現地でのF1観戦が最も優雅に楽しめる『F1パドッククラブ』を初体験!そこは“人生に一度は行くべき場所”だった

去る2023年9月24日の日曜日、F1第17戦日本GP(鈴鹿サーキット)で53周の決勝レースが行われ、マックス・フェルスタッペン選手がポール・トゥ・ウィンで圧勝、それをもって所属チームのレッドブル・レーシング・ホンダRBPTがコンストラクターズ・タイトルを決めた。

75年前の1948年9月24日は本田宗一郎が会社を起した日、つまりホンダの75年目の創立記念日という特別な日だった。この日、鈴鹿サーキットには10万人を超えるファンが訪れ、金曜からの3日間では22万人ものF1ファンたちが、F1という壮大な“お祭り”を存分に楽しんだ。

その前日に行われた予選日となる9月23日の土曜日、筆者は鈴鹿サーキットに訪れていた。振り返ればF1観戦歴は約30年でありながら、はじめてのF1開催中の鈴鹿サーキットに足を踏み入れた目的は、表彰台でおこなわれる“シャンパン・ファイト”でおなじみのスパークリング・ワイン『FERRARI TRENTO』(フェッラーリ社)の輸入代理店・日欧商事さまの計らいによってあの『F1パドッククラブ』を体験させていただくことだった。

フェッラーリの5都市限定ボトルの一つは鈴鹿デザイン(写真右)、表彰台にはジェロボアムが提供されている(写真左)

なんともまあ幸運というか、役得というか、そんな大人の事情はさておき、せっかくの機会なので、存分に味わわせていただこうということで、当日早朝に東京から名古屋までいそいそとクルマ移動し、集合場所である名古屋駅近くの駐車場についたのは朝の8時ごろだった。

BMW X1 20d

そうそう、片道約330kmの旅のお供には、新型BMW・X1のディーゼルモデル(20d)を選んだのだが、これが非常に成熟感を感じる仕上がりで、燃費良し、乗り心地良し、ドライブトレーン良し、さらにいえばディーゼルとは思えない静粛性には驚かされた。結果、ほぼ疲れ知らずともいえる快適なドライブを満喫できたことも忘れずにお伝えしておきたい。

フェッラーリ社の生い立ちとワインづくりへのこだわり

さて、話を戻そう。集合場所から鈴鹿サーキットまではバス移動。フェッラーリ社CEOであるマッテオ・ルネッリ氏はじめ、関係者やスタッフの方々とともに約1時間半かけて移動したのだが、その移動中にはマッテオ氏がフェッラーリ社の成り立ちから、ワインづくりへのこだわり、そしてF1とのパートナーシップの成功についてなど、たくさんのお話を伺うことができたので、そのストーリーの一部をここでご紹介しておこう。

フェッラーリ社CEOのマッテオ・ルネッリ氏(写真左)と日本総代理店・日欧商事CEOのティエリー・コーヘン氏(写真右)

ちなみに、フェッラーリ社は1902年創業。実に121年を数える歴史あるワイナリーで、創業者の名はジュリオ・フェッラーリ(Giulio Ferrari)氏。クルマ好きの方々がその名から連想するのは、1947年にエンツォ・フェラーリ(Enzo Ferrari)氏によって生み出された“フェラーリ”が圧倒的に多いであろう。ただ、実はその歴史については、その名が冠されたワインの“フェッラーリ”のほうが長いのであった。
(編集部・注釈:いずれもファミリーネームのスペルは同じではありますが、それぞれで日本語表記の使い分けがされていることを尊重し、カー・アンド・ドライバーでは“フェッラーリ”と“フェラーリ”を別々に表記しています)

この頃、ちょうど121回めの収穫を終えたばかりの大事なタイミングで、CEOのマッテオ氏自らが日本に訪れるには相応の理由があった。実は同ブランドの出荷先として、イタリア、アメリカ、ドイツにつぐ4番目の市場が日本であるからだ。

移動中のバスで、マッテオ氏は同社のワインづくりへのこだわりについて熱く語った。

「私たちの山のブドウ園は、イタリアにあり、そこには地中海の太陽があるため、夏の日中はとても暖かいです。しかし、夜になると山頂から冷たい空気が降り注ぐため、これによる昼と夜の気温の強い変化によって、ブドウたちがバランスの取れた酸を維持しながら、芳しいアロマを備えたロマンチックな成熟を遂げることができるのです。」

「一方で、私たちは地球温暖化にさらされており、山にあっても非常に重要な問題です。ブドウの品質を担保するために、2000年以来、それまでより高い標高にブドウ園を移動させるなどして、次の世代に引き継ぐための努力を続けているのです。」

ワインづくりについての話の中で地球温暖化の話が出てくるということに、ヨーロッパにおけるその問題への意識の高さを感じる。さらに続けて、ワイン好きの方以外にはなかなか知られていないだろう栄誉についても語られた。

