【最新モデル試乗】ニュルで鍛えた本格派、VWゴルフRのスーパーハンドリングに惚れた!

VWゴルフRアドバンス/価格:7DCT 749万9000円。ゴルフ史上最強の最新Rの最高出力は333ps、駆動方式は4WD。XDS(電子制御ブレーキLSD)に加え、後輪の左右トルク配分を自在に変化させるRパフォーマンス・トルクベクタリングを装備する

VWゴルフRアドバンス/価格:7DCT 749万9000円。ゴルフ史上最強の最新Rの最高出力は333ps、駆動方式は4WD。XDS(電子制御ブレーキLSD)に加え、後輪の左右トルク配分を自在に変化させるRパフォーマンス・トルクベクタリングを装備する

速さはもちろん、ドライビングの楽しさも超一級

 来年、誕生50周年を迎える高性能版のGTIが、「特別なゴルフ」として人気を博している。だが、ゴルフにはもうひとつのスペシャルモデル、Rが存在する。Rの系譜が加わったのは2002年のことだった。
 4thゴルフに設定された初代は、VW独自の挟角V6エンジン(VR6)の排気量が3.2リッターだったことから、R32と命名された。エントリーゴルフの2倍の排気量を持つ高性能エンジンとともに、4WDシステムの4MOTIONやマルチリンク式リアサスペンションが与えられた点でも別格の1台だった。専用のエアロパーツをまといながらも、あくまで見た目は控えめ。タダモノではない空気がヒシヒシと伝わってきたものだ。

室内image

リア走り

 日本では2003年に、3ドア(左ハンドル)が500台、5ドア(右ハンドル)が400台のいずれもMTを限定販売。続く2代目(2004年)はカタログモデルとなり、エンジンスペックが向上したほか、初めてDSGが設定された。
 2009年の3世代目以降は2リッター直4ターボにエンジンを換装するとともに名称をRに改称。その後も代を重ねてパフォーマンスの向上を追求してきた。Rシリーズは日本で2024年11月までに約1万1800台を販売。なかなかの数字だが、実は割り当て台数が限られているためユーザーニーズに応えられていないという。「Rがほしい」という人は実際には、もっと多いと聞いた。

 現行8thゴルフに設定されたRは、2022年10月に発売。マイナーチェンジ版は今年1月の東京オートサロンで日本初公開された。その最新Rを千葉県木更津市のポルシェ・エクスペリエンスセンターで試乗した。

史上最強のゴルフ、最新Rは333psのスーパー4WD

 注目は、セッティング変更により最高出力が13ps増の333ps(245kW)に向上するとともに、内外装や灯火類のデザインが新しくなったこと。その他、軽量な19インチアルミや専用のナパレザーシートを装備した新グレード、R Advanceが追加設定された。
 メインの試乗コースは、有名なニュルブルクリンクの「カルーセル」やラグナセカの「コークスクリュー」を再現したコーナーのある全長約2.1kmのハンドリングトラック。GTIと乗り比べることもできた。

横流し

エンジン

 やはりRのパフォーマンスは圧倒的である。改良前と比べて、確実にパワフルになっているほか、足回りも引き締まり、全体的にスポーティなテイストが濃厚になっていた。

 なお、GTIはRとはエンジン性能や駆動方式が異なるが、Rの下位というよりも、異なる個性を持つ別種の高性能モデルというニュアンスだった。いい意味でちょっとヤンチャな味わいがある。

 両車では旋回性能を高めるためのアプローチが違う。どちらもXDS(電子制御ブレーキLSD)を搭載する点は共通だが、Rはリアデフに左右後輪のトルク配分を0~100%の間で調整が可能なR-Performanceトルクベクタリングを備えた4MOTIONが与えられ、シャシー全般を電子制御するVehicle Dynamic Managerが、XDSやDCCとともに4MOTIONを統合的にコントロール。旋回性能をより高いレベルに引き上げる。なるほどハンドリングは絶品だ。

タイヤ

マフラー

 一時期のRはアンダーステアが指摘されたものだが、最新版は回頭性が俊敏で、操舵したとおり正確に応答する。安定した姿勢のままオンザレール感覚でラインをトレースしていける。ディスプレイを見ると状況によって左右後輪のトルク配分を4MOTIONが巧みに制御していることがわかった。

 Rのフロントデフはフリーだが、一方のGTIはブレーキによるXDSとともに、多板クラッチを用いた電子制御油圧式フロントデファレンシャルロックを採用。旋回性能を高めている。こちらもアフターパーツのLSDにありがちな介入感はなく、自然な感覚でコーナリングできた。FFとしてこれ以上はないほどのパフォーマンスといえる。

 Rならではの走りをより深く味わうために試乗場所を移動。スラローム走行でトルクベクタリングのパフォーマンスを確認した。小さな舵角のままパイロンの間をスイスイと駆けぬけていけるのが気持ちいい。攻めた走り方を試すと、物理の限界を強制的に引き上げたかのような曲がり方ができてしまうのも印象的だ。

インパネ

シート

 散水した旋回路では、ドリフト円旋回にトライした。FFベースの4WDは、少し前までアンダーステアが当たり前で、ドリフトは難しかった。しかし最新のRなら話が違う。機構面で共通性の高いアウディRS3が装備するドリフトに特化したドライブモードはないが、走り系のモードを選んで転舵した状態でアクセルを踏み込むと、リアに積極的にトルクが配分されてテールスライドする。キッカケが作りやすく、筆者のスキルでも上手く決まればドリフト円旋回を楽しむことができた。

 最新最強のゴルフRは、優れたパフォーマンスに加えて、ドライビングプレジャーの度合いもグンと高まっていた。高価だがスペシャルな存在として実に魅力的である。

諸元

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