【Mを知る】大胆にして緻密な味わい。XMは圧倒的な存在感とハイパワーを味わえるドリームPHEV

XM 01

BMW XM/価格:8SAT 2130万円。XMは当初X7のクーペ版として開発がスタート。市場状況などを考慮してMの専用モデルに発展。4.4リッター・V8ターボ+モーターのスーパーPHEV。システム出力は653psを誇る

SUVの姿をした生粋のドライバーズモデル。さすがM専用設計

 BMW Mとして久しぶり(実に1978年のM1以来だ!)となった専用デザインモデル、XMをアメリカ・フェニックスで試乗した。このところのBMWデザインはアグレッシブすぎる、そんな見方をするマニアは多い。キドニーグリルは大きくなる一方で、ヘッドライトはサイボーグのよう。XMはその代表といえる。けれどもそれは、マーケットを考えると必然だとわかる。

 北米を走っていると、最新の大型ピックアップトラックがいかつい顔をぎらつかせて向かってくる。世界で最大規模のマーケットの好みがそうなのだ。しかもアメリカ市場と世界最大の中国市場の嗜好が実はよく似ているとなれば、最近のBMWデザインもまたしっかり「売る」ための必然だったとわかる。

2台

エンジン

 M社の幹部によると、XMの主要マーケットはアメリカと中国で、両市場で目標販売台数の半数以上を占めるという。続くのは中東や韓国だ。

 とはいえM1以来のM専用モデルがどうしてSUVなの?と思う。ライバルのように高性能スポーツカーを見たかった。幹部は「SUVがセダンに代わって普通の乗用車になったから」と実にそっけない。みんながセダンに乗るなかでクーペやスポーツカーに憧れた1970〜80年代とは事情が違うというのだ。

 もっとも、XMは最初からM専用モデルだったわけではない。当初はX7ベースのSUVクーペ、要するにX8として企画された。だが大型高級SUV市場におけるクーペニーズを考えたとき、M専用として特別感を出したほうが太く長く売れると判断した。それゆえ、パワートレーンはPHEVのみのモノグレード展開である。

リア走り

インパネ

 赤いボタンをプッシュすると爆音とともにV8エンジンが目を覚ました。走り出すとそのあまりにハードな乗り心地に驚いた。試乗車には22インチのタイヤ&ホイールが装着されていたのだが、実はタイヤのチョイスも含めて試乗車は最もスポーティな仕様だった。そのため街中での乗り心地はかなり硬質。救いはスポーツタイプのシートが優秀だったこと。なにしろ強めの突き上げをしょっちゅう食らったというのに4時間ものドライブに耐えることができた。ちなみに標準の23インチ仕様は、もっと乗り心地が快適だという

 道路状況を確認して、Mロードカーの中でも強烈なパワートレーンを解放する。パワーユニットは489ps/650NmのV8ツインターボと 197ps/280Nmの電気モーター。システム総合で653ps/800Nmを発する。

 右足を思い切り踏み込む。V8が盛大な唸りを上げた。サウンドは豪快で、回転フィールは砂浜をかき回すように心地よい。そしてもちろん、凄まじくパワフル。巨体がそのまま飛んでいきそうな恐怖感さえ覚える。

 70km/hを超えたあたりで硬質な乗り心地から解放された。心地よいフラットライドになる。ワインディングロードも難なくこなす。その操縦感覚はまさにスポーツカー、実にMらしい。

 XMは圧倒的な存在感とハイパワーを存分に味わえるドリームモデル。SUVの姿をまとっているが、本質は走りそのものを楽しむドライバーズカーである。

室内

エンブレム

諸元

真横

 

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