【進化し続けるGR】祝ニュル24時間クラス優勝! クルマ好きの夢を叶える「GRファクトリー」に潜入。生産現場でもモータースポーツ直結の創意工夫が導入されていた!

GRファクトリーはトヨタ元町工場内に設置。匠の職人技を活かした精緻なクルマづくりを大量生産で実現する各種のアイデアを満載した「夢のスポーツカー工房」

GRファクトリーはトヨタ元町工場内に設置。匠の職人技を活かした精緻なクルマづくりを大量生産で実現する各種のアイデアを満載した「夢のスポーツカー工房」

そこは驚きの連続。大量生産でレーシングカーの精緻さを実現

 GRヤリスやGRカローラといったGRの高性能スポーツ4WDモデルは、トヨタの元町工場内にある専用生産設備、「GRファクトリー」で生産されています。元町工場はトヨタが所有している工場の中でも最も古い工場。そんな工場でなぜ最新ハイパフォーマンスモデルのGRモデルが生産されるのか不思議に思う人もいるかもしれません。

 しかし、挑戦という伝統を行ってきた元町工場だからこそ、GRモデルを生産するのにふさわしい場所なのです。部品や工具を載せて移動できる「ワゴン台車」や体への負担が少ない作業方法、初めて働く人でもわかるように作業工程が理解しやすい表示など、いまではトヨタでスタンダートとなっている生産技術の多くは、この元町工場で試され実装されていきました。

工場外観

 GRのモータースポーツ活動は「走る実験室」と表現することがありますが、さまざまな生産アプローチを試す元町工場は「造る実験室」なのです。そう考えるとGRファクトリーはとても親和性のある場所に出来たと感じます。

 またトヨタ流の改善が日々行われており、実際に「実験室」と感じさせる体制であるのも興味深いところです。年次改良などが行われなくとも、部品の選定方法や組み付けに関するプロセスなど、日々よりよい高性能モデルを生産するためのアプローチが実施されており、改善点を見つけスグに実行できるようになっているのも感心したポイントです。

足回り測定

 そして「量産モデルでここまでやるか!」と感じたのが足回りの組み付けに関してでした。ショックアブソーバーやバネ、ブレーキ関係など複数のパーツ類が組み合わさっている足回りは、走りの良し悪しに大きく影響する重要な部分でもあります。市販車をベースとしたナンバー付きのワンメイクレースでは、最適な動きを実現できるように足回りをすべて分解して組み直したり、最適な組み合わせを見つけられるように、複数の純正部品を用意して組み替えることも行われています。

足回り組付け

GRファクトリーの足回り組付けではそれに近いことが行われていました。足回りの組付けでは、どうしても公差が生じてしまう部品の個別データと解析システムを基に、その公差を補う最適な組み合わせで部品が部品棚から選ばれます。通常のモデルならばサプライヤーから送られてきたパーツをそのまま組み込むことがほとんどですが、最適なパーツの組み合わせを選ぶ工程があるのは「レースとやってることと同じじゃん!」という新鮮な驚きがありました。

足回り搭載

チェック01

 高性能を実現しているか否かを確認するチェック体制も驚いたポイントでした。組み付けが終わった車両はガソリンを模した重りを乗せて実走状態に近いアライメントを始めとした各種測定チェックが行われます。そして熟練のセンサーを持った検査員により、敷地内のテストコースで実走での最終チェックが行われ、オーナーのもとに出荷されていくのです。

 このような体制やアプローチからGRファクトリーは「高性能な量産車を造る姿勢が徹底している設備」だと感じました。世界中に高性能なモデルを生産しているメーカーは多くありますが、それを量産する。どのモデルも均一に最高のパフォーマンスへともっていく。その体制作りがここまで徹底している工場は他にないでしょう。

テスト実施

 しかし、それでも若干の差があるのが工業製品。実走チェックをする検査員に聞いてみると「以前より少なくなりましたが、やっぱり当たりクルマだなと感じる個体はあります」とのこと。ハイパフォーマンスモデルの追求は永遠に終わりのない改善だと感じたと同時に、人のセンサーに勝るものがないのだなとも感じた瞬間でした。

イメージ

 モータースポーツの世界で競技に最適な1台を造り上げていくように、それを量産車の生産現場で実行していく。GRファクトリーではいままで世界のクルマ好きが夢見た理想のスポーツカーの生産体制を具現化されていました。その見学はトヨタの懐の深さを感じた時間となりました。

ロゴ

プロフィール
にしかわしょうご/1997年生まれ、富士スピードウェイの近くで生まれ育つ。大学時代から自動車ライターとして活動開始。新車情報から旧車やチューニング、自動車に関するアイテムや文化、イベントの取材記事など幅広く手掛ける。定期的なサーキット走行や自身でのモータースポーツ参戦を通じて運転技術の研鑽に励む。2025-2026日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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