「私たちのワインの品質は世界中で認められています。つい先日、ロンドンで毎年開催されている世界で最も重要かつ権威ある国際コンペティション、シャンパン&スパークリング・ワイン・ワールド・チャンピオンシップ(以下、CSWWC)で最多の金メダルを獲得し、スパークリング・ワイン・プロデューサー・オブ・ザ・イヤー(最優秀生産者)の6度目の受賞が発表されました。これは非常に栄誉なことです。」

「フェッラーリは数々の素晴らしいイベントでお祝いの乾杯を担ってきた存在です。そしていま、2021年からはモータースポーツの最高峰であるF1の公式パートナーとして、F1世界選手権のすべての表彰台で、フェッラーリのジェロボアム(3リットルボトル)が用いられ、ホスピタリティエリアも含めて多くのF1関係者たちに私たちの大切なスパークリング・ワインを提供できることを誇りに思っています。」

フェッラーリ社の創業、その後ルネッリ家が引き継いで3代目CEOとなるマッテオ氏が語ってくれた数々の胸熱ストーリーに耳を傾けていると、ふと気づけばもうそこには鈴鹿サーキットがあった。

 

いよいよパドッククラブ、そこにはたくさんの魅力的な体験が待っている

鈴鹿サーキットに到着して、すぐさまパドッククラブの入り口へと向かった。

そもそもパドッククラブとはどんなものなのかをお伝えしておくと、簡単にいえば、最もレースカーやドライバーの近くでレース観戦可能なパーティー会場、といったところだろうか。鈴鹿サーキット内の場所でいえば、エントラントと呼ばれる競技参加者である各チームのピットガレージ直上の2Fフロアに用意されているガラス張りの部屋で展開されている。そのチケットは、2023年の日本GPの場合、今年は3日間で一人78万円(税込)という驚くような金額である。

ただし、そこに含まれているのは、多種多様なケータリングサービス/フリードリンクや、ピットウォークやゲストトーク、あるいはサーキットサファリなどのさまざまなアクティビティが体験できる権利がある。また、サーキットへのアクセスに関しては専用駐車場とそこからの専用シャトルの送迎がある、など、まるでVIPかのような気分が味わえるまさに特別なチケットであり、その価値を考えるに金額換算での損得勘定するにはおいそれとは難しい。

F1ファンであれば、その名を見たり聞いたりしたことはあるであろうし、筆者含めてそれこそ「憧れの場所」といってもいいところだ。前置きが長くなってしまい恐縮だが、パドッククラブに入るということは、それだけ特別な気分を持って入るにふさわしい場所である。

厳重なセキュリティ・ゲートをくぐってからというもの、そこはもう別世界ともいえる空間がはじまる。F1ならびに各チームのオフィシャルグッズがそろったブティックや、F1ドライバー気分が味わえるゲーム体験エリア、そして大スクリーンを前にしたラウンジが広がっている。横にはバーカウンター、そしてケータリングサービスもある。

その後に続く廊下にも日本ならではの催し物や、ドリンクカウンターなどが点在しており、さらに奥に進むとピットガレージのある建物へと到着し、左右それぞれに各チームやスポンサーによるホスピタリティエリアへと続く。今回はフェッラーリ社のホスピタリティエリアに入れるパスを手配いただいているので、目的地であるそこへと突き進む。

コース側がガラス張りとなったルームは、さながらおしゃれな高級レストランの雰囲気。当然、ウェルカムドリンクはフェッラーリのスプマンテ(イタリア産のスパークリングワイン)。それも、表彰台で用いられるものと同じフェッラーリ・トレントDOCが用意され、最初の乾杯を行った。

そこからはもうあっという間の時間が過ぎていく。美味しい食事、美味しいスパークリングワイン、眼前にはピットから駆け出ていくF1マシンの数々と、グランドスタンドで熱狂する人々の姿がある。最高のひととき、これ以上の言葉が見つからない。

人生に一度は味わってほしい体験であることは間違いない

ここまでの話だと、なんだ単なる自慢話か、という見立てもあるかもしれない。まあ、ある意味あたっている気もするが、ここでお伝えしたいのは、F1ファンにこそ、ぜひそれ以上の価値を知ってもらいたいということ。

たとえば、パドッククラブの付帯権利であるピットウォークはもちろん、コーディネーターとの関係性次第では、F1チームのピット内に入れるガレージツアーなども参加できる可能性がある。さらに、タイミングさえよければ、サーキットサファリとして、通常は限られたカメラマンしか入れない、コースサイドエリアにまで行けるようなアクティビティさえある。

今回のパドッククラブを体感したことを通じて得られた経験、またそこで巡り会えた人々との出会いは筆者にとって貴重な機会だった。もとより好きなF1観戦を益々楽しもう、と思ったことだけでなく、こういった機会が得られたときにその場の、そのひとときを”思いっきり愉しむ”ということを大切にしようと思った。

来年4月開催となった鈴鹿サーキットでの日本GPでは、もしも金額的な理由さえクリアできるのであれば、ぜひ思い切って、人生に一度はぜひ味わってほしい。それはきっと忘れがたき一生の思い出となる特別な体験がここにはある、ということは間違いない。

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