【表紙のクルマの物語】メルセデスAGM GT F1セーフィカー(2025年7月号、岡本三紀夫)

F1マシンのタイヤ温度に配慮して隊列をコントロールする

 メルセデスAMGは、モータースポーツの頂点であるF1グランプリに積極参戦。2025年シーズンはジョージ・ラッセル選手と、若き天才、アンドレア・キミ・アントネッリ選手のコンビで勝利を目指している。またそのパワーユニットは、自身のF1チームだけでなくマクラーレン、アストンマーティン、ウイリアムズにも供給。AMGはフェラーリやホンダと並ぶF1に欠かせないメジャープレイヤーといえる。

 AMGはレース運営にも大きく貢献している。1996年以降、レースをサポートするセーフティカーを提供しているのだ。セーフティカーは、コースに障害が発生、安全の確保が必要であると判断された時にF1マシンを先導する役割。

 セーフティカーには、F1マシンのタイヤ温度をキープできるスピードが求められる。タイヤが冷えてしまうとレース再開時にマシン本来のロードホールディング性能が発揮できず、新たなトラブルの要因になるからだ。したがって起用されるモデルは、ハイパフォーマンスモデル。現在セーフティカーには、レースに応じてメルセデスAMGとアストンマーティンが起用されている。表紙は、モナコGPでマシンを先導するメルセデスAMG GTを描いている。

 この真紅のAMG GTセーフティカーは2022年シーズンから登場。空力向上のためF1セーフティカーとして初めてルーフのライトバーを廃止したのが特徴になる。パワーユニットは4ℓ・V8ツインターボでパワースペックは730hp/81.6㎏m。2台のカメラがリアスポイラーに装着され、後方の状況がリアルに確認できるよう工夫されている。

 このセーフティカーの運転を託されているのは、1990年半ばにメルセデスのワークスドライバーとしてDTM(ドイツツーリングカー選手権)で活躍したベルント・マイランダー氏。彼はFIAオフィシャルドライバーとしてメルセデスAMG、アストンマーティンのどちらもドライビングする。

 F1グランプリにとって、セーフティカー導入はレースの行方を大きく左右する要素。2025年シーズンも熾烈なバトルが展開されている。セーフティカーにも注目すると、もっとF1を楽しめるに違いない。

SNSでフォローする