自分は『頭文字D』を見てクルマが好きになり、MAZDAのRX-7に憧れていたので、「初めて乗る自分のクルマは絶対にFDだ」と決めていました。ですが、諸般の事情によりロードスターに。そしてNBではなく、当時現行モデルだったNCになりました。
でも、実際に乗ってみると、すごくいいクルマでした。FDにもNBにも乗ってみたのですが、双方のいいところを取ったような乗り味だなと感じました。 ロータリーのFDと比較すると、正直、軍配はFDに上がりますが、NCは大きな故障などもなく比較的安心して乗れるクルマなので、一般的に「最初に乗るクルマは現行車がいい」と言われるのも、いまは理解できます。
先行モデルのNA、NBの魅力は“軽快さ”だと思います。一方、NCは「重たい」「ぼてっとしている」などのユーザーの声もあり、ロードスターの人気モデルではありませんが、そこに愛着が湧きました。ズッシリとした重量感は、乗った時の安定性や安心感につながります。
自分はあまのじゃくなところもあるので、世間がいいというものより、“知る人ぞ知る”という魅力とその特徴に気づくのが楽しいと感じます。いまでは、作品のモチーフにするくらい大好きなクルマになりましたし、近年では再評価もされているようです。またいつか所有できる機会があれば、NCロードスターに乗りたいと思います。
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作品②は、NCロードスターから日産のラシーンを経て、いま自分が乗っているクルマ、ボルボ240エステートです。作品は、透明水彩で描きました。
この作品を描いた経緯は、このところ、乗り物以外の新たなモチーフを模索していました。「何かいい刺激はないか」と思い立ち、山口県から愛知県まで240で自走した経験がきっかけでした。
最近、趣味で植物やアクアリウムに興味を持ちはじめたので、名古屋と岐阜を行き来しながら、『ぎふワールド・ローズガーデン』『世界淡水魚園水族館 アクア・トトぎふ』、名古屋の『東山動植物園』などで植物や動物を見て回りました。240は成人男性が足を伸ばして寝られるサイズで、車中泊などもしました。
無計画に始まった突発的な“思索の旅”でしたが、ふだん受けられないような刺激を受け、心が動いたことで、急に悩みなどはどうでもよくなり、純粋に「また絵が描きたい」と思いました。 モヤモヤした悩みから救い出してくれたのは、無茶な旅を実行できた愛車のおかげでもあり、そんな思いを絵に表現しました。
インタビュアー/山内トモコ
こさかだいき/1995年山口県生まれ。南陽工業高等学校を卒業後、マツダ(株)に入社。23歳でフリーランスイラストレーターとして活動を始める。水彩を用いてモチーフの持つ良さを陰影の表現で忠実に再現し、魅力を最大限に引き出す。乗り物を好んで描いており、広告などを手がける。AAFオートモビル・アート連盟会員。山口県在住