ボルボ・カーズ、自動車メーカーとして初めてSSAB社と化石燃料を使わない製鉄の研究を開始

 ボルボ・カーズは、スウェーデンの世界的鉄鋼メーカーであるSSABと提携し、自動車メーカーでは初めて、自動車業界で使用される化石燃料を使わない高品質な鉄鋼の開発を共同で検討していると発表した。

▲VOLVOとSSAB、鉄鉱石を原料とした製鉄に従来必要とされていた原料炭を、化石燃料を使用しない電気と水素で代替することを目指す研究を開始
▲VOLVOとSSAB、鉄鉱石を原料とした製鉄に従来必要とされていた原料炭を、化石燃料を使用しない電気と水素で代替することを目指す研究を開始

 今回のコラボレーションにより、ボルボ・カーズは、SSABとそのHYBRITイニシアチブに協力する最初の自動車メーカーとなる。HYBRITイニシアチブとは、鉄鋼業界で最も野心的で先進的な非化石スチール開発プロジェクトのことだ。

HYBRITは、SSAB、鉄鉱石メーカーのLKAB、エネルギー会社のVattenfallが共同で立ち上げた。

 このプロジェクトは、鉄鉱石を原料とした製鉄に従来必要とされていた原料炭を、化石燃料を使用しない電気と水素で代替することを目指している。その結果、世界初の化石燃料を使用しない製鉄技術となり二酸化炭素排出量がほとんどないことが期待されている。

▲HYBRITが説明する製造プロセス図
▲HYBRITが説明する製造プロセス図

 このコラボレーションの一環として、ボルボ・カーズはスウェーデンのルレオにあるHYBRITのパイロットプラントで製造された水素還元鉄から作られたSSABのスチールを確保する最初の自動車メーカーとなる。このスチールは、テスト目的で使用され、コンセプトカーに使用される可能性もあるという。

なお、SSABは2026年に化石燃料を使用しないスチールを商業規模で市場に供給することを目指している。またSSABは、石炭の代わりに水から生成した水素と化石燃料を使わない電力を使用するHYBRIT技術により、スウェーデンのCO2排出量を10%、フィンランドのCO2排出量を7%削減することを目標としている。

 ボルボ・カーズもまた、自社の生産車に化石燃料を使用しない鉄を用いる最初の自動車メーカーになることを目指していく。

■ボルボ・カーズのCEO ホーカン・サムエルソン氏 コメント
「二酸化炭素排出量を継続的に削減していく中で鉄鋼がさらなる進歩のための主要分野であることはわかっています。SSAB 社との非化石スチール開発により、当社のサプライチェーンにおいて大幅な排出削減が可能になります」

■SSAB 社の社長兼CEO マーティン・リンドヴィスト氏 コメント「私たちは、最終顧客に至るまで、完全に化石燃料を使用しないバリューチェーンを構築しています。私たちの画期的な技術は、カーボンフットプリントがほとんどなく、顧客の競争力強化に貢献します。ボルボ・カーズと協力して、未来の車のために化石燃料を使わない鉄鋼製品を開発することを目指しています」

▲VOLVOの工場生産ライン
▲VOLVOの工場生産ライン

 世界の鉄鋼産業は、現在、原料炭に依存した高炉を用いた鉄鉱石ベースの製鉄技術が主流であることから、世界の直接炭素排出量の約7%を占めている。ボルボ・カーズの場合、自動車に使用される鉄鋼生産に関連するCO2排出量は、自動車に使用される部品の材料や生産に伴うCO2排出量全体のうち、従来型の車で約35%、電気自動車(BEV)では約20%に相当するという。

SSABとのコラボレーションは、自動車業界で最も野心的なボルボ・カーズの総合的な気候行動計画に関する最新の取り組みだ。この計画の中心となるのは、2030年までに完全な電気自動車ブランドとなり、純粋な電気自動車のみをラインアップするというボルボ・カーズの目標でもある。

 この目標を実現するための計画は、全面的な電動化によるテールパイプからの排出量の削減にとどまらず、ボルボの広範な事業活動、サプライチェーン、材料のリサイクルと再利用による二酸化炭素排出量の削減にも取り組んでいくとしている。短期的には 2018年から 2025年の間に、自動車1台あたりのライフサイクルにおけるカーボンフットプリントを 40%削減することを目標とし、2040年までに、気候中立(実質排出ゼロ)な企業となることを目指していく。

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