トヨタが社長交代で近健太執行役員に白羽の矢を立てた理由

トヨタ自動車の佐藤恒治社長は副会長およびチーフ・インダストリー・オフィサーに就任し、新社長には近健太執行役員が就くことになった。

この交代はトヨタでは「経営チームのフォーメーションチェンジ」と表現している。具体的には、佐藤恒治社長は日本自動車工業会の会長職と日本経済団体連合会の副会長職に力を入れる一方で、トヨタでは「稼ぐ力」の向上と「損益分岐台数の改善」が重要課題であり、取り組みの具体化が急務で、収益構造の改善のため財務に詳しい近健太執行役員に白羽の矢が立ったと説明された。

トヨタは世界一位の販売を誇るし、もちろん稼ぐ力は圧倒的で優れていると考えている人は多いと思う。では直近の状況はどうなっているのか。2026年2月6日に発表された2026年3月期第3四半期決算情報によれば、2026年3月期の連結販売台数は975万台の見通し、営業収益は50兆円の見通しだ。一方、本業の営業利益は3兆8000億円、営業利益率7.6%の見通しである。数字そのものは大変立派な値だが、営業利益と営業利益率はともに3期連続下がっていて、営業利益率は10%を下回った。

トランプ関税の影響もあり、心配ないと見ている人が多いのだと思うが、このあたりがトヨタの課題意識であり近健太執行役員が社長に抜擢された理由だと考えられる。

ちなみに損益分岐台数のグラフを決算資料に見つけたので抜粋しておこう。

2026年3月期の損益分岐台数の見通しは、ここ10年で最も高い2017年3月期の値に近くなっている。しかもグラフは2024年3月期のボトムから一気に上昇傾向にある。2023年3月期のピョコンと上がっているのはおそらく半導体不足に悩まされた時期だろう。直近ではさまざま物資の値上がりや物流費、人件費などすべてが高まる一方で、損益分岐台数の上昇は営業利益の圧迫に直結する。わかりやすくいえば、クルマをたくさん販売しても利益が出ない方向に近づいているわけだから、これは問題だ。トヨタは固定費削減や原価改善、バリューチェーン全体の収益向上に取り組み、単なるコストカットでなく持続的な活動となるよう推進し、来期以降の本格反転につなげていくという。

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