9月号の特集は300万円台で買えるクルマに注目してみた。あらためて輸入車のリストを見るとラテン系が多いことがわかった。フランスとイタリアブランドが占めている。
とくにルノーには魅力的なモデルが多い。パワーソースは置いておくとして、ルーテシアやカングーは好みだ。日常にあのハンドリングを持ち込むのはとても健全だと思う。プジョーもそうだ。彼ら特有のドライビングポジションでクイックレスポンスな操作系を操ると、日常が非日常になる。フランス車にはそんな魅力が隠れているのがうれしい。
そういえば、先日そのフランス車、プジョーの新型車の発表会に行ってきた。3008である。それを見て思ったのは最近のデザインクオリティの高さ。ライオンの爪痕をモチーフにしたデザインを含め、高いオリジナリティを持ちながらかっこよく仕上げている。いうなればクール。なので、そこで一点突破というマーケットコミュニケーションもありだろう。かつてのアウディがなんとなくかっこよく見えたような作戦だ。「プジョー=かっこいい」という図式を作れば、新たなターゲットが見えてくるに違いない。
イタリア車はフィアット500ツインエアを長年所有しているので、それに尽きる。およそ10年で8万㎞乗っている。ただ、純粋な内燃機関はもう終わり。というかすでに本国では何年も前からBEVとハイブリッドにスイッチしている。日本でガソリンエンジン車を買えるのはラッキーかもしれない。とはいえ、エンジン車はすでに生産終了しているから残るは在庫車両だけ。気になっている方は急いだほ うがいいだろう。
話は変わるが、VWからID.Buzzが発表された。BEVのミニバンだ。ユニークなのはそれをタイプ2と関連付けたこと。初代モデルの“金太郎マスク”をモチーフにしたツートンのカラーリングを取り入れている。70年以上経ってそれを持ち出したのは勇気が必要だったはずだ。なんといっても初代ワーゲンバスは偉大な足跡を残している。
ただ個人的な好みでいえばタイプ3のほうがプレゼンスは高い。空冷リアエンジンのバリアントは若いころ憧れていた1台だ。サーフボードを積んだその姿はまさにサーフカルチャーのど真ん中といった趣である。
そしてそれをメインに扱っているのがTOA INTERNATIONAL(トーアインターナショナル)。代表の向井さんとはもう25年以上のつきあいになる。当時は川﨑にショップを構えていたが、現在は三浦の海のそばでいい感じに営んでいる。向井さんのセンスは抜群で、ショップの外観はまるでカリフォルニアのディーラーといった印象。そこだけ日本じゃない香りをプンプンさせる。西海岸好きの方なら涙モノだろう。
ファクトリーに並ぶ販売車両や車検や修理で入っている車両も見ものだが、オフィスのある2階の棚に並んだミニチュアカーの大群にも感動する。そうそう当時のカタログや絶版パーツもあるので、まるでちょっとしたミュージアムのようだ。時間はいくらあっても足りない。
最近はボクも東京と逗子の2拠点生活をしているので三浦は近く感じられるようになった。近々顔を出してみたいと思う。日本の中のカリフォルニアは三浦にある。
くしまたつや/モータージャーナリスト。2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。『Car Ex』副編集長、『American SUV』編集長など自動車専門誌の他、メンズ誌、機内誌、サーフィンやゴルフメディアで編集長を経験。趣味はクラシックカーと四駆カスタム