ミニカーのパッケージイラストを数多く手がけるイラストレーター、田川博之さん。以前、パッケージイラストについて「ボディのツヤやテカリはあえて控えめにする」「ホイールには時代感が出る」というお話をうかがいました。今回は、大好きな可愛いクルマと、1990〜2000年代のクルマのデザインの流行がわかる作品をご紹介いただきます。
作品①は、『カジバ ミニ・モーク』です。誰が何といっても可愛いし目立ちます。ボクの大好きなクルマの中で、「可愛いクルマ部門」のベスト3に入る1台です。ちなみに、ほかの2台は、ケーターハム・スーパー7、クラシックミニ・クーパーです。
ミニ・モークは、もともとミニをベースに軍用車として設計されましたが採用されず、一般車両として発売されました。資料によれば、イギリス、オーストラリア、ポルトガルなど複数の国で製造され、ポルトガル工場はイタリアのオートバイメーカー、カジバに買収され、製造が続けられました。
オーストラリアではゴルフ場やビーチバギーで利用された“平和なクルマ”と聞いていましたので、イラストの構図はゴルフ場に設定し、芝生のグリーンの背景に映える赤のボディカラーを意識しました。好きなクルマは筆がのって、楽しく描けました。
ずいぶん前になりますが、近所にクルマのスクラップ工場があり、うずたかいスクラップの山の頂上に、たまたまミニ・モークが置かれていました。少し手を加えればまだまだ走りそうな、めちゃくちゃカッコいいレベルで、その光景自体がアートのような雰囲気でした。ミニ・モークに心が動いて、工場の担当者に尋ねましたが、あの光景はいまでも憶えています。
作品②は、2024〜2025年に制作した「トミカリミテッドヴィンテージ」シリーズのパッケージイラストをコラージュしました。

作品②『トミカリミテッドヴィンテージ』パッケージイラスト(デジタル ペインティング)/左の列は上から1999年ホンダ・シビック タイプR/1996年日産スカイラインGT-R・Vスペック/2006年三菱ランサー・エボリューションⅨ・MR・GSR。右列は上から2001年マツダ RX-7タイプR/2002年トヨタ・アルテッツアRS200/2003年スバル・インプレッサWRX STi サイズ:縦×横210×297㎜(解像度350dpi) 制作:2024〜2025年
左上:1999 ホンダ シビック タイプR
左中:1996 日産スカイラインGT-R Vスペック
左下:2006 三菱ランサー エボリューションⅨ MR GSR
右上:2001 マツダ RX-7タイプR
右中:2002 トヨタ アルテッツアRS200
右下:2003 スバル インプレッサWRX STi
トミカリミテッドヴィンテージ・シリーズは、2007年から担当させていただき、来年2027年で20年になります。現在、のべ1000台を超えるパッケージイラストを手がけました。 トミカリミテッドヴィンテージ・シリーズのラインアップは、若い頃に乗りたかったクルマ、自分が生まれた頃に登場したセダン、クーペ、カブリオレ、ワンボックス、軽自動車、トラック、バスなど、クロニクルな楽しさも感じながら描いています。1モデルにつき約2週間を目標に仕上げます。
制作の際は、たとえば料理するときに「美味しくなーれ! 美味しくなーれ!」と願いをこめるように、「売れますよーに!売れますよーに!」との思いで描いています(笑)。
パッケージイラストは、パッケージの紙質によって、印刷の仕上がりが商品の色と異なるとお客様からのクレームにつながるケースがありますので、「理想の色に刷り上がって〜!」と祈っています。
ボクは、いま、コンパクトで可愛いクルマが大好きですが、若いころは高性能で速いクルマが好きでした。年齢によって好きなクルマが変わる心理が面白いと思います。 クルマのデザインについては、年式によって極端に変わるクルマもあれば、ポルシェ911のように伝統的なスタイルを踏襲するクルマもあります。いろいろあって楽しいのではないでしょうか。 テスラ・サイバートラックのように、びっくりするモデルもありますが、クルマのデザインは時代や世相、技術を反映していると思います。 将来的に、クルマの性能の進化に人間が追いついていけるのかちょっと心配になることもありますが、クルマのデザインがどう変化していくのか、興味津々で見届けたいと思っています。
インタビュアー/山内トモコ
たがわひろゆき/1960年、神奈川県横浜市生まれ。1990年からフリーのイラストレーターとしてミニカーやラジコンのパッケージを中心に、スポーツ雑誌、広告イラスト、 キャラクターデザイン、ロゴマークなどを手がける。AAF オートモビル・アート連盟会員。横浜市在住
やまうちともこ/TOKYO-FMパーソナリティを20年以上つとめ、インタビューした人1000名以上。映画評論家・品田雄吉門下生。ライター&エディター
