第二次世界大戦後のジャガーのスポーツカーは、5世代に大別できる。①XK120(1948年デビュー)〜XK150(57年デビュー)、②Eタイプ(61年デビュー)、③XJS(75年デビュー)、④XKシリーズ(96年デビュー)、そして、先ごろ惜しまれつつ生産を終了したFタイプ(2013年デビュー)だ。
1948年に発表されたXK120は、優美なスタイリングと卓越した走りで、ジャガーを一気に有名にしたエポックモデルだった。3.4リッターの直6DOHCエンジンは、車名のとおり120mph(約192km/h)の最高速度をマーク。当時としては世界トップクラスの走行性能を誇った。
ボディはフルオープンのロードスターを基本に、途中からフィクスドヘッドクーペ(固定式ルーフのクーペ/51年)とドロップヘッドクーペ(豪華装備のコンバーチブル/53年)が登場する。フィクスドヘッドクーペとドロップヘッドクーペは、ウッドパネルやレザーシートを装備。その後のジャガーのルールになった「上質な仕立て」を備えていた。
XKシリーズは、54年のXK140を経て、57年にGT色をいっそう強めたXK150に発展する。
ジャガーは51年、XK120をベースにしたレーシングカー、Cタイプを発表していた。Cタイプはル・マン24時間レースで51年と53年に総合優勝を果たす(52年の優勝はメルセデス・ベンツ300SL、その後、ジャガーはDタイプで55年から3連勝を達成する)。
XK150のスタイリングは、ル・マンを制したCタイプのイメージを継承。室内空間を広げるなど実用性に配慮したモデルだった。
搭載する6気筒DOHCエンジンは、XK120から受け継いだ3.4リッターのほか、59年には3.8リッターも設定され、オーバー200km/hを達成。61年発表のEタイプへの橋渡しを務めた。
取材車は1958年モデルのXK150フィクスドヘッドクーペ。英国でフルレストア作業が施され、1991年に日本に輸入された。前オーナーは複数のヒストリックスポーツを所有する熱心なマニアで、屋内ガレージに保管、定期的に専属メカニックの整備を受けていた。それだけに各部のコンディションは素晴らしい。
エンジンはセル一発で始動、2基のSUキャブレターを装備する3440ccの直6DOHCエンジン(210ps/30kgm)は、活発でパワフルだ。2500rpm前後から明確にトルクが盛り上がり、強力な加速を披露する。サウンドは引き締まった音色を発していた。
ラック&ピニオン式のステアリングは、走っている限り決して重くない。反応はスムーズである。これには、ほぼ50対50の前後重量配分が効いていると思われる。ブレーキも信頼できる。ジャガーはライバルに先駆けてディスクブレーキを標準装備。前輪がサーボ付きのXK150のブレーキ性能は強力で、安心して走れる。
XK150は操縦安定性とブレーキ性能に優れ、現在でも走りのレベルは一級品だ。
一方、スタイリングやインテリアには伝統的な風合いが色濃く漂う。シートを含め、フルレザー仕様の室内は上質そのもの。シートに腰を下ろしただけで熟練職人の技を実感する。
ジャガーXK150は、スポーティな走りと、クラシカルで美しい内外装が融合した、元祖GTクーペというべき存在、優雅なカーライフの象徴である。
モデル=1958年式/ジャガーXK150クーペ
全長×全幅×全高=4510×1660×1350mm
ホイールベース=2591mm
車重=1490kg
エンジン=3440cc直6DOHC
最高出力=210ps/5500rpm
最大トルク=30.0kgm/3000rpm
トランスミッション=4速MT
サスペンション=前ダブルウィッシュボーン/後リーフリジッド
ブレーキ=前後ディスク
タイヤ&ホイール=6.00-16+ワイヤースポーク
駆動方式=FR
乗車定員=4名