ランボルギーニがウラカンGT3の実質的な後継モデルとなる「テメラリオGT3」を発表。ロードカーのテメラリオをベースに、FIAのレギュレーションに準拠したハイブリッドシステム未搭載の4リットルV8ツインターボエンジンや一体型ロールバーを配したアルミニウム製スペースフレーム、取り外しが可能なカーボンファイバーボディ、車両の最適なバランスを実現したエアロダイナミクスなどを採用。開発は2026年シーズン中に完了させる計画で、レースデビューは3月開催のセブリング12時間耐久レースを予定
伊アウトモビリ・ランボルギーニは2025年7月11日(現地時間)、ウラカンGT3の実質的な後継を担うGT3マシンの「テメラリオGT3(Temerario GT3)」を発表した。
イタリアのサンタアガタ・ボロネーゼの工場ですべて設計、開発、製造した初のレースモデルであるテメラリオGT3は、既存の新世代スポーツカーであるテメラリオのロードカーをベースに、FIAのレギュレーションに準拠したハイブリッドシステム未搭載の4リットルV8ツインターボエンジンや一体型ロールバーを配したアルミニウム製スペースフレーム、取り外しが可能なカーボンファイバーボディ、車両の最適なバランスを実現したエアロダイナミクスなどを採用したことが特徴である。
まずシャシーについては、ロードカーのアルミニウム製スペースフレームを基調に、ハイブリッドコンポーネントを支持するブラケットなど一部フレームを簡素化して、フロントとリアのサブフレームを素早く脱着できるように設計を変更。リアサブフレームには、エンジンと新トランスミッションのコンポーネントを収容する。コクピットが位置する中央部には、FIA GT3安全基準に準拠したロールケージを組み込んだ。
▲シャシーはロードカーのアルミニウム製スペースフレームをベースに、ハイブリッドコンポーネントを支持するブラケットなど一部フレームを簡素化して、フロントとリアのサブフレームを素早く脱着できるように設計を変更する
組み合わせるボディワークには、カーボンファイバーコンポジット素材を採用して車両のベース重量を可能な限り軽量化したうえで、レース部門を担うSquadra Corseとデザイン部門のCentro Stileがコラボレーションして、エアロダイナミクスと整備性を徹底的に高めたことがトピック。エアロダイナミクスの面ではロードカーの特徴的なスタイルを維持しつつ、新しいエンジンとブレーキ冷却システムの要件に適合させ、ダウンフォースとドラッグの性能目標を達成し、最適なエアロダイナミクスバランスを実現する。具体的には、制動時の車両の安定性を向上させ、コーナリング時のバランス変化を軽減するために、空力性能を最適化。また、温度管理を念頭にラジエーターへの空気の流れを改善し、とくにフロントラジエーターの効率を最大限に高める変更を実施した。
一方、ボディ自体はフロントエンドとリアエンドをそれぞれ一体型とし、合わせてリアディフューザー、エンジンカバー、ボンネットも素早い脱着を念頭に設計。フロントライトにも、迅速な取り外しを可能にするクイックコネクタシステムを導入する。また、フロア部はフロントアクスル前方の2つのセクション、車体中央を通る1つのセクション、そして強力なリアディフューザーという4つの独立したパーツで構成。中央のセクションは、必要に応じてピットロードでジャッキアップして交換できる設計とした。さらに、給油システムを改良してタンクへの流量を増加させ、同時に燃料タンクの設計も変更して、より正確に数値が把握できる新しい燃料センサーを配備している。
▲ボディワークはカーボンファイバーコンポジット素材を採用して車両のベース重量を可能な限り軽量化したうえで、フロントエンドとリアエンドをそれぞれ一体型とし、合わせてリアディフューザー、エンジンカバー、ボンネットも素早い脱着を念頭に設計して、レース時の整備性を向上させる
縦置きでミッドシップ搭載するパワーユニットには、ハイブリッドシステムを省くとともに吸排気系のリファインやレース仕様のターボコンプレッサーの組み込みなどを図った4リットルV型8気筒DOHCツインターボエンジンを採用。圧縮比は9.3:1に設定し、最高出力は550hpを発生する。一方、組み合わせるトランスミッションには専用セッティングの6速ギアボックスを横置きで配置。エキゾーストシステムには専用に開発したCapristo製を組み込んだ。
▲縦置きでミッドシップ搭載するパワーユニットはハイブリッドシステムを省くとともに吸排気系のリファインやレース仕様のターボコンプレッサーの組み込みなどを図った4リットルV型8気筒DOHCツインターボエンジンを採用。最高出力は550hpを発生する
サスペンションについては、SC63 LMDhプロジェクトのサプライヤーでもあるKW製の新しい6段階調整ダンパーを採用。サスペンションのマウントポイントはシャシーのカーボンインサートを不要とし、代わりにマウントプレートを使用する。一方、タイヤはRonalが供給する専用18インチホイールに装着。また、制動機構は前φ390/400×厚38mmディスク+6ピストンキャリパー/後Φ355×厚32mmディスク+4ピストンキャリパーとM5キットのABSで構成し、さらに操舵機構にはカスタマイズが可能な油圧ステアリングラックを配備した。
インテリアに関しては、ランボルギーニのファクトリードライバーであるマルコ・マペッリ選手とアンドレア・カルダレッリ選手の協力を得て設計する。ドライバーエクスペリエンスの向上を目的に、コクピットの電子機器は更新。最先端のハードウェアを組み込んだことでランボルギーニが直接カスタマイズした専用ソフトウェアの開発が可能となり、最適な車両制御を実現する。また、コクピットのスイッチギアおよびグラフィックも刷新し、データロガーの性能も向上。さらに、ステアリングホイールはファクトリードライバーとカスタマードライバーの意見を取り入れて、開発陣が新たに設計した。
▲ドライバーエクスペリエンスの向上を目的にコクピットの電子機器を更新。最先端のハードウェアを組み込んだことでランボルギーニが直接カスタマイズした専用ソフトウェアの開発が可能となり、最適な車両制御を実現する
なお、テメラリオGT3の開発は2026年シーズン中に完了させる計画で、レースデビューは3月開催のセブリング12時間耐久レースを予定している。