MINI JCWエースマン 価格:641万円。JCWは標準比40psパワフルな258psの高出力モーターを搭載。0→100km/h加速は6.4秒でクリアーし、一充電当たりの走行距離は403kmと実用性十分。気軽にドライブに連れ出せる。走りはもちろん刺激的
2024年はMINIにとってコメモラティブな年となった。新世代モデルが一気に発表、発売されたからだ。4世代目となった3ドアハッチバックを筆頭に5ドア、コンバーチブル、エースマンが登場した。2023年後半にリリースされたカントリーマンを含め、すべてが揃い踏みとなったわけだ。
そんな年を象徴するように、「日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025」の「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いた。これはMINIにとって初めてのこと。それだけデザインはもちろん中身も高いレベルで進化したということだ。それではMINIの次なる一手はというと、ご存じスポーツモデルのJCW。先日それらを集めたメディア向け国際試乗会に参加してきたのでレポートしよう。
英国コッツウォルズで行われた試乗会には4種類のJCWモデルが並んでいた。3ドアハッチバックのガソリンエンジン車とBEV、コンバーチブルのガソリン車、それとBEVのエースマンだ。
ここで注目したいのはBEVのJCW。開発陣にとってそれは初めての試みであり、かなり苦労を強いられた。JCWとしての運動性能をどうBEVで表現するかが最大のテーマとなった。
そんな中の1台、エースマンE JCWについて話を進めよう。まずバッテリーの容量アップとモーターの改良で、出力は258psを発揮する。エースマンSEが218psだから40psの向上だ。E JCWは高出力に耐えられるようボディ剛性の向上と足回りが見直されている。ダンパーの減衰圧とバネレートはJCW用の専用設定。
開発スタッフによるとこのセッティングが難しかったという。というのも、BEVはガソリン車よりも車両重量が重くなるほか、重心位置が低くなりすぎる傾向がある。重いバッテリーを低く積むのだからそうなるのが道理だ。その結果、高くなったフロアとロールセンターとの位置関係が複雑になるのだ。従来のようにハード化するとロールを不自然なカタチで消すことになり、運転していて楽しくないと感じられる。
そこで、彼らは通常ガソリン車に設定する足よりも柔らかくすることを考えた。足を固めるよりも動かしたほうが、スポーティな走りを味わえると結論づけたのだ。
結果、エースマンE JCWの乗り心地がどうなったかというと、予想よりも快適になっている。3ドアハッチバックのJCWに象徴されるヒョコヒョコした乗り味は消え、マイルドになったのだ。エースマンと同じBEV専用プラットフォームを有する3ドアバッチバックのBEVも同じ傾向になった。
ガソリン車とBEVを続けて走らせるとその違いがよくわかる。BEVのほうがスタートからスーッとフラットな乗り心地を提供する。さらにいえば、JCWエースマンはホイールベースが長い分、快適さが増す。これまでのJCWのイメージで走り出すと、拍子抜けするくらい乗り心地がいいのだ。
それでもJCWである。攻めの走りで真価を発揮する。スープアップされたモーターの加速は過激なほど鋭く、加速Gで体をシートに押し付ける。スタートダッシュもそうだし、中間加速もそうだ。しかもエースマンE JCWはFWDなので、加速時に今時珍しいくらいのトルクステアを発生させる。ステアリングを押さえ込んでジャジャ馬を扱うような気分になるから楽しい。もしかしたらこのあたりは、意図的な演出かもしれない。JCWだから許されるテイストといえる。
ちなみに、このクルマの0→100km/h加速は6.4秒。ただ、この数字と体感加速はかなり隔たりがある。感覚的には、過激というより上質な速さの持ち主だった。
というのが新世代MINIをベースにしたJCWのファーストインプレッション。JCWらしいヤンチャ感はしっかり投入されている。
このクルマのパワーソースは2リッター直4ターボで231psを発揮する。ギアボックスは7速ステップトロニック、駆動方式はFWDだ。スタンダードモデルのクーパーSが204psだから27psのアップとなる。で、その走りはJCWの王道。アクセルに対するクイックなレスポンスをはじめ、ハンドリング、足回りのセッティングはすべてスポーティそのもの。なので、乗り心地は正直硬い。スペースのないリアシートはそもそも荷物置き場だが、もしゲストを乗せるのであれば要注意だ。細かいピッチングばかりか突き上げもあるので、酔ってしまうかもしれない。とくに、屋根を閉めて走っているとそのあたりは顕著に現れる。最近のコンバーチブルはどれもそうだが、開けた状態をデフォルトとするため、屋根を閉めると予想以上に剛性が上がってしまう。入力の逃げ場がなくなってしまうことがある。もちろん、それはスポーティな走りを再現するのにポジティブな要素だが、同乗者には厳しかったりするので気をつけたい部分である。
それはともかく、コンバーチブルはJCWであっても「魅せるクルマ」であることは変わらない。なので、ボディカラー、インテリアカラー、アクセントなど凝ったセレクトをすると楽しいだろう。あえてJCWらしくないコーディネートで仕上がるのはオシャレだ。スタンダードモデルのコンバーチブルと見せかけてのJCWというのはかなりの高等テクニック。それがコンバーチブルならではの特権となる。
現地にはジョン・クーパー氏の孫チャーリー・クーパー氏も参加しJCWアンバサダーとして対応してくれた。彼は英国人ぽいジェントルさとヤンチャさがJCWを地でいっているといった印象だった。。クルマ同様魅力的な人物であったことを最後に付け加えておこう。