【岡崎宏司カーズCARS/CD名車100選】世界初、全域全速ターボ。1982年マツダ・コスモ・ロータリーターボは、スポーツ派のラブコールに応えた!

コスモは世界初の2ローター・ロータリー車として1967年に誕生。1981年9月デビューの第3世代は2ドアHT/4ドアHT/セダンの3ボディが設定され、2ℓレシプロ/自然吸気ロータリー/ロータリーターボが選べた。イメージリーダーは2ドアHTのロータリーターボ。ターボは自然吸気ロータリー比で出力23%、トルクで40%パワフルな160㎰/23㎏mを達成。当時クラストップのCd値0.32の空力ボディと相まって、抜群の速さを披露した

コスモは世界初の2ローター・ロータリー車として1967年に誕生。1981年9月デビューの第3世代は2ドアHT/4ドアHT/セダンの3ボディが設定され、2ℓレシプロ/自然吸気ロータリー/ロータリーターボが選べた。イメージリーダーは2ドアHTのロータリーターボ。ターボは自然吸気ロータリー比で出力23%、トルクで40%パワフルな160㎰/23㎏mを達成。当時クラストップのCd値0.32の空力ボディと相まって、抜群の速さを披露した

パフォーマンスは文句なしの超一級品。3500rpm以上でさらに伸びる!

 テストコースで好印象だったコスモ・ロータリーターボを公道でドライブした。試乗車は2ドアHTターボGTである。
 テストコースでは0→400mを15.16秒で駆け抜け、最高速度はラップ計測で213㎞/hだった。一般路でもスピードランナーぶりに変わりはなかった。速いクルマはいろいろある。最近ではセリカXX2800GTやスカイラインRS、スタリオンをはじめ2リッタークラスのターボ勢などがすぐに浮かぶ。しかし、コスモ・ターボほど強烈な加速、高いトップスピードをマークしたクルマは、少なくともボクの記憶にはない。コスモ・ターボのポテンシャルは、文句なしの超一級品である。ところが、運転席からはそれほどのスピード感を受けない。

走り

 ターボ特性が、ある時点から急に段がついたようにグッと利き出すタイプではないし、パワーカーブもコンスタントに上昇するからだ。そしてロータリー特有のスムーズさと静粛性が、スピード感を殺してしまう要素になっている。ハイウェイスピードになると、体感と実際のスピードのズレは一段と広がる、空力的に優れたデザインのおかげで、風音が高まらないからだ。ドライバーはスピードメーターに目をやって、初めてそのスピードに驚く。

 トルクは、2000rpmを超えたあたりから太り出し、2800rpm付近でトルクカーブの上昇を実感。そして3500rpmプラスで本来の強力なパワーの波が押し寄せる。その変化はまさにスムーズ、ほとんど段差らしいものを感じない。

 静粛性も、これまでのロータリーに比べて飛躍的にアップしている。音質もかなり変わってきた。低く、まろやかになっている。「ロータリーは静かだけれど、あの2サイクル的な音質は嫌いだ」という人が少なくなかったが、この音なら気に入るだろう。ただし低速性が弱いといわれ続けてきたロータリー車の体質は、このターボチャージド・ロータリーも変化していない。2000rpm以下の低回転域トルクは、6PI式のノンターボより痩せている。市街地走行では、かなりマメなシフト操作を要求される。ロータリーターボの「高速が得意で低速が苦手」な体質を改善するには、マッチングのいいATが必要になる。べストな設定のATを組み合わせれば、商品力は飛躍的にステップアップするはずだ(ATは1983年9月に追加)。

エンジン

 ハンドリングに話題を変えよう。試乗した2ドアHTのGTは純スポーツ指向、足回りを最高に締め上げてある。ステアリングはパワーアシスト付きで、タイヤはアドバンHF(195/70HR14)が標準だ。ハンドリングはシャープだし、ちょっと飛ばす程度なら、実に素直に、素早くドライバーの意思に反応する。ユーザーの大半は、このハンドリングに満足するだろう。

 限界的な走りにトライした場合のレポートもしておこう。ハイスピード領域に入ったコスモ・ターボでいちばん気になったのは、サスとタイヤのマッチングだった。高速領域でのクルマの挙動が敏感になりすぎている。高速直進時に強めにステアリングを切ったとき、ドライバーが予期する以上にクルマは速い動きをする。コーナーをホットに攻め込むような場合も、限界での挙動は少しシビアだ。

 次に指摘したいのはオプションのリミテッドスリップデフ(LSD)である。ホットなコーナリングでのステアリング特性は、かなり強めのアンダーステアが現れた。それをパワーで相殺しようとアクセルを踏み込むと、今度はリアが速い流れを見せてしまう。もう少しリニアリティの高い特性を持ったタイヤに履き替えれば、問題は解決するに違いない。過日、ピレリP6を組み合わせた同じモデルに乗ったが、ハンドリングはより素直で、安心感も高かった。

インパネ

 第3世代のコスモは、デビュー時にはレシプロ4気筒エンジンしかなかったが、ロータリーが加わり、国産最速のロータリー・ターボも登場と、ラインアップを充実させてきた。これで感じのいいターボATがあれば文句なしだが、現状でも大いに魅力的なスポーティモデルである。
※CD誌/1982年11月号掲載

表紙

諸元

【プロフィール】
おかざき こうじ/モータージャーナリスト、1940年、東京都生まれ。日本大学芸術学部在学中から国内ラリーに参戦し、卒業後、雑誌編集者を経てフリーランスに。本誌では創刊時からメインライターとして活躍。その的確な評価とドライビングスキルには定評がある。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員

 

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