ボッシュが提案するBEV用CVTの可能性と実用性

▲ボッシュはEV用CVTの開発してEVのエネルギー効率をいっそう高めようと提案
▲ボッシュはEV用CVTの開発してEVのエネルギー効率をいっそう高めようと提案

 ボッシュは『人とくるまのテクノロジー展 2021 ONLINE』(5月26日~7月30日)に、電気自動車(BEV)用に専用開発したCVT、CVT4EVを出展した。日本初出展となる。

 無段変速機と呼ばれるCVTは、入力軸側と出力軸側の巻き掛け半径(プーリー比)を変化させることで、変速比を連続可変で制御する自動変速機だ。現在の主流は金属ベルトで動力を伝えるベルト式と、チェーンで動力を伝えるチェーン式。ボッシュは1985年以来、ベルト式の開発・生産を続けている。

▲ボッシュが開発を行っているBEV用CVT「CVT4EV」のテクニカルスケッチ
▲ボッシュが開発を行っているBEV用CVT「CVT4EV」のテクニカルスケッチ

 ある程度回転数を上げないと十分なトルクを発生しないエンジンと違い、モーターは電流を流し始めた瞬間から最大トルクを発生する。そのため、変速機を用いずにドライブトレーンを構成するのが一般的だ(減速機構は必要)。現在販売されているEVのほとんどは変速機を持たない。

 例外はポルシェ・タイカンで、リアに搭載するモーターに2段変速機を組み合わせている。最高速度が250km/hを超えるハイパフォーマンスカーなので、加速性能と最高速の両立を図るため、必要最小限の変速段を設けることにしたのだろう。裏を返せば、鋭い発進加速や超高速性能を求めない限り、EVに変速機は必要ないともいえる。

 それなのになぜ、ボッシュはEV用に専用設計したCVTを提案するのだろうか。答えは、効率とパフォーマンスの最適化のためだ。EVへの適用で主流を占める永久磁石モーターは、電流を流し始めた瞬間に最大トルクを発生する一方、高速回転時にはトルクが得にくくなる特性がある。

 エンジンと特性は異なるが、モーターにも効率のいい領域はあり、その領域を上手に使うことで、効率を向上させられる。車速の変動をCVTの変速で吸収すれば、モーターの回転数を一定の幅に収めることができる。

▲ポルシェ・タイカン 写真のグレードは「ターボ」
▲ポルシェ・タイカン 写真のグレードは「ターボ」

 パフォーマンス面でも変速機を組み合わせる価値はある。乱暴にたとえれば、EVは3速ギア固定で発進から高速までカバーしているような状態だ。1速から6速に相当する変速比幅を持たせた変速機を組み合わせる技術で、発進や登坂、あるいは牽引性能を引き上げることが可能。同時に、最高速度もアップさせられる。

 EVの魅力は切れ目のないシームレスでスムーズな加速だ。変速機を組み合わせたことで変速ショックが生じたのでは、魅力は薄れてしまう。その点、連続可変で制御できるCVTなら、EVが本来持つ魅力を損なわずに機能アップが図れる。

 ただし、注意しなければならない点もある。CVTを組み合わせると、ドライブトレーン全体の伝達効率が落ちてしまうのは避けられない。重量や体積は増えるし、コスト増にもつながる。CVTの組み合わせによって得られるプラス要因が、CVT採用に伴うマイナス要因を上回ることが、CVT採用の前提条件になる。

▲タイカンのセレクター リバース/ニュートラル/ドライブの3ポジションから選択
▲タイカンのセレクター リバース/ニュートラル/ドライブの3ポジションから選択

 ボッシュはCVT4EVの特徴について、次のように説明している。

「単一のデザインで中型車、スポーツカーから小型商用車まで、さまざまなアプリケーションに対応できるパワートレーンです。より安価でコンパクトな電気モーターで、これまでと同等もしくはそれ以上の性能を発揮することができます。また、従来の電気モーターであれば、航続距離の延長が可能になります」。

 CVTを組み合わせることで、EVの可能性が拡がるのは間違いない。CVTの新たな使い道となるだろうか。

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